リロード
LISMO
第1章 4人の物語
第1話 半強制的に誕生!ヒーローかのん
誰かは語る。『終焉の書????-序章』より、世界が支配される時、3人の勇者が現れる。最初の一人は雷の剣士???。雷の剣を拾い最初の勇者となったと…
私かのんは27歳。夢だった漫画家にはなれたけど、これが全く売れないのだ。なので、金銭的な余裕が無くて今は深夜にコンビニのアルバイトをしている。世界では海底人が地上を攻めてきたとニュースになっているが、そんなもの関係ない。私は自分の事で精一杯なんだ。
「海底人なんかにそう簡単には合わんだろ。」
そう考えている。今は自転車でアルバイトへ向かってる途中だけど、まさかホントに出会うとは…
遠くから聴こえる悲鳴。白衣を着た血だらけの二人組が、自分の方へ足を引き摺りながら向かってくるのが見える。一人は片脚が無く、もう一人は片腕が無い。
「えだ…大…丈夫ですか?」
私が困惑していると、急に二人組の片方から『雷号』と書いてあるスーツケースを手渡された。
「らい…ごう?」
「いかずちごうです。」
「え、」
焦る私をそっちのけで二人組の片方が息を切らしながら話しだす。
「私たちは、海底人対策部隊で戦闘用スーツを作っているものです。このケースに入っている雷号は、長年研究してきたスーツの中の最高傑作なんです。ですが、輸送中海底人に狙われてしまい命からがらここまで逃げてきました。しかしこの傷ではもう助からないので代わりに美里子さんに届けてもらえませんか?」
二人組のもう片方がスマホを取り出して、
「美里子さんとの打ち合わせの場所の地図はこのスマホに入ってます。お渡しします。」
と言って私に血まみれのスマホを手渡した。
「えっと、パスワードは…」
「111111です。」
「おいっ」
私がツッコミを入れた途端、二人組は最後の力を振り絞っていたのか、気が抜けたようにふわっと倒れてしまった。慌てた私は脈を測ってみたが、二人は息を引き取っていた。ツッコミを入れたせいで死んだんじゃないのかとか考えてしまい、不安と申し訳なさから私はこのスーツケースを届けるんだと覚悟を決めて前を見た。その瞬間に、私の顔は一気に青ざめた。人影にして形がおかしいものが、剣を持ちながらこちらへ歩いてきてる姿が。あ、やばいと思った瞬間自転車のカゴにスーツケースを入れて全速力で漕ぎ始める。それに気づいたのか、その海底人も私を追いかけ始めた。どうにか負けないかと何度も何度も分かれた道を曲がり続けたがが、撒くことができず、そのまま海底人は私との距離を詰めていく。そして次の道を曲がろうとしたその時、急に自転車壊れて吹っ飛んだ。その時、海底人は持っていた自分の剣を自転車に投げつけたのだ。転倒した私は、何が起きたか分からないがとりあえずスーツケース拾い近くの駐車場に逃げ込んだ。
駐車場の柱の裏に隠れた私はスーツケースを見ながら、今から助かる方法なんかもうこれを使うしかないよなと考え、開けてみる事にした。スーツゲーム開けると、中には前側にちっさいシールドみたいなのが付いた戦隊ものに出てくるおもちゃみたいな銃とウィンナーサイズほどの銃弾みたいな物が入っていた。その銃に弾を込めながら、
「スーツなんか入ってないじゃん…」
1発の弾でどうすればと焦っていると、
「それを渡せば命は取らない」
と急に話しかけられ、私は一瞬固まった。
「俺の名はバットエンド。それを渡せ。」
見上げると、そこには海底人が立っていた。バットエンドの姿は胸にコウモリのような顔があり、赤黒い肌と黄色い眼の2メートルを超える巨体の人型のバケモノであった。命を取らないと言う言葉を信用できなかった私は、銃口バットエンドに向けてこう言った。
「勝手に名乗ってんじゃねぇ、私は撃つからな!」
それを聴いたバットエンドは、
「ならば撃て!」
と言いながら左手に持った剣を振り下ろす。死を覚悟しながらどうにかなれィ!と、私は引き金を引いた。その瞬間ズドンッと大きな音と共に弾丸が盾のように広がりバットエンドの剣を押し返した。バットエンドはそのまま大きく後ろへ吹き飛ばされた。そしてその広がった盾は私を包みスーツへと変化した。何が起きた?とお互いに困惑していると、急にスーツが喋りだす。
「ヘイユー、キミを承認したぜ!対窃盗用プログラムを起動!これで俺は君だけのものだぜ!好きにして♡」
「誰だよこんな声入れた奴…」
と呆れていると、その隙を突いてバットエンドは胸目掛けて斬りかかる。
「覚悟ォォォ!!」
「え、ちょま!うわー!!」
力強く振り下ろされた剣は、ガキンッと音が鳴り響かせ私を吹き飛ばした。私は目を瞑り、うわ〜痛い私はもう死ぬんだ…とか、売れっ子漫画家になりたかったなぁ…とか考えながら倒れ込もうとしたが、
あれ、別にそこまで痛くなかったぞ?てかよく見たら傷すら無いじゃん。
「なんと、この俺の剣で切れんとはな。」
と驚くバットエンドの姿を見て、
「このスーツもしかしてめっちゃ強い?」
とニヤついた。それを見たバットエンドはこう言い放つ。
「しかし、この程度なら別に俺が本来の力を取り戻せば真っ二つにできるわ!」
「お、負け惜しみかー?」
「なっ…、キサマ…。」
私の煽りにちょっとムカッとしたのかバットエンドは声を荒げ、口から黒い煙を吐きながらこう叫んだ。
「そんなのはァ、俺を倒してから言うセリフだァァ!!」
そのまま大きく剣を横に振り1回転し、それと同時に口から吐いた黒い煙が、黒い斬撃となり駐車場の柱を切り裂きながら私の方へ飛んできた。これには流石に驚き、スーツの性能も忘れ慌てて避けてしまった。駐車場は、一振りの斬撃により支えの柱が全て切断されために崩れ始める。
「ヤバイヤバイヤバイ…!」
私は慌てて駐車場の外へ逃げる。それを眺めながら満足気に笑うバットエンド。そのままその駐車場は完全に崩れてしまった。何とか外へ逃げきり、瓦礫の下敷きになるのは免れた。ふうっとひと息つこうとしたが、バットエンドが居ない。
「あいつ、どこ行ったんだ?」
その瞬間、いきなり足を掴まれ私は地面からバットエンドの剣が飛び出し私の身体を斬りつけるが、スーツに傷ひとつ付くことは無かった。
「やはり斬れんか。」
刃の通らないスーツ雷号にかなり焦る様子を見せるバットエンド。私もこのまま逃げ腰でいても勝てないと、逃げながら戦うことを決意する。すると、また急にスーツが喋り出す。
「ヘイユー!君がようやく戦う気になってくれて俺も嬉しいぜ!君の持つその銃のシールドの裏側にボタンがあるだろ?…ぜ!」
「ぜ!は要らんだろ。」
「そのボタン、押してみ?その後に小指の方にあるトリガーを引いてる間はブレードが出るぜ!一応それがその武器の剣モードになんだよ。…ぜ!」
「うん、分かった。」
言われた通りにやってみると、銃の下側から指先から肘までくらいの長さの光る刃が伸びてきた。
「これはプラズマブレードだぜ!鉄粒子をプラズマ化させて高速噴射してるんだぜ!原理としては水圧カッターとそんなに変わらないぜ!」
よし、これで私も戦える!っと思い勢いよく切り掛かるが、バットエンドの剣に受け流されてそのまま反撃をくらった。やはり剣術ではバットエンドの方が上なのだ。
「ん?てかちょっと待って。プラズマブレードがなんで剣とぶつかるんだよ!」
これに対してスーツの回答はこうだった。
「形や出力とその粒子の分散とかの調整の問題で芯があるだよね。だから降るとその芯にぶつかっちゃうんだよ。だから芯のこと考えたら突きで戦う方がいいと思うよ…あ、ぜ!あ、あとそれ、剣モードとか言ったけどそのまま銃として電撃弾を撃てるぜ!」
「マジかよ先言えよ。でもそれなら勝てるかも…」
作戦を思いついた私は、とりあえず大きくブレードを振りバットエンドを後ろへ下がらせた。
「かのん必殺、大回転斬りだぜ!俺を信じてインファイトだぜかのーん!」
そうすると、私は一気に攻めの連続突きに転じた。
「かのん必殺、スパイクランス!」
「やめろ…」
「すんません。」
スーツによって強化された動きは凄まじく、バットエンドは、防戦一方となってしまい厄介だなと焦りつつも私の突きを全て受け止める。そして私は突きを受け止めた途端、バットエンドに引き金を引く。
変身の時のようにズドンと大きな音を立て、バットエンドの左肩を撃ち抜いた。
「グアァ!」
と叫びながら持ち手側の肩を撃たれたバットエンドは、私の追い撃ちを躱しながらすぐさま後ろへ下がりつつ剣をしまった。そしてバットエンドは、
「次こそ俺はお前に勝つ。」
と捨て台詞を吐きながら去っていった。
「くそっ、殺せなかったか!」
と私は悔しがる。しかし、なんとか助かったと安堵のため息も漏らした。そして、美里子と言う人にこのスーツを渡すことを思い出したので、
「そういえばスーツの脱ぎ方ってどうすんの?」
「耳の裏側にボタンがあるからそれ押すと脱げるぜ!まぁ脱がない方が疲れないし、速いしだから着いてから脱ぐといいぜ!」
「そうなんだ、ありがと。」
などと会話しながら目的地へ向かって行った。
そして、目的地が見えたと同時に派手な髪型をした青い繋ぎでピンクの白衣を着た、街中で一緒に歩いて欲しくない服装の女性が見えた。
ヤバイ服装の彼女はこちらに気付くと、手を振りながら私の名前を呼んだのだ。
「え、なんで名前知ってるんですか!」
と驚いた顔で聞いてみると、彼女はスマホを取り出し画面を見せてきた。そこには『雷号認証者-立花かのん』と表記されている。
「ウオ、マジ?」
「マジよ♡」
「じゃああなたが美里子さんですよね?」
驚きの余り漏れた私の声に返答した彼女、美里子は続けて話し始めた。
「アラ、名前知ってるなら自己紹介はカットするわね。それより雷号の承認者がアナタになったんだけど、その意味わかるよね?」
全てを理解した私は苦し紛れに聞いてみた。
「…スーツ返すんで許してもらえないでしょうか?ほら、名前とか消したりでき…たり…しますよね?」
それに対して美里子はこう言う。
「えぇ、できるわよ。その代わりにスーツを分解しないとイケナイの。分解費に2000万かかっちゃうし、そのうえ2ヶ月以上掛けて分解する事になるわ。しかも分解できたとしてももう一度組み直せるかなんて分からない代物なのよ。これで組み直せなかったら製作費1020億はパーよ。責任とれる?」
その金額に唖然としながら、
「え、いやっ…そのぉ…それって…脅し…?ですよね。」
と聞いたら美里子は笑顔で言い放った。
「あらそうよ♡」
あ、おわたなと絶望する私をそっちのけに美里子は話す。
「まぁ大丈夫よ。その雷号なら滅多な事がなきゃアナタが死ぬことはないし、海底人一人撃退、もしくは討伐につき支給額は47万以上だからお金に困ることなんて無いわよ。」
「えっ、マジですか?」
少し金に目が眩んだ私を見た美里子は目を光らせた。
「そのうえ一組三人編成で活動するから1人で撃退するなんて事はないのよ。更に初めは先輩にサポートしてもらいながらだからね、かなり気楽に戦えると思うのよ。だからアナタ、この仕事やってみない?」
彼女の言葉に乗せられた事もあり、私は対策部隊の戦闘員として戦うことになったのだ。そして私は彼女の研究室へ連れて行かれた。そこにはマッチョな男と可愛い女の子がいた。
「さあ、今日からよろしくお願いするわ♡あ、あと一緒に戦ってくれる二人を紹介するわ。こっちの可愛いツインテールの美少女はひなこちゃんでーす!挨拶よろしく。」
「やっやめろ、ハズい///」
可愛い。私はひなこちゃんの手を取り、
「私はかのん。よろしくね、ひなこちゃん!」
と元気よく挨拶してみると、
「うん、よろしく。」
とひなこちゃんが返してくれた。可愛い。
「次にこのマッチョなイケメン君は自称天才のまさとし君です。自己紹介ヨ・ロ・シ・ク♡」
「あ、うっす。まさとしですよろしく。」
「あ、うん。よろしく!」
なんかひなこちゃんと違くないかと思いながら苦笑いを浮かべているまさとし。
「これから3人で頑張ってもらうわよ!チームMIRIKO、世界の平和のために頑張るぞー!」
「…」
「ホラ、ホラ!」
私達3人は美里子のこのよく分からないノリについていけなかった…。
「お、おぉ〜…」
「声がちっさい!もう一回!」
「おー!」
「もう…」
「…」
私はこのままやっていけるのだろうか。そう不安を覚えながらずっとおー!と叫んでいたのだった…
一方海底では6人の海底人が話し合っていた。海蛇なのかあんまり分からないウミコブラ。右腕がワニのエビ人間の外殻将軍。海底の研究者マンサー。ふわふわ浮いている少女は、クラゲ人間のウミヒメクラゲ。傷を負って帰ってきたコウモリのような剣士バットエンド。そして年寄りの海底人のデルモン。最初に話し始めたのはウミコブラだった。
「おいバット、お前が怪我をするなんて情けねぇぜ。」
それに対して外殻将軍はバットエンドを庇うように、
「バット君は我々と違い長いブランクがあるんだ、仕方がないのだよウミコブラ君。」
「いやしかし…」
とウミコブラ言うとそれを遮るように言い放つ。
「黙れウミコブラ」
「なんだジジィ、くたばりてぇのかァ?アァン?」
怒るウミコブラを無視してデルモンが話し出す。「今俺の手には終焉の書のがある。今はまだ始まりに過ぎないのだ。だがいずれ来るであろう、滅びの始まりが。」
全員が首を傾げる。それを見ながらデルモンは不敵な笑みを浮かべながらこう言った。
「そう、今はこの本のシナリオの序章に過ぎんのだよ。」
第1話 半強制的に誕生日!ヒーローかのん
終わり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます