最終話 未来
ギガノスとの戦いより二ヶ月と少しの時が経つ。少しずつだが、復興を始めた旧ザスディアの地に生活の色が戻りつつあった。
ミヤビたちエルガノンからの援助を受け、建造物の復興や国交にも着手を進めている。こうしてまた、新たな日常が形成されていくのだ。
あの日、レクトが語った言葉。我々は復讐を眼前に構えた時点で、正義などと語る資格は当然持ち合わせていない。誰もが幸せになれる世界を願えるほど、立派に世間を語る自信はないのだ。
だが、どうしても、受け入れ難い。ギガノスによって救われた子供たちがいたのかもしれないといった考えがしつこくこびりつき、モヤモヤと立ち込める毎日であった。
しかし幸いなことに、その理念は皆同じく持ち合わせていたようだ。利害の一致の末、エルガノンがボルテリアにて
沢山の花を周辺に咲かせた巨石に、水を撒いて黙祷を捧げる。あの日、別れすらも告げられぬまま離れてしまった家族に、今できることはこの程度しかない。とてつもなく、不甲斐ない。
「早いな、ライア」
背後から、聞き慣れた声が響く。朝の陽と共に現れた師は自身と肩を並べ、同じようにして、黙祷に移った。
未だ孤児の受け入れに目処が立たない中、この広いザスディアに住まうは四人の影のみ。稀にエルガノンからミヤビやレクト、他の衛兵が出向くこともあるが、それでももの寂しい国である。
「なぁ、カル。俺達本当にザスディアを復興できるのかな」
二年と少し前の、ザスディア崩壊の日。シェルデンの率いた軍勢になす術なく全滅を余儀なくされた国が今更甦ろうと、それは果たして正しい国のあり方となってくれるだろうか。
「今は零から始めたばかりだ。いつかはきっと、私たちが暮らしたあの国を取り戻せる」
カルトレアは、微笑む。ギガノスとて、勢力の拡大には多くの時間を費やしただろう。国を作るとは、そういう事なのだ。
「さて、そろそろ準備するか。今日はミヤビ達が来る日だ」
大きく身体を伸ばし、エルガノンの方向へ向き直る。定期的に行われる、エルガノンとの座談。それが、今日である。
カルトレアの語る通り。ザスディアは新たなる道を歩み始めた。
途方もない闇に包まれた未来だが、我々なら。
あらゆる壁を乗り越えた、我々ならば——
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