第3話 灼熱兄弟
灼熱の黒豹のアジトは北の山のさらに奥にあった。谷底の洞窟の中で、入り口には見張りがいる。俺はフレンドリーに近づき、中に入れてくれるように頼んだ。
「どうもこんちわ」
「なんだお前は?」
「灼熱の山猫の新入りのエイタって言います。灼熱兄弟にお話があってきました。中に入れて貰えませんか」
さっきと同じ過ちはおかさない。嘘をついて中に入り込み、ドラゴンの牙の場所を聞いたらパッとそれを盗んで逃げるつもりだ。
「ほほう山猫の新入りか、まあいい、灼熱兄弟は気難しい、機嫌損ねて殺されないように気を付けろよ」
そう言って簡単に通してくれた。
灼熱の山猫の上位組織だけあって規模が桁違いにでかい。人数も200人はいるし、どこから盗んできたのか貴重な宝が山のように積み重ねられていた。
「おい、あんた誰だ?」
そう話しかけてきたのは明らかに雑魚とわかるような風貌の盗賊だった。
「山猫の新入りのエイタです」
「新入り! そうかそうか、下部組織のしかも新入りのエイタくんか!」
相手が格下だとわかったことで雑魚盗賊は態度がどんどん横柄になってくる。
「お前、一人でここに来たのか? 下部組織の新入りがノコノコとこんなとこまでやってくるなんていい度胸してんな、いやホントすげーよ、ちなみにこれは本当に褒めてんじゃねえぞ、嫌味で言ってるんだからな」
「はあ……」
「それで何の用だ?」
「灼熱兄弟に大事な話があってきました」
「灼熱兄弟様な!! 何呼び捨てにしてんだよテメー」
「それで灼熱兄弟はどこにいるんですか」
「様って言ってんだろうが!! まあいい、この灼熱の黒豹の黒猫と呼ばれているこの俺様が会わせてやるからついてこい」
黒猫についていくと、洞窟内にある小屋の前にやってきた。黒猫はここで待ってろと言って中にはいる。そしてしばらくすると二人の大男をつれてでてきた。
「おまんが山猫の新入りか、話ってなんだ!」
「ワシらは忙しいんじゃ、つまらん話だったらぶち殺すぞ!」
いかにも脳筋な二人の登場にちょっと笑いそうになる。それをみた黒猫が血相変えてこう説明した。
「テメー!! なに笑顔ぶっこいてんだよ! こちらは泣く子も黙る。トロールを片手で捻り殺したこともある灼熱兄弟の兄上ドンマルさまと、オーガ100匹殺しの弟君ドルセン様なんだぞ! 恐怖と尊敬の表情で迎えやがれ!」
「あっそうですか、それはすんません」
ちゃんと謝ったのに、なぜか黒猫と灼熱兄弟は激怒した。
「馬鹿は死ななきゃ治らないようだな、アホずらは顔だけじゃねえみたいだな」
「クソみたいな顔して偉そうにしてんじゃねえぞ、ボケ!! 望み通り殺してやるよゴブリン野郎!」
「炎竜氷殺破!!」
俺を中心として、殺意の冷気が円形に広がる。かなり命中精度の良い範囲攻撃スキルなので、広い洞窟内の隅から隅までいきわたる。殺意の冷気を受けた盗賊は一瞬で凍結して固まり死んでいく。
灼熱兄弟も例外ではなく、激怒した表情のまま氷像へと変わり果てた。
「思わずむかついたので、また対竜用のスキルをぶっ放してしまった……」
反省の念を呟いていると、唯一の生き残りが絞り出すような声でこう言う。
「わわわっ……お、お前何者なんだよ……なにしてくれてんだよ……みんな氷漬けじゃねえか」
ドラゴンの牙のことを思い出し、とっさに黒猫だけ範囲から外して倒さなかった。完全に恐怖で振るえる彼に、ドラゴンの牙のことを聞く。
「ここに最近、山猫から上納されたドラゴンの牙ってアイテムがあるはずだけど、どこにあるんだ?」
「ど、どどどドラゴンの牙はここにはない!」
「はぁ? どういうことだ?」
「ドラゴンの牙は貴重素材だ、そういう希少アイテムは全て、灼熱の黒豹の真なる支配者、八天獄の一人、炎天のヴァーミリオン様の元へ送られる!」
「そうなの?」
「はい、そうです」
「めんどくさっ!」
心の底から声がでる。今度は炎天のなんらってとこにいかなきゃならないのかと考えながら、この依頼を受けたことを後悔し始めていた。
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