炎上、負けるもんか

汗がダラダラと出て、止まらない。


『おい、シオン!?大丈夫か!?』


「オワタ……オワタ」


『しっかりしろー!!!』



今日一のコメント欄の流れ。


今日一のコメント欄の荒れ具合。

恐ろしい程に、荒れに荒れまくっている。


Twitterの通知もピコンピコンしてる。


オワタ……オワタ……。



ガクガクブルブル。

恐れていたことが発生してしまった。


炎上。


世間に人気のある芸能人、配信者が最も恐れているものだと僕は思っている。


肯定的なコメントが多いものを『バズる』と表現することが多いが、炎上はその逆。


『〇ねぇ』



『ふざけんなシオン!俺のミオたんを返せ!』



『コバンザメがよぉ!!』



『名前だけのリーダーがよくも!!』



演奏している時の穏やかだったコメント欄から一変。


それ以上の視聴者とコメントの嵐で、荒れに荒れてる。


本来であれば、このコラボ配信は世間一般的に言えば、普通のコラボだと思っている。


だけど、ミオの視聴者は他の歌い手と違う点があった。


それが、圧倒的な男性人気だということ。


顔は映さないが、後ろ姿とかは普通に映っている投稿が多い。

特にミオの場合、年齢よりも随分と若く見えることからも、1部の男性視聴者の性癖に刺さっているみたいだった。


これはVTuberに特に多いことだけど、世の中には『推しに処女性を求めるファン』、通称ユニコーンと呼ばれる者が存在している。


これは、女性VTuberに多い傾向にあるが、なぜか、本当に何故か、ミオにもユニコーンが存在している。


これは、ミオの投稿動画のコメント欄を見れば明らかな事だけど、明らかにそういったコメントを残す視聴者が確認できている。



そして、そのユニコーンの中には、過激派と呼ばれる人もいる。


男性とコラボするだけで、発狂してしまう。


配信序盤から、削除されたコメントや誹謗中傷のコメントが、多分ユニコーンだ。


そのユニコーンが、なぜかミオの視聴者には多すぎる。



分かりきってたこと、覚悟してたことだけど、自分のミスで、ユニコーンの怒りをさらに買うことになってしまった……。



「オワタ……オワタ……」


『しっかりしろシオン!』


「はっΣ(°■°)」


意識が飛びかけていた。

というか、どこかに行ってしまってた……。


今頼れるのは、自分だけ。

情けない姿はミオに見せられない。


「ごめんミオ。取り乱してた」


「うん……かなり……」


「でも、良い機会だ。ここでハッキリしておこう」


「大丈夫……?」


ニコッと笑って涙をうかべたミオの頭を撫でると、僕は配信画面に体を向ける。


「配信を切り忘れてしまって、すみません。今あった通り、僕とミオはお付き合いさせていただきます。もしも意見があるようなら、ミオではなく、僕にお願いします!絶対にミオに誹謗中傷コメント、批判コメントをするようなら、それは僕が許しません!」


ユニコーン?負けるか!戦ってやる!


いつまでも【白夜】に頼られる僕で居たくない!

好きな人くらい、自分で守らないと!


「これで配信を終了します。ご視聴頂きありがとうございました」



そして荒れるコメント欄を尻目に、しっかり配信終了したことを確認する。



よし、切れてる。



「はあああああああ」


ドッと疲れが来た。



「ごめん……本当に……ごめんなさい……私の……視聴者の……せいで」


ボロボロと涙を流し続けるミオ。


「ミオのせいじゃない。それに、僕は戦うって決めたんだ。好きな人くらい僕に守らせてよ」


「シオンくん……」


「さっきも言ったけど、ミオとの時間は心地よかったんだ。それこそ、【白夜】のみんなといる時とは違って穏やかな空間だったんだ」


まるで、俺たちといる時は穏やかじゃない言い方だなって、ツッコミが聞こえてきたような気がしたけど、気にしない……。


「本当に……私でも……いいの?」


「むしろ、今のままのミオが良いよ」


「あり……ありがと……ぅ」


「これからよろしくお願いします」


「よろしぅ……お願い……します」


ギュッと抱きしめあった。




『あのー、良い感じなとこすまんが、ちょっと良いか?』


「「あ」」



タケルとの通話が切れていなかった……。

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