第2話 俺の初めてを貴方に

依頼主の家は、こんな田舎町にしては立派なお屋敷だった。


門番にドラゴンの牙の奪還依頼を受けたことを伝えると応接間に通された。しばらく待っていると、一人の白髪のおっさんが現れた。白髪のおっさんは俺を見ると、何故か不機嫌な表情になる。


「なんじゃ若いの……未熟な冒険者に盗賊退治などできるのか?」

どうやら若い冒険者を信用していないようだ。まあ、どう思おうがどうでもいいので、さっさと話を進める。


「盗賊退治はできるかどうかわからないけど、要はドラゴンの牙を取り戻せばいいんだろ?」

その言葉に自分なりに納得したのか、おっさんは頷いてこう話を始める。


「そのとおりだ。ふむ、少し心配ではあるが、お主に任せるとしよう。それでは詳細を説明してやる。ドラゴンの牙を盗んだのは、ここから北にある山を根城にしている盗賊団だ。どこで情報を得たのか知らないが、深夜に押し入ってきて奪っていきおった。その時に守衛二人が殺されている。なので手荒いことをしても問題ないだろう。皆殺しにしてもいいから取り返してくれ」


まあ、確かに賊に人権はないって俺も師匠に教わっている。しかし、皆殺しとは穏やかではないな。



兎にも角にも冒険者として初のクエストを受注した。すぐに盗賊団が根城にしているという北の山へと向かった。


場所がわかるかなとちょっと心配だったけど、堂々と焚火をして自分のいる場所をアピールしてくれていたので、すぐに見つけることができた。


依頼人は皆殺しにしてもいいと言っていたが、いきなり攻撃をして殲滅するほど攻撃的な性格ではない俺は、まずは話し合ってドラゴンの牙を返して貰えないか伝えてみることにした。


「なんだテメーは!? ここは盗賊団、灼熱の山猫の根城だとわかって近づいてきたのか!」


自ら盗賊団と認めてくれたので助かる。これで間違いでしたってオチはなくなった。


「君たち南の村からドラゴンの牙を盗んだよね? 悪いけどあれ大事な物らしいから返してくれるかい?」


それを聞いた盗賊団の連中は何が面白いのか大笑いし始めた。

「ガハハハハッ── こいつ馬鹿じゃねえのか! 盗賊団が奪った物を返すわけねえじゃねえか! どこの脳無し冒険者かしらねえが、痛い目にあう前にとっとと帰りやがれ!」


「地竜滅殺陣!!!」


地竜滅殺陣は対地竜用の攻撃スキルで、固くて防御性能が高い地竜に致命傷を与えることができる強力なものだ。人間に通用するかどうかわからなかったけど、馬鹿扱いされて腹立ったのでぶっ放してみた。


地竜滅殺陣は、地を切り裂きながら無数の白き刃を扇状に放出する。白き刃に吹き飛ばされた盗賊たちは、五体をバラバラに切り裂かれながら肉片へと変わっていく。あまりの効果にちょっとやりすぎかと焦ったが冷静を装う。


かなり広範囲を攻撃できるスキルなので、その一撃で盗賊団、灼熱の山猫は全滅した。あっ……皆殺しにしちゃったかなとちょっと動揺したが、なんとかギリギリ息のある生き残りがいた。


「ぐっ……勘弁してくれ……俺たちが何したって言うんだよ……」

「いや、殺して他人の物を奪ったりしてんだろ? そう言う悪い行いは自分に帰ってくるもんだぞ」

「ゴホッ── ぐっぐっ……盗賊がお宝を奪って何が悪い!」


「いや盗賊だろうが聖人だろうが、他人から物を無理やり奪ったら悪いに決まってるだろうが、それより聞きたいんだけど、その奪ったドラゴンの牙はどこにあるんだ?」

「ふっ……む、無駄足だったな、ドラゴンの牙はA級の宝だ。すでに上位組織の灼熱の黒豹に献上したわ!」


「なんだと! じゃあ、ここにはもうないのか!?」

「その通り……俺たちを倒してもなんの益も無かったな……」

「ふむ……それじゃ、その灼熱の黒豹とかって言う奴らがいる場所を教えてくれよ」

「ふっ、いいだろう。どうせお前など返り討ちにあうだろうからな、なにせ灼熱の黒豹には灼熱兄弟という上級冒険者クラスの強者がいるからな……」


なんたら兄弟の話はどうでもいいけど、無理かなと思ったが聞いてよかった。それから生き残りの盗賊は丁寧に灼熱の黒豹の居所を教えてくれた。

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