付き合っていない清楚系美少女がなぜか俺にだけ甘えてくる~付き合い始めたらさらに甘くなった~

柊なのは

【1年生編】1章  付き合っている彼女でもない清楚系女子がなぜか俺にだけ甘えてくる

第1話 今日も甘えていいですか?

 俺のクラスには成績優秀、スポーツ万能な清楚系美少女、露崎瑞季つゆざきみずきがいる。友人や先生からの信頼もあり、彼女の周りにはいつも人がいた。


 誰かに頼られたらニコニコ笑顔で引き受ける。優しくて笑顔が天使並みに可愛くて、彼女のダメなところはおそらくない。


 そんな彼女だからこそモテるのだろう。噂に寄れば何回も告白をされたことがあるらしい。だが、未だ成功した人はいない。


 彼氏が既にいるんじゃないかと噂もあるが、俺からしている様子はない。


 休み時間はいつも露崎の周りには女子の友達がいる。男子は露崎に声をかけたいが話しかけたら抜け駆けされたと思われるのでいつも遠くから彼女のことを見るだけ。




「今日も変わらず可愛いな露崎さん」

「ほんと、一度だけ話してみたい」

「俺、この前、手振ってもらったぞ」

「いやいや、それはお前に振ったわけじゃなくてみんなにだよ」




 近くから男子のそんな会話が聞こえてきた。俺、鴻上碧こうがみあおはというと別に露崎のことを好きだとは思ったことがないし、そこまで興味がない。


 可愛いとは思うし、性格もよく見える。けど、俺はそんな彼女をあまり好きにはなれない。


 理想の女子を演じていて、何かを失っていそうな作られた笑顔をしている露崎瑞季を。


「碧は、露崎さんに興味ない感じか?」


 昼休み、弁当を持ってきていつものように食べようとなり、友達の前山晃太まえやまこうたは俺にそう尋ねた。


「ないよ。晃太は?」


 一応聞いてみたが、晃太は笑った。


「おいおいそれを俺に聞くか? ここで興味あるとか言ったら香奈に怒られるわ」


 香奈というのは晃太の彼女。同じクラスだが、教室ではお互い仲のいい人がいるので一緒には行動しないそうだ。


 まぁ、晃太が香奈といると俺は完全にボッチになってしまうので一緒にいてくれるのはありがたい。


「晃太は、露崎と中学一緒なんだろ? 中学でもあんなにモテていたのか?」


 朝、自分で作った弁当をカバンから開けて蓋を開けながら中学時代、露崎と同じだった晃太に尋ねた。


「んーモテててたよ。告白も何回かされてたみたいだけど今は誰とも付き合わないって言って断っていたらしい」


「誰ともってことは相手はいないのか」


「まぁ、そうなるな。けど、その話はもう2年前のことだし今は彼氏募集中かもしれないな」


 そう言ってなぜか晃太は俺のことを見てくる。俺が告白するとでも思っているのだろうか。


「興味ないと言いつつもしや碧、露崎さんのことが───」

「さっき興味ないって言ったよな? 聞こえてなかったのか?」


 机の下で軽く晃太の足を蹴り、興味はないと言うが、晃太は全く聞いていない。


「聞いてた聞いてた。そういや露崎さんと言えば香奈が先週誰かと2人でいるところ見たらしいんだ」


「へぇー」


 一瞬ドキッとしたが、俺は興味ありませんみたいな雰囲気を醸し出す。すると晃太が俺の様子を見つつ話す。


「興味なしか? まぁ、最後まで聞いてくれ。で、その露崎さんと一緒にいた人は男らしいんだよ」

 

「兄とかじゃないのか?」


「いいや、露崎さんに兄はいない。従兄弟とかそういう可能性はあるが、香奈が言うには彼氏なんじゃないかって……」


 香奈が言うことはあまり信じられないな。あいつパッと見ていつも適当なこと言うし。


 心の中でそう思っていると後ろから頬をつねられた。


「今、さらっと酷いこと思ってたでしょ?」


 そう言って頬をつねってきたのは晃太の彼女である小山香奈こやまかな。髪はセミロングで、スポーツ系女子だ。


「思ってない。てか、何しにきたんだ?」


「いつも一緒に食べてる子とは食べられないからお邪魔していい?」


 そう聞くが、まだいいと言ってもいないのに机をくっ付けてくる。


「聞かなくてもお邪魔する気満々だろ」


「あはは、バレた?」


 香奈はあまり人付き合いになれていない俺にも気軽に話しかけてくれるためこちらとしても話しやすい。


 もし、晃太と友達ではなければこうして話すことはなかっただろうけど。


「香奈、碧が露崎さんに興味があるらしい」


「おい、嘘つくなよ」


「おっ、碧もついにあの露崎さんに興味を持ち始めましたか」


「興味ないって」


 こう言っても晃太と香奈が「そうか、やっぱり露崎には興味はないのか」となるわけもなく、俺はもう否定も肯定もしないことにした。






***






 放課後、晃太は香奈と帰ると言って俺は1人で帰ることにする。ほとんどのクラスメイトは教室には残っておらず気付けば俺含め5人しかいなかった。


 カバンを持って教室を出る時には、俺以外のその4人もいなくなっており、最後に出ることになった。


 こんなにも教室を出るのが遅くなったのにはわけがある。別に帰る用意がとろいとかそういうわけではない。


 教室を出た後、利用する人が少ない階段の方に向かって下に降りずに階段の踊り場で待っていると足音が聞こえてきた。


「あら、どうされましたか? 鴻上くん」


 呼び出したのはそちらのはずだが、彼女は俺にそう問いかける。


「それはこっちの台詞だよ。露崎」


「ふふっ、そうですね。取り敢えず場所を変えましょうか。鴻上くん、今日も甘えていいですか?」


 そう言って上目遣いをしてきた彼女は俺の服のシャツの袖をぎゅっと握ってきた。


 

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