ビッチと噂される幼馴染が友人と付き合い始めたのですが、視線の先には俺がいる?!~今までの男性遍歴は俺への当て付け? いや、NTRする気は更々ないが?!
嵩枦(タカハシ) 燐(リン)
前編
俺、遠上 陽介には幼馴染がいる。
彼女の名前は四季 紅菜。
幼稚園から高校2年現在至るまで同じ学校に通っている。
背中に掛かるくらいの艶やかな黒髪。
肌は色白で華奢だがスタイル良く、特に制服の上からでも分かる豊満な胸部は男子生徒の視線を釘付けにしている。
見た目が清楚な雰囲気を醸し出しているがその容姿も相まってどこか背徳で妖艶な美少女といった印象である。
更に頭も良い。
神様は彼女に優れた容姿と頭脳を与えたが、天は二物以上を与えず。
運動神経だけは壊滅的であった。
体力は問題ないが、走る以外のスポーツがどんな練習しても人並みなプレイが困難。
長年、見ている俺も可哀想と思わずには居られないほどだ。
尤も本人自身、自覚はあるので周りに迷惑が掛からないよう立ち回っているのでそこまで心配するものではない。
そんな彼女だがもう一つ…致命的な欠点があった。
それは─────
「……お前、また男振ったろ?」
「えっ? 何で陽介くん知ってるの?」
昼休みの校舎屋上。
俺が昼飯の弁当を食べにこの場所へ足を踏み入れると、既に先客として彼女がいた。
転落防止用の柵に寄り掛かりながらジュースを飲んでいた彼女は屋上の扉の音に反応して、ストローを加えたまま振り返り、相手が俺だと確認するとまた正面に向き直った。
その態度に俺はいつも通りだと思いつつ、彼女の横に腰を降ろすと弁当を食べながら質問した。
それに対して彼女は驚く仕草をして尋ね返してきたのを俺は肩を竦めて答えてやった。
「その付き合ってた男子が朝、俺に泣きついてきたんだよ。お前、告白されて三日くらいだろ? もう別れるって何が気に入らなかったんだ、今度は? 入学からこれで何人目だぁ?」
「ん〜…57人目?」
「リアルな数字が聞きてぇ訳じゃねぇ。理由を言えよ、バカがよ」
俺の返答に彼女はムッと眉を微かに顰めるが、そう言いたくもなるのも仕方ないだろうに。
誰よりも頭が回るのにそんな真似を彼女ら中学二年頃からずっと繰り返している。
57人というのは高校入学してからの数字で中学時代を加えれば、正直、彼女の男性遍歴は通算で3桁へそろそろ食い込むのではなかろうか?
頭が良い奴は何を考えているのか分からない。
現状を知るものからすれば”ビッチ”と陰口叩かれてもしょうが無い所業だ。
にも関わらず、告白が絶えないのは彼女の美貌とスタイル故だろう。
「いい加減にしないと刺されるぞ? お前」
「その時は守ってね?」
「刺されるのはお前の自業自得だろうが。自分で自分の責任とれ」
「酷いっ…大事な幼馴染を見捨てるんだっ?!」
「俺、刺されたくねぇし」
あざとい仕草で俺に視線を向けてくるがそれを一蹴した。
中学から今まで彼女のお陰でどれだけ苦労を背負い込んできたか。
如何に幼馴染でも限度がある。
否、ここまで面倒を見続けていたのは逆に賞賛されてもいい気がする。
「ふーん…別に良いよ。傑すぐる君に助けてもらうから」
「は? 何で彼奴の名前が出てくんだよ」
宮嶋 傑。
中学の頃に交友を持ち、一緒の高校へ進学した俺の数少ない友人の一人だ。
幼馴染の彼女と成り行き上、勿論、面識はあるが高校に入ってから絡みはなかったはずだ。
俺自体、彼女のご乱行から少しずつ距離を取ろうとした為であるからだが。
何故このタイミングで友人の名が出るのか。
俺は嫌な予感を覚え、聞いた。
「どうして、傑がお前を助けるんだよ。ほぼ、接点ないだろ?」
「そうかな? 接点ならあるじゃない。貴方っていう接点が」
「だからって、彼奴がお前を助ける理由はないだろ」
俺の問いかけに彼女は妖艶な微笑みを浮かべながら答えた。
「付き合ってるから、彼と」
「はぁ? 何言って…」
「傑君と付き合う事にしたの。だから、前の彼とは三日で別れた。ちゃんとした理由でしょ?」
俺の人生の中。
中学時代、幼馴染がビッチ呼ばわりされている事を知った以上の衝撃を、当の問題人物からもたらされ。
俺は思考が追いつかず意識を停止させた。
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