第4話 復讐の決意
「カズよ。お前は何でぶち込まれた?」
「お姫様にハメられて…」
「何?どういうことだ」
俺は事の顛末をトキさんに説明した。彼は遠い目をして檻の外を見つめた。
「精神を操作されて性犯罪者扱いか。しょうもない真似を…」
「トキさんはどうしてここに?」
「俺は魔王を殺した」
なんだって?魔王を殺したんなら帰れるはずじゃないのか?
「その顔、なんで帰ってないんだって思ってるだろ?」
「は、はい」
「嘘さ。グリンデル王国の連中は全てをでっちあげてる。俺たち勇者は奴隷に過ぎん。現に、俺は用済みなったら仲間を盾にされて、このザマさ………」
トキさんは両手を思い切り握りしめた。そして、俺の耳元で呟いた。
「ここから出たくないか?」
「……」
「なんだ?王国の奴らに怒りは無いのか?」
「もう、いろんな事がどうでもよくって。信用してたクラスメートにはひどい目で見られたし、帰る場所もない。その上俺は弱い。もう諦め――」
「ふざけたことを抜かすな、馬鹿野郎!!!」
「うわっ!」
騎士や看守に怒鳴られても怖くなかったのに、トキさんがやると心底恐ろしい。
「俺は300年、奴らへの怒りを忘れたことは無い!本当に何の怒りもないのか、復讐したいとは思わんのか!?」
看守が階段を登る音が聞こえて来た。トキさんの怒鳴り声を聞いてやって来たんだろう。
「思い出せ、お前はそのクラスメートになんて言われた?お姫様になんて言われたんだ!」
「ハズレ、とか。負け犬とか。とにかく侮辱されました……」
「その時どう思った」
「……殺してやりたい、そう思いました」
トキさんは獰猛に笑った。
「それでいい。次俺の前で綺麗ごとを抜かしたらぶん殴るぞ」
こ、怖え。言ってることはパワハラ上司だよこれじゃ。でも、不思議とトキさんの前だと本音で喋れる気がする。
「貴様ら、静かにせんか!」
看守が警棒で檻を叩いた。俺達は適当な言い訳をして難を逃れた。
「確かに復讐したいです。でも俺は無力だ!力もないし、スキルも……」
「スキルを認識したときの文章を言ってみろ。一字一句覚えてるはずだ」
確かにすらすらと思い出せた。
「スキル名、固有スキル計測。一目見ただけで対象物の長さや重さが分かる」
「長さや、だな。そうなんだな?」
「ええ、でもそれがなにか?」
「ただの計測なら長さと重さ、って表現になる筈だ」
「それって……!」
「勇者のスキルは漏れなく固有スキルだ。お前だけの能力なんだ。まずは適当に使ってみろよ」
「はい!」
トキさんの枕に対して使用した。
重さ、450,7898098797……
「うわああ!頭が!」
「落ち着け、使い方はお前自身が一番よくわかってるはずだ」
「は、はい」
深呼吸して気持ちを整えてもう一度使った。今度はほどほどに、適当に。
「450.8g、縦38.7㎝、横55.1㎝」
「なかなか飲み込みが速いな。やはり勇者だよカズは」
「へへ、ありがとうございます」
もしかして、俺の力には可能性があるのか?
そう思ったら、心の中に怒りが燃え上がって来た。やってやる、あのクソ聖女と王様、それに俺を馬鹿にした奴らを見返してやりたい!
「中々いい面構えになったじゃねぇか」
「トキさん、ここを出ましょう」
「ああ、俺はずっとそのつもりだ」
「俺はまずなにをやったらいいんですか?どうしたら……」
「落ち着け。そうだなぁ……」
トキさんと話し合った結果、俺がやるべきことは以下の三つに定まった。
第一に、スキルの性質を掴むこと。
第二に、この牢獄に慣れること。
第三に、体を鍛えること。
「俺たち勇者は成長速度が速い。だがそれはコツを掴むのが得意ってだけで、体は鍛えなきゃ弱いままだ。だから鍛えろ」
いつもの俺なら筋トレなんてやりたくないと愚痴ってるとこだけど、今は違う。
どんな難題でも、怒りの力で乗り越えてやる!
「強くなれば、いいんですね?」
「簡単に言ってくれるじゃねぇか。だが、その意気だ。おっと、そろそろ飯の時間だ、色々案内してやるよ」
トキさんが言ったそばから檻が勝手に開いた。凄いな、魔法でどうにかしているんだろう。
「古株の俺には囚人たちは逆らわない。そばから離れるなよ」
「はい」
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