【超逸材】清楚路線を目指していた新人女性ダンジョン配信者さん、自身の溢れ出る戦闘能力が隠しきれず、踏破不可能と言われた難関ダンジョンを次々と攻略していってしまう

倉敷紺

第1話:新人清楚系ダンジョン配信者、爆誕★


「さて、最後はここにサインをして……よし、ありがとう。これで今日からキミは我が「たまこし学園」の一員だよ!」


 20XX年、都内某所にあるボロアパートの一室。そこで今日、私、「磯部ミヒロ」はずっと念願だったダンジョン配信者としての第一歩を踏み出した! うう、バイト掲示板でこの求人を見つけた時に、勇気を出して高校辞めて上京してきて良かった……なんだか感激して涙が出てきちゃいそう……。


「や、やったぁ……やっとダンジョン配信者になれた……ううっ」


「おお、泣くほど嬉しいとはこのグループのマネージャーをしている私としても嬉しい限りだね。そんなにダンジョン配信者になりたかったの?」


 目の前に座るダンジョン配信者グループ「たまこし学園」のマネージャー、「田中」さんは泣き出しちゃった私にハンカチを渡してくれた。

 

 この人、ずっとニコニコしててすっごく頼り甲斐のあるお姉さんって感じがする。良かった、良い人がマネージャーさんで!


「はい! 私、すっごい田舎出身なんですけど……本当に、唯一と言っていいぐらい私にはダンジョン配信しか楽しみがなくて。カモライブさんとか、だいさんじさんとかの配信者さんからいっぱい笑顔とか感動をもらってきたんです!」


 そう、私はダンジョン配信が大好き。モンスターの生息する異世界と繋がる、21世紀中期ぐらいに突然世界中に現れた私たちにとって非日常の存在であるダンジョン。

 そのダンジョンを配信者さんたちは持ち前の面白さや可愛さで盛り上げてくれたり、ドラマチックな展開でモンスターを討伐する、感動的な瞬間を届けてくれたりする。


 そんな色鮮やかな非日常を画面越しで見続けているうちに、私自身もダンジョン配信者になりたいと思った。

 いや、もう私はなる運命を背負っているんだって確信したの! だから、ここのグループの求人を見つけた時はもう反射的に応募しちゃってたなぁ……。


「おおーやっぱカモライブとかだいさんじみたいな大手が好きなんだ。いいよねぇ、あそこ。最近は上場するとかで売り上げも好調みたいで、ほんと羨ましい。それに比べてうちは全く稼げないし新人も低賃金のバイト契約で雇うことになるし……」


「え?」


「おっと、気にしないで。でも地元で配信活動やろうとは思わんかったの? 最近はコンビニみたいにどこ行ってもダンジョンの一つや二つあるじゃん」


「……私の地元、誰も配信活動に理解がなくて。やろうとしたことはあるんですけど、その時みんなから止められちゃったんです。挙句コツコツ貯めて買った配信機材も没収されちゃって……。だ、だから上京することを決めたんです!」


「ほー、確かに田舎のジジババはあんまし理解がないって話はよく聞くなぁ。ま、うちならたくさん配信できるから安心して。さて、一応面接の時にも話はしておいたと思うんだけど、ミヒロちゃんは清楚系で言ってもらおうと思ってるから」


「は、はい! せ、精一杯がんまります!」


「はははっ! がんまりますって! ええやん、清楚全開で!」


 あ、へ、変な噛み方しちゃった……恥ずかしい。で、でも、田中さん褒めてくれているからこれはこれでいいんだよね?


「でも問題ないと思うよ。ミヒロちゃん、小柄で愛らしい上にめっちゃ可愛い顔しとるし、何より萌え声がめっちゃイイ。清楚系配信者を体現したかのような存在だね!」


「そ、そうですか……え、えへへ。せ、清楚とか初めて言われたのですっごい嬉しいです!」


「え、初めて言われたの!? ミヒロちゃん、どんなとこで暮らしてたの?」


「え、えーっと……そ、その……ふ、普通の田舎ですよ、普通の。あははは〜」


 嘘。本当はすっごくおかしな田舎だけど、本当の実態を言ったらクビにされちゃうかもしれない。

 ここまできたら絶対そんなの嫌! それに配信者グループのマネージャーをしている田中さんから清楚って言ってもらったんだから、きっと私は清楚、清楚、清楚、清楚……うん、清楚なんだ!!!


「ほーん、まぁいっか。さてと、無駄話もここまでにして早速仕事に移ろか。今日から早速ダンジョン配信開始だよ!」


「ええ!? い、いきなりやるんですか!?」


「そうだよ。ミヒロちゃんには萌え豚の財布の中身を搾り取……おおっと、たくさんのファンを獲得してもらううちのエースになってもらわないといけないからね。早めに配信活動慣れてもらわないと。ま、ミヒロちゃんなら絶対すぐなれると思う!」


「え、エース……は、はい! そうなれるよう私いっぱい頑張ります!」


 エース……え、えっへへへ。私がエース……みんなからたくさんちやほやされたり、可愛いって言ってもらえたり、お金もたくさんもらえたり……あ、い、いけないけない。ついつい口角が緩みまくっちゃった。


 ダメダメ、私は新人なんだから気を引き締めて配信活動に臨まないと。おじいちゃんが私に教えてくれた、「獅子は兎を狩るにも全力を尽くす」って言葉通り、何事も油断せずに全力で頑張ろう!


「ええ意気込みだね! 一応今日はグループの先輩配信者も来る予定だから、現地集合だけど。だからそんな緊張しないで大丈夫。(まぁそもそもうちらの配信見に来る視聴者全然いないけど)」


「そうなんですね! 先輩にも会えるだなんて楽しみすぎます!」


「おーおーイイねぇ。威勢が良くてお姉さんも元気もらえる。さ、そろそろ行こっか。ごめん、荷物持つから扉開けてくれる?」


「はい! ……あ、あれ?」


「どした?」


「ご、ごめんなさい……ドアノブがちょっと凹んじゃったみたいです」


「へ? ど、ドアノブが凹んだ?」


 あれぇ? ドアを開けようとしてちょっと握っただけなのに。このアパートちょっと古いからドアノブも壊れやすくなってたのかな?


「ほ、ほんとだ。でも開けられるし問題なさそう。ごめんねぇ、ボロアパートだから時々思いもせん壊れ方するの。気にしないで」


「そうなんですね、わかりました! ……私、絶対早く売れてこの事務所をリフォームできるぐらい稼ぎますね!」


「え、ええ子だ……せ、清楚や……。め、めっちゃ期待しとるからね!」


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