【超逸材】清楚路線を目指していた新人女性ダンジョン配信者さん、自身の溢れ出る戦闘能力が隠しきれず、踏破不可能と言われた難関ダンジョンを次々と攻略していってしまう
第2話:初配信はちょっぴり危険なダンジョン探索♪
第2話:初配信はちょっぴり危険なダンジョン探索♪
「着いた。今日はここで配信だよ!」
田中さんが運転してくれた少し年季の入った軽自動車でアパートを移動してから大体一時間ぐらい。
到着した場所は……もうね、私がダンジョン配信を見続けている中で一番行ってみたいと思っていた場所。
「えええええ!? こ、ここってあの「ハラジュク」じゃないですか!」
そう、そこは誰もが一度は憧れる場所、「ハラジュク」! 21世紀中期前までは繁華街として栄えていたらしいんだけど、ダンジョンが大量発生したことで一時期誰も立ち寄らなくなったらしい。
でも、ダンジョン界を牽引する三大企業が協力してダンジョン開発に二十年ぐらい力を入れた結果、今や世界随一の複合エンターテイメントダンジョン街まで上り詰めたんだって!
中学のとき、ダンジョンの歴史だけは真面目に勉強してたから詳しいんだ、えへん。
あ、そしたら私もここで配信するってことだよね。何しよう……ここはたくさんの魅力的なダンジョンがあるからなぁ。
やっぱり可愛いモンスターたちと触れ合える「憩いの森」?
それとも空を飛べるモンスターに騎乗できる「神鳥の巣」もいいよね!
いや待って、数多のアンデットたちから襲われるホラー体験を味わえる「アンデットの墓場」も捨てがたいなぁ……。
ああ、いっぱい行きたいところがあって迷っちゃうよ〜、で、でもどこか決めないと!
「た、田中さん、わ、私決めました! 今回は「憩いの森」に行きたいです!」
初めての配信だし、やっぱり最初は雑談とかしやすいダンジョンにした方がいいよね。
なら、やっぱり大人しくて可愛らしいモンスターたちと触れ合える「憩いの森」にしよう。ふふっ、どんな人が配信見に来てくれるか楽しみ!
「ん? いやそこ入場料ばか高いからダメ」
「へっ?」
「人気どころは企業が足元見て結構金額取ってくるの。しかも配信するとなったら使用料とかでさらにバカみたいな金取られるから。うちみたいな全く金がな……ちょっと資金難な事務所じゃ払えないんだよね」
あ……そ、そうなんだ。確かに、大手の配信者さんはよくそこで配信してるけど、あんまり人気がない人はやってなかったな。
これが大人の事情ってやつなんだ……ちょっとびっくり。
で、でもめげてちゃダメだよね! これから人気になれば行きたいダンジョンで配信ができるようになるんだから、それまでコツコツ頑張ればいいんだ!
「わかりました! それじゃあ、今日はどのダンジョンに行くんですか?」
「あそこ」
田中さんが指差した方向には、整備されている他のダンジョンとは全く異なった異様な雰囲気を醸し出しているダンジョンがあった。
見るからに不気味な雰囲気を纏っているし、看板も壊れたままで入口前にいる係員みたいな人は全くやる気がなさそう。
かつ入場しようとしているのはなんだか顔つきが怖い男の人ばっかり。
あ、あれ……なんだかちょっと思ってたのと違うなぁ。
「心配しないでイイよ。あそこはちょーっとばかし入場料が安くてモンスターがまぁ、そこそこ出るからあんな雰囲気なだけ。なんも問題ないから安心して配信して〜」
「そ、そうなんですね!」
「違うよ! そこは企業管轄外の危険な違法ダンジョンだからあんな雰囲気なんだよ!」
「え!?」
「あ! おまっ、遅刻してきて何言ってんの!」
いきなり知らない声がしてびっくりしちゃった。
でも、いつの間にこの背が高くて大人っぽい雰囲気の美人な人がいたんだろう。さっきまであたりを見回してた時は全然見かけなかったのに。
「さっきからいたから! 田中が私のことまた気づかなかっただけだから!」
「ま? イヤー、それはすまん、背がでかくて顔もいいのに平均同接一桁のカズサちゃん」
「うっ!」
「あ、あの……」
「おお、そういえば紹介しないといけないね。こちら「タマコシ学園」の最古参メンバーの青越カズサ。一応歳はまだ20前半。あと全く人気がないの」
「と、歳まで言わなくていいの! あと人気がない……は事実だけど余計なこと言わないで! えーっと、あなたが新人の「磯部ミヒロ」ちゃん?」
「はい! 初めまして、カズサ先輩! これからよろしくお願いしますね」
私はぺこりと頭を下げて、先輩にご挨拶した。これからたくさんお世話になるんだもん、挨拶はちゃんとしないといけないからね!
「か、可愛い……清楚だ……。ごめんね、ミヒロちゃん。ちょっと田中と二人で話すね」
「は、はい」
あれ、何か重要なお話でもするのかな? 二人ともこしょこしょと秘密会議し始めちゃった。暇だなぁ……。
あ、看板にダンジョンの危険度が書かれてる。A−ランクぐらいなんだ、お散歩ぐらいの難易度だ、よかったぁ♪
企業管轄外の危険な違法ダンジョンって言ってたから、てっきり私の地元にあるダンジョン「無間地獄」並みの難易度なのかと思っちゃったな。
「よくあの子見つけてきたね。めちゃくちゃ可愛くて良い子だから私がファンになっちゃいそう」
「でしょ、この子は清楚系として間違いなく萌え豚どものハートと金を鷲掴みできるはず!」
「で、でもこの子をあの違法ダンジョンに連れて行くのはまずいでしょ。ほら、看板見て、危険度A−はあるとこだよ。下手したら死ぬ……私が」
「大丈夫だって。調べたら過剰に難易度記載してるみたいで、最近は強いモンスター出てないみたい。一応緊急脱出装置も中古で買っておいたし。それにほら、あそこ見て」
「え……あ! あ、あれはダンジョン配信界のダークヒーロ、「伊藤健一」!? な、なんであんな大手の人が!?」
「なんか近頃モンスター討伐の大会があるらしいの。そのための練習を配信するらしいね」
「ま、まじか……な、なら田中。もしかしてお前の狙いって」
「うん、いっさん(伊藤健一の愛称)の配信に写り込んで集客狙い! 金かけずに認知度上げるにはそうするしかないからね。いっさんの視聴者は男が多いし」
「そ、そんな安直な考え……」
「大丈夫だって! 二人とも顔はいいからキャーキャー悲鳴上げながら写り込んだら男視聴者どもが群がってくるから! それにミヒロちゃんは男ウケ最強間違いなしだから絶対食いつく!」
「……で、でも」
「うちらがまともな配信やってリスナー集められないのはもう痛いほどわかってるでしょ? まだ同接一桁の日々を送りたいの?」
「だ、だからと言ってこんなリスクを冒すのは私怖いよ……」
「リスナーたくさん集まれば高級牛肉食わせてあげる」
「よしやろう」
「決まりだね。おーいミヒロちゃん、そろそろ行こっかー!」
「わかりました!!!」
あ、二人のお話終わったみたい! やっと配信ができるんだ……ドキドキするけど、それ以上にすっごい楽しみ!
「さて、いよいよミヒロちゃんの配信デビューだね。配信タイトルは……これだ!」
【清楚系新人ダンジョン配信者、デビュー。初配信はちょっぴり危険なダンジョン探索♪】
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