騒動


11月の初旬に騒動が起こった。




深夜、近所の通報でパトカーが屋敷の裏手の塀に沿った道に現れた。


正面の屋敷の入り口に警察官が来て我が家の呼び鈴を鳴らす。


篠田さんが対応し俺を起こした。




玄関に行くと外に来るよう警察官に促された。


門の外の車止めにパトカーが止まっていて、パトカーの中の女性と面識があるやに尋ねられた。


俺はパトカーを覗くとそこに由美がいた。


警察官の話しでは不審者の通報を受け職務質問したところ、


我が家を訪ねたと答え、様子が甚だ不審だったので同行し確認したとの事だった。




俺は、彼女は知人であることを警察官に告げ身柄を引き受けた。


由美は冷たい雨の中トレンチコートに草履を履いて傘もささずにずぶ濡れで、


しかも酷く薄汚れていた。玄関に上げた由美は明るみで更にその異様が明らかになる。




髪の毛は濡れていると言うよりも、皮脂と埃とが絡まって異臭を放ち、


服はトレンチコートを脱がすと黄ばんでいた。草履の隙間の足は酷く汚れていた。




出会った初夏の日の透き通った美しい由美は何処にもなかった。


由美はろくに喋らず促されるだけだった。




俺は篠田さんに頼んで由美を風呂に入れた。篠田さんは湯を張り由美を風呂場に


案内したが由美は脱衣すらしない。篠田さんが戸惑い俺を呼ぶ、


俺は篠田さんに下着やら着替えの用意を頼んで、


済んだら食事を用意して休むように指示した。






由美はまだ喋らない。立ち尽くす由美の服を脱がす。


裸の由美は肋骨が浮き出て尻も乳房も垂れ下がり、まるで餓鬼の如き様相であった。


頭を解くのに3回 体を浄めるのに4回、俺は由美を洗った。


漸く浄めて湯舟に入れて少し意識が戻った由美に歯みがきさせる。


湯につけてコーヒー牛乳を飲ませた頃由美は泣き始めた。




一リットルの紙パックのコーヒー牛乳をまるで一気に飲み干して


力無く泣き始めた由美をしばらく浴室に残し俺は脱衣場の椅子で由美を見張った。


浴室からしばらく泣き声が聞こえて、小一時間程して由美を風呂から出した。




その頃由美は自ら服を着て歩いた。


食堂に篠田さんが食事を用意してくれていた。由美に促し食べさせた。由美は自ら飯を食べた。


俺は由美に質問したが、答えは曖昧でその日は寝かせることにした。


その日から顛末を答えさせるまで数日を必要とした。




それは俺の想像を遙かに超えるものであった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る