ミッドサマー・ドリーム

 2023年3月21日。

 今日もいい天気だ。

 

 祝日、国民のためにある休み、彼岸、暑さ寒さも彼岸まで、とあるように過ごしやすい陽気になるようだ。


 復帰作の打ち合わせさえなければ。


 ほころび始めた桜の花を見て、あぁ、春だな、とも思えるが。


 世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし

 とあるように、あわただしい季節がやってくる。


 春眠暁を覚えず

 処処啼鳥を聞く


 夜来風雨の声

 花落つること多少を知らんや


 とあるように、寝床で朝を告げる鳥の鳴き声を聞きながら過ごすのが良いのに。


 ここは、東京から100キロ離れた土地。新幹線をこばんだがゆえに、特別急行がない土地。


「行くか」


 執事みたいにして、白手袋をし、タキシード、モーニングでなく、スーツの一段階上にある礼装を入れたのはやり過ぎか。


 スーツは武装だ。ネクタイ、チーフ、ジャケット、その生地と質。なめられてはならない。この見た目と、子役出身である、ということ、消えない訛りに、消せない田舎の匂い。

 どんなに長く東京を甘く受け入れても、ワイングラスについたワインが手入れなしではくもるように、時間をかけて手入れ、管理をしなければ。


 僕は、安藤沙歩には、なれない。

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