1-9:発生から現在

日本。


2145年、現在日本の総人口は7000万人程となっている。

最盛期と比べると半分以下となっており、人口を増やす事が急務と上に立つ者達は政策を試みている所だ。

最盛期は2080年頃だったと言われている。

記録に残されている数字もそれが正しいとされ、2080年を過ぎてから急激に人口が減り続けるようになった。

何が起きたのか、今では当たり前とされ当時では信じられない者と認識していた神が現れたのだ。

その神を名乗る存在は全世界全ての人間の頭の中に言葉を刻んだ。


≪滅びに向かいし者達よ、地は割れ沈み、海は死の毒で満たされ溢れ、空は病と滅びを運び呼吸をする事すら赦さぬそんな世界が遠くない未来に訪れる≫


≪この地球はそれを良しとはせぬ様だ、故に私が産まれ創られた≫


≪私は神、名は必要無く世界の滅びを避ける為のシステムである≫


≪今この時を持ち世界各地各海に『アースホープ』、伝わりやすい言葉に直せばダンジョンと呼ばれる事が多い物を作り出した≫


≪アースホープには伝承伝記物語に上り連なる幻想空想の生物が住み存在している≫


≪まだ見ぬ未知とされる物を手にする事が出来るだろう≫


≪地球の望みは、滅びを避け新たな道を作り進化していくそれだけである≫


≪地海空を全く穢し壊すなとは言わぬ、ただ限度を持てと言うだけだ≫


≪滅びに向かっていると言うのはその限度が超えられている事を示している≫


≪既に地は枯れ始め、海も大きく穢れ、空が強く壊れかけている≫


≪汚染を止めれば時間は必要となれど自然と癒されよう、世界は本来それだけ強大で豊かな物なのだ≫


≪捨てよとは言わぬ、唯変わり進化せよ≫


≪その可能性がアースホープ、滅びを見る事が叶わぬ様に私は願う≫


≪アースホープの可能性を得る為の力は与えよう、先を見るか見ないかは与えられた者次第≫


≪『インフォメーション』と『ポテンシャリティ』の2つである≫


≪2つもまた伝わりやすい言葉に直すならばシンフォーメションはステータス、ポテンシャリティはスキルとなるだろう≫


≪それらを手にアースホープより可能性を、そしてその未来に続く希望を探すが良い≫


≪未知の物、新たな力、世界の危機、それ以外にも疑問はあろう≫


≪答えを知りたくばアースホープに挑むが良い、10の階層毎に1枚のみ答えがある質疑に対する答えが示される石板が設置されている≫


≪何処のアースホープであろうと1度手にした時点で全てのアースホープにてその階層にある石板は失われる≫


≪石板1枚に質疑は1つ、十分に思考を巡らし質疑を問うと良い≫


≪これより更なる地の破壊、海の大汚染、空の崩壊を招かぬ限り私が直接力を振るう事は無いだろう≫


≪私が唯1つのシステムとして世界を見守るだけであれる事を望む限りだ≫


≪努々心せよ、滅びの時はそれ程遠くない≫


当時としては当たり前だったのだろうが突然現れた自らを神と名乗る存在の言葉など信じられる訳もなく、日本に限らず世界全てで上手く判断を下す事が出来た国はなかった。

神、滅び云々の話し含め到底信じられはしないが子供から大人まで、そして総じて確認が取れる限り全世界の人々に同じ言葉が刻まれた事に始まり、伝えられた通りステータスとスキルを確認できるようになりダンジョンと思われる地下構造体が各地や各海に現れていた事により超常の存在であろうと認識されはした。

故にであろう、それに怯え恐怖し抗う為に更なる力を求め兵器が多く作り出された。

汚染や環境破壊を全く気にしなかった訳では無いであろうが、それよりも兵器を作り身を守る為の武装を充実させる事に躍起になったのだ。

神と名乗ったその存在への備えだけではなく、新しく手に入れたスキルによる犯罪の抑止の為という面もある。

新たにスキルと言う力を手に入れた人々の中には犯罪に走る者も少なからず存在したからだ。

そんな者達による被害は非常に大きなものとなり、取り締まる為の法の設備や取り押さえる為の力が必要だった。

そう言った犯罪者達の抑止と更なる力を得る機会を無くす為にも各地に現れたダンジョンは封鎖出来る物は封鎖され、しきれぬ物は放置される事になる。

全てのダンジョンを把握しきる事が出来ず、出来た物であろうと数が多すぎて封鎖しきる事が不可能だったのだ。

調べた結果、中にはファンタジーの代名詞に近いモンスターと呼ばれるような者が存在していたがそれらはダンジョン内から外に出る事が出来なかったからだ。

浅い場所で発見されたモンスターを外へと運び出そうとしても見えない壁のような何かに阻まれ連れ出す事は叶わなかった。

中は危険ではあれど中に入らなければ危険はない、それを大々的に発表しダンジョンへの侵入を禁止した。

勝手に入る者の全てを取り締まれる訳が無い。

中には勝手に入り死んでいった者は数多く、生き延び力をつけていった者は殆ど現れなかった。

各国の軍等も新兵器の実験等も兼ねてダンジョンへと侵入を試みたりしたが、それは非常に困難を極めた。

浅い階層にいるモンスターであっても作り出した兵器類の攻撃が殆ど通用しなかったからだ。

その上相手のモンスターからの攻撃は身に着けた防具が濡れた紙の様に軽々と破壊、刻み、破かれた。

犯罪者等の人々へは大いに役立ち抑止の効果を発揮する事になったが、ダンジョンに対してはほぼ効果を発揮しなかった。

1ヶ月程の時間をかけて新旧含め作られた兵器は殆ど効かず、素手や落ちている石や木の枝等で攻撃した方が余程真面に戦える事が判明した。

この頃になってようやく最低限の新しいスキルに対する法が敷かれるようになり、それを元に犯罪を起こしていた物の大半が捕まるか無謀にダンジョンへと挑み帰らぬ者となったかで収まりを見せた。

完全には無理であり、スキルを用いた犯罪等は少なくなれど無くなる事は無かった。

1ヶ月の時間で軍や応じて集められた存在達によりダンジョンは3階層まで進んだ。

だが真面な武具も無しに進み続けるのは困難であり、挑む度に被害を出し続け徐々に挑める者が少なくなりつつあったが、その反面挑み続けて生き残った者は力をつける事が出来ていた。

一時的な停滞を見せ、4階層を超えられたのは更に5ヶ月後、ダンジョンが現れてから半年を超えてからだった。

そしてこの半年で大きく動いた物事は存在せず、人々は徐々に新しいく得たスキルと言う物に慣れ始め、関係ない人々はステータスという代物すら忘れ始めていた。

ダンジョン内の生物には効きはしなかったがそれでも兵器の量産は続けられている。

海の汚染や環境汚染は少しずつ進んでいるだろう。

それでも神を名乗る存在が言った何らかの力が振るわれる事がない事から徐々にその存在の力を疑問視し始める事になる。

超常の存在とはいえど国や多くの人々を直接どうにかする力はないのではないか? そんな声が徐々に大きくなり始めた。

ダンジョンから得られた未知の品々は当時の現状では殆ど何も分かっていない。

モンスターを倒した時に落とす魔石と呼ばれる物もドロップした未知の代物も加工や製作の類が一切出来ていなかった。

分かっているのは魔石やドロップ品の布や骨等が機械を使ったり金槌等を利用しても一切壊す事が出来なかったのに、偶々岩等にぶつけたり落して押しつぶしたりした時等はあっさり壊れてしまったという納得しずらい事実だけだ。

岩を落したら壊れる、鉄板を落しても壊れない、車等の重量物で押しつぶしても壊れない。

鋏で切れない、針で穴が開かない、火で燃えない、機械を利用して力づくでも破れもしない、木々に引っかけて引っ張ってしまった時は何故か破れる。

当時はまだ何も分かっておらず混乱するだけだった。

そしてダンジョンの5階層へと挑み、そこにいた今までのモンスターより余程強力なモンスターにより大きな被害を出し攻略は停止された。

手にはいる物は分からず、こちらから挑まなければ危険もない、どうにか出来る算段を整えるまで止めると言う形になったのだ。

そのまま何も出来ずに1年の時間が流れ、地獄の災厄が訪れる。

ダンジョンの大氾濫、リリースと呼ばれる現象が起こったのだ。

このリリース、起こる時に神の言葉が全世界に伝えられる。


≪〇〇のアースホープがリリース≫


それだけだ。

〇〇に当てはまるのは地名になる。

そしてこの当時初めてのリリースは全世界の前ダンジョンで巻き起こったのだ。

地獄絵図すら生易しい、そんな有様だったらしい。

何せどうにか出来る探索者と呼ばれる存在が当時はおらず、僅かに隠れてダンジョンに潜っていた少数の存在と国の意向で潜っていた軍人等だけしかいなかった。

そんな少数の存在で1つのダンジョンから万は超えるであろう数のモンスターが溢れ返ったリリースに対処が出来る訳もない。

モンスター達は当時の技術で作られていた建物を始め車や機械等も容易く破壊できる存在だった。

上手く隠れれば逃れる事が出来た、だが上手く隠れられなかった者、恐怖に負け声を上げてばらしてしまった者等は容赦なく潜んでいた場所もろとも全て失われた。

24時間、モンスター達は世界で人々を蹂躙し続けた。

24時間でモンスター達は不自然に綺麗に消え去り、残されたのは破壊された様々な建造物等と失われた人命の残骸だけ。

この1回のリリースで世界全てを合わせて30億から40億程の死者が出たと伝えられている。

数多の用意されていた兵器の類もその多くが失われ、人々は強制的に理解させられた。

ダンジョンをどうにかしなければいけないのだと。

それから改めてダンジョンに対する法を整備しそこへ挑む者達を集め始めた。

ダンジョンに潜る為の人達を探索者と呼ぶ事になったのもこの時が始めである。

誰もが必死だった。

多くの被害を出しながらも攻略が進められ初めて10階層に訪れ攻略した者が現れた。

石板は階層のボスと呼ばれるモンスターを倒した先に設置されており、そのボスを倒さなければ手に入らないようになっていた。

その者によってリリースが起こる原因が判明したのだ。


【アースホープの最高階層10階層以下は1年、30階層以下は2年、70階層以下は3年、150階層以下は4年、真面に攻略を行わなければリリースされアースホープからモンスターが溢れる】


この情報を得られたのは初めてのリリースが起こってから半年後の事だった。

これにより情報を得られた世界の人々は大いに慌て恐怖した。

自身が住まう場所の近くにあるダンジョンはどれだけ深いのか。

そして攻略とはどうすれば果たしたとされるのか、分からずその答えを得る為にもダンジョンへと更に潜る事が推奨された。

だが20階層を攻略する前に2年目が訪れ、再びリリースが巻き起こる。

1度目よりは戦える者が増えていた事もあり多大な被害は出たが1度目よりは少なく収める事が出来た。

それでも5億以上の人命が失われたという。

必死に人を集め続けてダンジョンの攻略を進めていく。

そしてリリースが起きてから数ヶ月後ようやく20階層に到達した。

手に入れた新たな石板、何を尋ねるべきか、迷い悩みそして尋ねられたのは次の事だった。

ダンジョンから手に入る物の利用、加工の仕方。

階層の深さを調べる事よりも、攻略を果たしたとされる結果よりも、先ずダンジョンに潜る為の者が真面に武具を身に着けられらる様にする事が急務だと判断された。

武具が真面に揃えば攻略のスピードも上がる筈だという考えもあったのだろう。

そして得られた答えは次のような物だった。


【魔石、ドロップされた代物共にアースホープ内から入手された金属等により製作された機械、自然、人力及び人力で製作された物によってのみ加工製作が可能となる】

【魔石はエネルギーの塊であり、変換方法を発見出来れば各種エネルギーとして利用出来る】

【ドロップされた代物は魔石のエネルギー変換、機械の製作、武具の製作、道具の製作、建造物の制作、薬品の制作、食料、肥料に利用できる】


この答えにより様々な事が急ぎ試された。

採掘されてから機械を利用した物を用いて製鉄されたインゴット等は不可、採掘されてから直接当時使われていた炉を用いて製鉄されたインゴット等も不可、炉の製作にも機械等を用いて生成された物を使っていたりした場合は不可だと判明し、本当に根本の最初から人力のみで作り出した物以外は使用不可能であると、様々な試しの結果から分かった。

火等も同じで石炭やコークス等を新しく人力で作り直さなければ使えはしなかった。

そう言った様々な事が解りだし、それを元に今まで出来ていなかったドロップ品等の加工が急激に広まる事になる。

真面に機械を作り出す程の量の鉱石等が発見されていない事もあり、武具に大きく力が入れられ、同時に魔石のエネルギーの変換も色々と試される事となった。

結果3年目を迎える前に30階層の攻略は果たされた。

この時の質問は攻略が果たされたと認識される方法及び果たされた時の効果とはだった。


【アースホープ最高階層5階層と10階層は最深層の門番討伐を持って1度攻略したと認識される】

【アースホープ最高階層20階層と30階層は15階層の門番討伐を持って1度攻略したと認識される】

【アースホープ最高階層50階層と70階層は30階層の門番討伐を持って1度攻略したと認識される】

【アースホープ最高階層110階層と150階層は60階層の門番討伐を持って1度攻略したと認識される】

【攻略を果たしたとされる階層以降5階層の門番討伐を持って1度攻略したと認識される】

【1度攻略を果たした時、1ヶ月の経過時間が戻される】

【アースホープ最高階層に応じたリリース期限の最大値を超える事はない】


その情報を得て1ヶ月程度で3度目のリリースが訪れた。

手に入れた武具を用いて尚今までよりも強力なモンスターの出現なども相成り被害は増え続ける。

人は増え同時に減る為、総数自体は少し減っているくらいの人数しかいない事も原因だろう。

この時の被害もまた5億以上の被害が出たとされている。

今までの情報通りであるならば70階層までのモンスターが現れたのだろうと認識出来ていた。

その後、被害を増やし続けながらも攻略を続けて行き約半年で40階層、その1年後に50階層、そこから2年かけて60階層の攻略が果たされた。

40階層を攻略した後の4度目の大規模リリースの被害は150階層までのモンスターが現れたのだろう、更に強大な力を持つモンスターが暴れまわり被害がかなり大きかった。

40階層の情報を元にしてリリースするダンジョンを減らしたが、期限が短く出来なかったダンジョンが多かったのもあり10億程の被害があったと記録には残っている。

小さなと言っていいのかは解らないがリリース自体はその間にも何度も起こったりはしており1度のリリースによる被害はその都度数万から数十万規模は出続けている。

40階層を攻略した時にダンジョンの深さを知る情報を得て各地のダンジョンの深さが予想できるようになった。

それを元に兎に角リリースが起きない事を優先に攻略し始め、リリースするダンジョンの数を大きく減らす事に成功し始める。

4度目には間に合いきらなかったが、5度目6度目の頃には多くのダンジョンのリリースを減らす事に成功していた。

そして50階層、60階層と進んでいき何とかその攻略を成し遂げたのだ。

50階層では特殊な人種についてを尋ね、60階層ではダンジョンを消失させる方法と作られる原因を尋ねた。

直ぐに強くなれる情報ではなかったが、長い目で見れば非常に役立つ情報だった。

この情報を元に多くのダンジョンが消失される事になったが、住人等の反対で消しきれないダンジョンも数多く残された。

そして60階層を攻略できるようになり、それが出来る人を増やす事を主に国々が探索者を支援していく。

それぞれの深さに応じた攻略出来る探索者を依頼と言う形で足りなそうなダンジョンへと回したりしつつ、少しでも被害を減らす為に尽力し続けた。

それ以来大規模と言われるレベルのリリースが起こる事なく、小さなリリースが度々起こる程度で10年近い間70階層が攻略され無かった。

平均的に力をつけさせる為探索者の学校が作られ、人が減ってしまった事で増やす為の法の整備等がこの時期に整えられた。

学校等が作られ、子作り等が推奨されるようになってから5年程で探索者の数も安定し始め、減ってしまった人口の回復自体はままなってないまでも落ち着きを見せ始める。

この頃にはようやく70階層が攻略され80階層が見え始めていた。

70階層の質問が魔石を効率よく各種エネルギーへの変換する為に必要な素材と加工方法。

これを気にエネルギー関係の技術が一気に高まった。

ダンジョンの攻略よりもエネルギー確保が急務となり、鉱石類の確保から必要な素材の確保で攻略が一時的に滞り始める。

5年かけて最低限の国が保有する各種機械等の置き換えが済み、この頃にようやく80階層が攻略された。

まだまだ一般市民や探索者にとっては危険な状況ではあったが、上に暮らす人々は余裕を取り戻しつつあり、80階層の攻略で得られた石板はそんな権力者達の質問で消化された。

尋ねられたのは寿命を伸ばす又は無くす方法だった。

探索者や一般市民からは大きく非難の声が上がり、それを訪ねた者は立場を追われたと言われている。

それから10年かけてようやく元通りとまではいかずとも、最低限以上の科学技術が復活した。

科学技術の復活で銃等の兵器もダンジョンで使用可能となったが、銃等の類が通じるのは良い所19階層が限界であり、20階層のボスともなればほぼ効かなくなる。

ロケットランチャー等の大型銃器であれば29階層レベルまである程度の傷を負わせたり出来たが、一発で倒せるだけの火力は確保されなかった。

大火力のミサイルや爆弾等であればもう少し先まで行けるのかもしれないが、ダンジョンの中にミサイルなどを持ち込む事も難しく、試された事はない。

純粋にレベルを上げて物理で殴る方が全然強いという結果だけが残った。

だがその反面でその物理を支える武具に関して加工技術が上がった事もあり、大幅にその効能が上昇するという側面もでた。

丈夫な武具、特殊な能力を持った武具、便利な道具様々な物が開発された。

そんな魔石を用いた新しい科学技術の世界へと移り変わり、年を超える毎に進化し続けていく。

深い場所へと潜ればそれだけ被害が大きくなる傾向があり、かと言えど深く潜らなければ現在の科学技術を支える為の素材を手に入れる事が叶わず、人口はギリギリ増えも減りもしない均衡を保っている。

死にやすいのは力が衰え始めた中年と過信しやすい若い世代、20歳以下の若い世代の死亡率が35%程度で35歳から45歳の中年と言われる年齢層の死亡率が50%となっている。

46歳以上ともなれば引退する者も多く、挑み続ける者は相応の修羅勢が多いので5%程度しかなく、21歳から34歳の全盛期と言われる世代が15%程度となっている。

そんな状態でありながらも攻略は続いており、2110年には90階層、2125年には100階層が攻略され、2139年に110階層が攻略された。

現在の最新階層は115階層となっている。

90階層の質問はその階層を攻略した探索者の1人が勝手に尋ね、それが旧世界の消失したと答えられた神を信奉する者で神を名乗る存在は本当に神なのか、他の神々はどうなったのか、と言う事が尋ねられた。

この頃にはある程度世情も落ち着いており、石板の扱い自体が国管理ではなく自由債権に委ねられるようになっていた為、当時の仲間内から大きく非難はされるだけで済み世情からは大きく騒がれる事は無かった。

その探索者のパーティーがどうなったのかは記録に残されていない。

100階層の質問はあらゆる怪我や病を治す薬はあるのか? という物だった。

家族に不治の病を抱える者がいたらしく、その探索者は他の仲間である探索者達から薦められてその質問を投げかけたと言われている。

110階層では肉体と精神が最盛期に戻る又は最盛期を維持する方法だ。

現在も活躍している探索者の上に位置する者の質問だった。

ちなみに現在の人口は約45億程度、男女割合は女性が多く男性3割、女性7割と言った形になっている。

14歳以下の子供とされる人口の割合が10%、15歳から20歳の若い世代が15%、21歳から35歳の最盛期と呼ばれる世代が20%、36歳から45歳の中年と言われる世代が25%、46歳以上の世代が30%程度となっている。

圧倒的なまでに子供世代と若い世代が少なくなっているのが現状である。

これは2110年頃は更に酷い有様であり、2115年には本格的には更に下がり続けこのままでは滅びかねないとその対策を試みる事になる。

2110年代は14歳以下の子供とされる人口の割合が5%、15歳から20歳の若い世代が10%、21歳から35歳の最盛期と呼ばれる世代が15%、36歳から45歳の中年と言われる世代が35%、46歳以上の世代が35%程度となっており、2115年には45歳以下がそれぞれ3%ずつ程下がり、46歳以上がそれぞれ3%ずつ上がっていた程だ。

一夫多妻制の導入と、子供を妊娠した女性に対する大幅な支援だ。

一夫多妻制は古い時代からの逆行だと当時は大きく騒がれたが、それも数年もすれば落ち着き現在では普通に受け入れられている。

少数のそれに大きく反発する組織等はいるが、そんな物はどの時代であろうと存在するので大きな問題にはなっていない。

女性に対する支援は、夫婦として夫がいる場合はその世帯収入に対して支援の度合いが変わり、最低でも月に子供(14歳以下)1人に対して5万円から最高で15万円までの支援金が振るまわれている。

月々の支援金とは別に出産時に祝い金として50万程のお金も振るまわれ、女生と子供に対する医療機関の費用負担も国が保障している。

シングルマザー、子供だけを授かる女性に対しては望むならば妊娠が判明次第で住居を含む衣食住の世話から病院の世話まで全てが賄われる事が可能となり、その間は月5万の支援金も支払われる。

その上で産んだ後もきちんと育てるならばその後も住居等の衣食住、病院の費用を国が全て負担した上で月々の支援金として子供(14歳以下)1人に対して10万支払われる。

住居を世話にならずに自分で決める場合は子供が1人なら25万、2人なら35万、3人なら45万までの金額が月に支払われるようになる。

この時は子供がしっかり育児されているかのチェックが月に1度の割合でされる事になる

その上で夫のいない女性が子供を産んだ場合は祝い金として100万程のお金が振るまわれる。

子供が就学期間に入れば学費等も全額にまではならないが半額免除される事になる。

事前に説明がされているのでその為の費用をその間に貯めておく必要がある。

産んだ子供の数と意欲次第でそれら以外の支援金等も大幅に違いを見せており、徐々にではあるが出産率は上がり現状の状態にまで持ち直している。

探索者の存在を少しでも増やす為に加え、子供を産む女性を増やす為にも成人とする年齢層は引き下げられており、現在では15歳で成人として扱われる。

学校の就学期間も下がっており、小学校で5年、中学校で2年、高校で2年となり高校卒業時に成人している事が多い。

医学自体は過去の記録と復活した科学技術、それに加えたスキルの存在等で余程大きな問題でも起きない限りは死亡リスクはほぼない状況となっている。

現在の大きな問題の1つと言えば、孤児問題がそれにあたるだろう。

子供を妊娠するだけして産んだら国が運営している孤児院に捨てる女性が意外と多い。

妊娠期間約10ヶ月、妊娠が早めに発覚すれば9ヶ月から10ヶ月の間支援が貰えるとし、祝い金の100万と合わせて大体145万前後が貰える上に住居や最低限の食事、医療の不安を感じる事無く過ごす事が出来るのだ。

それを目当てに妊娠して国に世話になり、子供を産んで直ぐに次をと繰り返す女性がいる。

もしくは子供を産み、育てるとして国から支援金を貰い、子供に最低限しか金を掛けずにその金を手に入れようとする女性等も存在している。

違う問題と言えばスキルを使った犯罪、レベルによる暴力の問題等もある。

低レベルの探索者であろうと、相手が探索者でもない一般人からしてみれば超人だ。

肉体性能もさることながら、それに加え特殊なスキルまで備えていれば暴力等を使われても逆らえる者は少ない。

勿論厳しく取り締まる法が整備されているが、それもばれなければ捕まりようがないのだ。

恐怖から泣き寝入りする者も少なくない。

同じ探索者同士であってもレベルの過多で能力差に差が出て、一方的な搾取やストレス発散のサンドバックの様な扱いをされる関係を築かれる事もある。

中々に判明しづらい出来事で、判明した際は大きなペナルティを与える事になっているが、余程馬鹿でもない限り上手くやっている者が多いのでばれる事は少ない。

問題の過多で最高では監獄行きもあり得る犯罪行為でもある。

探索者関係の問題で多くは無いが大きい問題とされるのはダンジョン内での死亡だ。

死亡した対象がいたとしてもそれが事故なのか犯罪なのか判別しようが殆どない。

帰ってきた探索者が事故だったと言えばそれ以上調べようがないのだ。

運悪く他の探索者に見られている、馬鹿が記録として残している、その犯罪の重さに耐えられなくて自白する等以外でほぼ判明する事がない。

他にも大小様々な問題はあるが、問題を抱えたままでもかろうじて世界は進んでいっている。

そんな現在の世界での働き口と言えば1番は探索者で、一般労働を行える人員は非常に少なくなっている。

と言うのも人口ロボットが既に実用されており、余程専門的な分野でもない限りロボットで事足りるのだ。

単純作業、倉庫内作業、事務作業、独創的であったり感動をもたらしたりするレベルではないが最低限よりは余程マシで良いとされるレベルの絵や音楽等の作成まで行える。

その為探索者が非常に多くなっているのだ。

それでも探索者が足りているかと言われれば十分ではないと言う答えが帰ってくる。

元々の人口が少ない事も関係あるだろう。

これでロボット等の類がいなければどうなっていたのか、かなり厳しくなっていたのだろうと予想だけが出来る。

それもあり、学校での教育の中で探索者の為に必要な知識の教育も含まれるようになった。

ダンジョンの基本的な情報、今までの歩みの中で判明してきた事柄、武具の取り扱い等だ。

あくまで最低限度ではあるが、何もないよりは余程マシではあろう。

そんな世界が現状の世界状況となっている。

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