第6話 交渉決裂からの
俺とシズナは、情報で得ていた炎天のいるアジトへと訪れた。アジトは郊外の城跡で、外には当たり前のように見張りが無数に配置されている。
「どうします、忍び込むならステルスアイテムを出しますけど」
俺でも見破れるようなアイテムなど信用できないので、すぐにその案は却下した。
「いや、下手に忍び込んで見つかったら厄介だ、ここは堂々と正面から入れて貰おう」
「そんなことして大丈夫ですか!?」
「心配ない、ちゃんと入れて貰えるような嘘は考えてきている」
俺はそう言うと、門番の一人に声をかけた。
「ちょっと良いですか、実は炎天様によい儲け話を持ってきたのですがここを通ってよいですか?」
「はぁ? 何言ってんだお前、ダメに決まってるだろうが」
「すごく儲けれる話なんですよ! もし、後で炎天様が、あの儲け話は実は最初は俺に持ってきていたものだって知ってしまったら、怒られるのは貴方ですよ!」
「ふんっ、それじゃ話してみろ、どんな儲け話なんだ」
「誰が聞いているかわからないのこんな場所で言えるわけないじゃないですか、炎天様の前でのみ話させて頂きます。もちろん、その暁には貴方様、え~と貴方様のお名前は?」
「えっ、俺か、俺はベナーだが……」
「そのベナー様のおかげで炎天様にこの話を持ってこられたということは必ずお伝えします」
「そっそうか……しかしな……」
「そうですか、ここまで言ってもダメなら、仕方ありません。この話は他の八天獄の誰かに持っていくことにします」
「ちょっ、ちょっと待て! わかった、炎天様に話を通してやる」
適当に考えた嘘だったけど意外に上手くいった。ベナーくんは炎天に俺のありもしない儲け話を伝えに城跡へと入っていった。
しばらくするとベナーくんが戻って来た。入ってこいと手で招く。俺とシズナはお互いに見つめ合って、無言で上手くいったと笑みをこぼした。
「つまらん話なら殺す、儲けられなくても殺す、後、俺の気分を害しても殺す」
炎天は会ってすぐに、挨拶もしないでそう宣言した。悪い組織の大幹部だけあって、威圧感というか妙なプレッシャーが凄い。
「いや、ごめんごめん、実は儲け話って嘘なんだ」
「……なんだと、貴様!! 殺す!!」
炎天はそう言って、持っていた斧を振りかぶった。俺はすぐにそれを制止する。
「まあ、待て、儲け話は嘘だけど、あなたにとっていい話を持ってきたのは本当だ」
「良い話だと……言ってみろ、それこそつまらん話ならこの斧を貴様の頭に振り下ろしてやる」
「実はここに盗んだドラゴンの牙が送られているって話を聞いたんだけど」
「確かにあるがそれがどうした」
「それを返してくれれば、俺は何もせずに帰ってやる。ほれ、早く返却しなさい。返さないと何かして帰らないぞ」
「……馬鹿にしてんのかテメー!!」
「龍鱗滅矢砲!!」
炎天の膨らむ殺気に思わず、ドラゴンの固い鱗すら貫通して致命傷を与える攻撃スキルを発動してしまった。俺の手から生み出された収束された光は、振り下ろされた斧を粉砕して、さらに炎天に大きな風穴を空けた。
「ぐはっ……うっ……き……きさまはいったい……」
そう言い残すと、炎天はゆっくりと倒れた。
「しまった! ドラゴンの牙のありかを聞いてない!」
「いや、そこじゃねえし! なに他人の親の仇さらっと倒してくれてんの!?」
あまりにびっくりしたのかシズナの口調がおかしい。
「わりー思わず」
「思わずで悪の組織の大幹部を瞬殺すな! どうしてくれんのよ、この炎天を倒す為に貯蓄のほとんどをつぎ込んで購入した高級攻撃アイテムの超級爆炎小瓶を!」
「売ればいいだろうがそんなもん」
「こんなの足元見られて安く買いたたかれるに決まってるでしょ!」
「そもそも仇を倒したんだからいいじゃねえか」
「よくない! 仇は自分の手で取りたかったの! だから気をそらすだけでいいって言ったじゃないの!」
「うるさいな、それより異変に気付いて炎天の部下が入って来たみたいだぞ、あっ、そうだ、それ使って倒せばいいじゃねえか」
「雑魚なんかに使ったらもったいないでしょうが! いくらすると思ってんの! 金貨二枚よ!」
たく、どうやら今のキャラがシズナの本性のようだ。師匠が人間の女性には二面性があるとかないとか言っていたけどこういう意味かな。それに比べて竜娘にはそんな裏表のある女性なんて見たこともない。やっぱり女性はドラゴンに限ると改めて思った。
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