コラボ配信…やらかし
1時間ほど続いた演奏。
最後は先日一緒に出した曲を歌った。
『神だ……』
『1時間『歌姫』の生声が聞けるとか……もう〇んで良い』
『このタイミングでその曲は神すぎる』
コメント欄も、褒めてるコメントが多くなってて、少し安心してる。
「ふぅ」
ミオの一息ついた声で、さらに色つきコメント……スパチャがどんどん送られてくる。
『てか、スパチャ解禁してあったん?』
『ほんそれ。この登録者数だと、解禁されてるとは思ったけど』
僕の配信に来ていると思われる視聴者さんがからのコメント。
そういえば理由を話してなかった。
「実はスーパーチャットが解禁されたのは今月からだったんですよ。でも、その時って配信少なかったですし、僕が受け取るのも気が引けてしまってたんですよね。でも、白夜との配信で、卑屈になるのは辞めていこうって思ったんです。いつまでも情けない自分ではいたくない……そう思ったんです」
『シオンお前……かっけぇな』
『なよなよしてたシオンはどこへ……』
『応援したかいがあったぞ!!』
『俺の初スパチャ送るわ!』
と、さらにスパチャの量が増加した。
「ひぇ……あの、無理しないでくださいね。そんな高額なのは、心臓に悪いというか、びっくりするので」
『これは送れってことですね!』
『祭りじゃあ!!!!』
『つまりここからが本番だな』
「なんでですか!!??」
ミオも携帯を操作して……って!!!???
「ミオさんも赤スパ辞めて!?!?しれっと何回も投げないで!?」
「祭り……」
「ボソッと言わないで!!!???」
『ミオたんに続け!!!』
『ガッテン!!』
「はっ、直接……渡せば良い……のか」
「なんでーー!!!???」
そんなこともありながら、ミオの視聴者も面白がってスパチャを投げてくれたのは、ちょっと嬉しかったです。
「とりあえず1時間は経ちましたね。どうでした?」
『お前、最高だわ!』
『いつもより聴き入ったわ』
『ミオも配信して欲しいって思った!』
「好評みたいで良かったです!ミオさんも配信して欲しいってコメントありますよ」
「むり……」
「なんでです?」
「喋れない……し……」
「との事です……」
『まあ、しゃーないな』
『いつも投稿動画で元気もらってるからそれでOKだ』
『また動画投稿してくれるのを待ってる』
良かった。
てっきり、『生配信やれ!』とかコメントが来るの思ってたから、平和なコメントで安心出来る。
「ちょうど良いタイミングなので、この辺でLIVEを終わりたいと思います」
「まだ……歌い……足りない」
「僕が限界なので勘弁してください……」
『体力おばけか』
『ミオちゃん小柄なのに、体力凄いね』
『シオンももっと食え』
「言われてるなぁ。それではミオさんからも一言お願いします」
「楽しかった……またね」
顔は見えてないけど、ひらひらと手を振る仕草が画面に映し出されてると思う。
『( ゚∀゚)・∵. グハッ!!』
『尊し†┏┛墓┗┓†』
『( ゚∀゚)・∵. グハッ!!』
僕も正直可愛いと思った……。
「それではこれで初のコラボ配信を終わりたいと思います。ありがとうございました」
挨拶して、配信終了……。
「ねぇ」
「はい!?」
ドシンッと、ミオが僕の方に突撃してくる。
「なんで……ミオって……呼んでくれなかったの」
目に涙を浮かべている。
「世の中には炎上というものがありまして……コメント欄ではいましたが、ミオさんの視聴者さんは男性の方が多いみたいなんです」
「それが?」
「特にVTuberとかに多いんですが、男とコラボしたとか、男の影があるだけで、実は炎上したりするんです」
「そっか……ごめん」
「僕の方こそ、配信前に伝えれば良かった」
「私が悪い……シオンくんに……迷惑……かけてる」
「気にしないって。今日は凄く楽しかったし」
「……ほんと?」
「もちろん。僕も自分だけコラボ配信するのって初めてのことだったんだ。コラボ動画を投稿するのもね。その相手がミオで、僕は本当に幸せだよ」
「ミッ……」
「み?」
「好きな……人に……言われると……照れる」
「ファンとして!ファンとして好きなんだよね??」
「ううん……人としても……好き」
「ひぉ?」
「こんな……喋り方で……暗いから……学校でも、馴染めなかった……それに、髪も人と違ってて……いじめられてた……」
「酷い……僕は綺麗と思ったのに」
「んもぅ……でも、シオンくんの……演奏を聴いて、いつか……コラボしたいって思ってて……ようやく実現して……曲も一緒に作って……こうやって配信もして……シオンくんは……優しくて……大好きになった」
面と向かって言われると、なんだか照れくさい。
それに、そんなことを思っていたなんて……。
「だから……名前で……呼んでくれなかったとき……敬語使ってた時……悲しかった……」
「ごめん……炎上のことしか考えてなかった……」
自分ばかり考え過ぎてた。
「やっと……自分の気持ちを伝えれて……よかった……」
ホッと胸を撫で下ろすミオ。
小刻みに震えているから、ものすごく緊張しているのが伝わる。
そこまで言われて、冗談ではなく、本気だってことに気づく。
僕も自分の気持ちに正直にならないと……!
「僕も……ミオのことが好きです」
「……えっ……」
「本気だよ。本気で僕はミオのことが好きなんだ」
ボロボロと涙を流し、口を両手で抑えているミオ。
「こんな……私でも……いいの?」
「そんな君だから、僕は好きになったんだ。どの仕草も、僕には天使に見えた」
ボンッと、ミオの顔が真っ赤になる。
やめて、僕も恥ずかしいし。
「この前、ふとチャンネル登録の1番最初を見たんだ……そしたらミオのチャンネルがあった。【白夜】のみんなを除いたら、1番最初に僕を応援してくれたのは、ミオなんだ。それに毎回動画にいいねをくれる。本当に僕の動画が好きなんだって……誰かに伝わる演奏が出来てるんだなって、自分の自信にもなった。まさか『歌姫』だとは思わなかったけど……でも、こうやって実際に会って、一緒に曲を作って、会う時間は短いけど、とても充実してた。楽しかった。心地よかった。この時間がずっと続けばいいと思った」
「うん……」
「僕と、付き合って頂けますか?」
「喜んで……」
ギュッと、僕らは抱きしめあう。
「良か……良かった!」
「僕もだ!」
「これから……よろしく」
「もちろん」
僕もミオも、涙を流しながら抱きしめあい、そのまま顔の距離が近づいて……
prrrrrr…
「「ん?」」
電話が鳴った。
僕のスマホからだ。
タケルからだ。
「もしもし?」
「ばか、お前!!配信切れてないぞ!!!」
「はっ!!!!????」
慌てて画面を見る。
『あっ……』
『やっと気づいた!』
『ひゅーーー!!!!熱いねぇ!!!』
『全部聞いてたぞ!!!』
『うわあああああああああああ!!!!!』
『ミオたん!!!!!?????』
『シオン〇ね!!!』
『コメントは削除されました』
『コメントは削除されました』
やって……しまった。
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