短編87話  数ある遅き理由を説明せよ!

帝王Tsuyamasama

短編87話  数ある遅き理由を説明せよ!

芭菜はな! ず、ずっと、好きだった! おお俺と付き合ってくれーっ!!」

 言った! 言ってしまったぞ雪下ゆきした 庄三郎しょうざぶろうよぉー!

 放課後、いつものように一緒に帰るその途中に、公園へ寄って……学生服の俺と、セーラー服の芭菜が、ベンチで横並びになったタイミングで……!

 幼稚園のときから、一之宮いちのみや 芭菜はなへの想いを募らせ、不器用ながらも遊びに誘ったり、学校で同じ班になれば、一緒にしようと声をかけたり。

 お互い中学三年生。しかも新年迎えて、もうすぐ受験。芭菜は賢いから、きっと別の高校へ行っちゃうだろう。

「……しょうちゃん!」

「は、はいっ!」

 さあどっちだ!? どっちなのだっ!? 頼むぅ!

「……遅いっ! 遅すぎるよぉ!」

「へ?」

 そ、それって……芭菜はもう、だ、だれかと……?!

「どれだけ待ってたと思ってるの! 最近優しくしまくりでっ……こっちはもう庄ちゃんのこと、好きになりすぎて困ってたんだから!」

「え、え……? つまり……?」

「……よろしくお願いしますぅっ!」

 なんでそんなぶぅーっとしたふくれっ面な……あ、でも俺が大好きな芭菜の笑顔になってくれた。

「やった……やったぜえええ!!」

「の前に庄ちゃん!」

「ふぇ?」

 う。なんでそんな目つき鋭くなってるんだ?

「まず初めに。こんなに遅くなった理由を述べよ!」

「お、遅くなった理由?! だって振られたら俺、もう人生終わるし……でも芭菜、進学校行きそうだし……」

「あんなに一緒に帰ってるのに、振るわけないでしょ! それに庄ちゃんのこと好きなんだから、一緒の高校行きたいに決まってるでしょ!」

「そ、そうだったのかぁ?!」

「んも~」

 驚く俺に対し、はぁっと息を吐いた芭菜。

「てか、芭菜も俺のこと好きだったなんて……じゃあ芭菜から言ってくれても」

「乙女は男子からの告白を待っているものなのーっ!!」

 ひぃ~! そのお顔はてれてるんじゃなくて、ガチで怒ってるんじゃないでしょうねぇ?!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編87話  数ある遅き理由を説明せよ! 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ