AtomA社AF生産工場破壊依頼①(報酬:500万グリッド)
今回の任務はAtomA社の所有する巨大AF生産工場の破壊だ。
工場は壁に囲まれており、大量のAFで強襲するにしても門が狭くあまり有効ではない。ならばと空挺部隊を送りたいが、15門にも及ぶ対空砲が邪魔だ。そこで我が社のAS二機と傭兵のAS一機で対空砲を無力化、その後に空挺部隊を降下させ工場を内側から完全に破壊する。
AS部隊は対空圏ギリギリまでヘリで接近し降下。門を各ASに配備したミサイルで吹き飛ばせ。必ず離れるんだぞ。AFも出てくるだろうが必ず倒す必要はない。
内部に入ったら対空砲を手当たり次第に破壊しろ。対空砲の無力化が確認されたら空挺部隊で工場内部を制圧する。
これを聞いて分かっていると思うが、どうやら上はこの件にかなり関心があるらしくAS部隊だけでなく航空機の使用許可も出た。君達には我が社の社員としての自覚をもって最後の一兵まで戦うことを期待する。
それと傭兵。こっちは500万グリッド出してるんだ。失敗するんじゃないぞ。
******
ヘリのローター音が響くコックピット内で、機体右脚に取り付けられた支給品のミサイルを確認してから地図に描かれた点の一つに赤いペンで横線を引く。傭兵仲間から聞いた話通り企業間の緊張が高まっているらしく、もうすぐ戦争が起きるだろう。
どんな規模の戦争になるか想像していると通信が入った。一緒に仕事をするASのパイロットからだった。
『あんたのAS、綺麗になったな。エンブレムは何か意味があるのか?』
その質問は傭兵をしていれば何度も聞かれることになるものだった。
「
『いいね。俺もいつかは自分のエンブレムを付けたいよ』
「自分のエンブレムを見るのは久しぶりなんだ。長旅で削れて見えなくなってたからな。俺みたいに整備班に言えば出来るんじゃないか?」
『許可が必要なんだよ。あんた名前は?』
「ジョン・ドウだ。聞かされてないのか?」
『偽名だろ。本名は?』
「ジョン・ドウ。それで十分だ」
『そうか、残念。そろそろ投下だ』
頭上のトップコンソールにあるメイン起動スイッチノブを“Standby”から“Battle”に変更してスタートアップボタンを押し込む。機体全体が眠りから覚め、ディスプレイの表示が更新されていく。コードディスプレイを見て通信、IFFの状態が設定通りか確認する。
一度深呼吸をして
ヘリパイロットから通信が入る。
『
「
機体を固定していたアームが解除され、降下する。ヘリの速度そのままで進む機体を少しだけ減速させてブースターで姿勢を調整、着地。二機のASも降下して自分を左端として進む。
いくつもの砂丘を越えているとようやく工場の壁が見えた。風を切る音が聞こえるとともに弾道予測が表示される。壁上にある対地砲キッペルはすでにこちらを補足しているようだ。
回避機動を取るとすぐ大量の着弾と爆発音が発生し、衝撃が機体を揺らす。降り注ぐ砲弾はさながら鉄の雨である。
右手で
ディスプレイに表示される弾道予測の間を高速で機動しながら自分の次の動きと照準の動きを合わせる。そして引き金を引く。左手のレールガンから火花が散って爆音が響く。音速を超えた金属杭が遠くの対地砲キッペルを貫通した。音は聞こえないがズームされた映像を見ればわかる。
続けて二発、三発と立て続けに射撃して出来るだけ片付ける。
『回避に専念しろ! 死ぬぞ!』
「安心しろ。死なん」
対地砲キッペル7門が沈黙したところで壁内部からAFが出てくるのを確認した。
「AFだ。多いぞ」
『余裕そうだな』
「いつものことだ。露払いをする」
右の
ディスプレイの中を地面が高速で流れ、一瞬にして敵AFの距離に入った。ブースターが元に戻り、フロントコンソールにあるステータスディスプレイに“Straight boost Recharge”と表示される。
機体を減速させて表示されているAFの種類を一瞬で頭に叩きこむ。シールドと
「砲撃が二機いる」
『やれるならやってくれ!』
シールド持ち二機とAR持ち二機がこちらへ向き、残りは味方二機へと向かっていく。
進路を塞ぐようにシールド持ち二機が出てくるのを確認して右FAレバーを回転、ネイルスイッチを三つ押して引き金を引く。背中右側に設置されていた六連装ミサイルが90度傾いて射出口が前を向き、二機のAFの間に向かって一発のミサイルが発射される。それと同時に撃ったミサイルにR付き照準を向け、サイドコンソールのスイッチを押す。
左手で持っていたAR下部が展開され、各部が可動、強度が補強される。そうして顔を出したのは打突ブレードと呼ばれる対AF、対AS用の質量兵器。強度補強の為に撃てなくなるのが欠点だ。
ブレード開放されると同時に発砲、二機のAFの至近距離でミサイルが爆発して砂を巻き上げる。
心の中でAS、AF乗りと戦う際の基本を唱える。“移動か攻撃に操縦は偏る”と。
ロックオンを切って砂煙の中に突入。敵AFの居場所は敵がロックオンに使っている電波が示している。相手は接近警告が鳴っていてもロックオン警告は鳴っていないはずだ。そしてシステムの補助無しで攻撃してくるとは思わない。それが普通だからだ。
視界の悪いディスプレイに敵AFの光りが映ると同時に両手をSAレバーへと移して素早く動かす。自分から見て右側にいるAFの側面を旋回しながら通り抜けざまに構造上脆い脇腹に打突ブレードを突き刺す。そのまま後ろ向きで走行、残ったARで背後をさらしたもう一機のAFを撃つ。打突ブレードを受けた敵機は停止、背後から撃たれた敵機は推進剤に引火、爆発した。
爆発でさらに広がった砂煙を抜けるとすぐにロックオン警告が鳴った。打突ブレードを閉まい、横に加速して敵照準から逃れつつ敵AFへと向き直る。
AR持ちAF二機の射撃を左右への回避に跳躍を混ぜながら回避しつつ前進。
気後れしたか後退し始めた二機をロックオンして射撃。そのうちの一機に向かって今度は真上にミサイルを一発打ち上げる。ミサイルは弧を描いて向かっていく。
狙われた一機へのロックオンはそのままに射撃を止める。狙い通りそのAFは射撃を止めて空から向かってくるミサイルに意識を向けた。その動きの隙をついて射撃を再開、こちらに気が引かれたその一瞬でミサイルが直撃し爆発した。残った一機はひたすらに後退する。
「新兵か?」
後退するAFを苦も無く破壊し、砲撃二機へと接近しながらマップディスプレイを見る。味方二機はAFと交戦しつつ、前進していた。動きからして砲撃にかなり気を散らされている。
視線を砲撃二機に戻すと背部の砲塔を畳んでこちらに向いていた。近接戦になることを察して準備をしているが、無意味だ。対ASで最も重視される機動性を砲撃仕様では殺してしまっている。旋回性能の低さをついて攻撃できない方向から一方的に撃ちこむ。
二機の沈黙を確認して前進を再開。
「砲撃をやった」
『こっちも進む。残りは引き離す』
壁の門に接近して右脚部のミサイルを二発全て撃ち込む。企業が持つ高級品というだけあって破壊力は桁違いだった。頑丈な門が破壊され、内部への道が開く。開かれた門から途轍もない弾幕が開放された。
左へと加速して弾幕から逃げるが、全てを避けられず装甲がいくらか傷つく。
「こいつは……」
門の向こうから四本の足を持つ大型兵器が顔を出した。
『こいつらどこからこんなものを!?』
地点防衛用兵器として大昔に使われていたものだ。
左手のARをレールガンへと持ち帰る。
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