僕が天才の理を崩すまでの物語

桜木 澪

第一章 最初の天才崩理編

第1話 始まりの一歩


 何かを変えると言うことは、

 すべてを変えると言うことだ――。

 

 水面に落ちた一滴が大波と変化する様に。

 

 一つが変わると、すべてが変わる。

 

 それ故、何かを変えると言うことは困難なのだ。

 

 誰もが一度は『変えよう』

 そう思ったことがあるだろう。


 しかし、その変える対象は、

 そこだけでは無いことを知っているだろう。

 

 僕には足りない、無かったのだ。


 一人で何かを変える労力も。

 他人を巻き込める人望も。

 

 だから、諦めた。

 変えようと思った――けど、諦めた。

 

 傍から見れば、変えなかった者と変わらないだろう。


 他人どう言おうとも、

 僕らは間違いなく変えようとしたのだ。

 

 諦めた僕はそれから、

 自分は何もしない――。

 そう心に誓った。

 

 そして、僕は考えることを止めた。

 

 このまま、考えずに学園生活が終わるのだ。



 二年生の春。


 一つの出会いが僕を変えることになる。


 

 転校生。


 彼女の意思に呼応する様に、

 僕の中の諦めた感情が蘇る。


 変えない。

 変わらない。

 変えられない。


 足りない。

 持っていない。

 手にしていない。


 避け続けてきた。

 何かを変えると言うことに。

 

 しかし、それも今日で終わりだ。


 そうだ、

 もう一度。


 変わろう。

 変えよう。

 変えてみよう。


 もう一度、

 かつての思考と共に。

 

 僕自身を――。

 この学園を――。



 ――この天才崩理で。



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