異世界に飛ばされたらツンデレ美少年との生活が待っていました。

ラムココ/高橋ココ

第1話 可愛がりという名のからかい

 私は唯一、両親の形見?として二匹のウサギとネコを飼っている。

 二匹のウサちゃんは、それはそれはとても可愛い垂れ耳のホーランドロップと、ネザーランドドワーフである。私的にはホーランドロップのサツキがとくに可愛いと思っている。

(依怙贔屓)


 ········もーたまらんよね! 今ももしゃもしゃ草たべてるけど、構わず可愛がりにいきます!


「サツキ~草美味しい~?」


 もしゃもしゃもしゃもしゃ···········

·········ガリガリガリッ! ダンッ!


「なんでよ!? なんで逃げるのサツキ! しかも足ダンまで!」


 そうなんです、私なぜか愛しのサツキくんに嫌われてるんです、ぐすん。


 いや理由は分かってるんですけど!

 私のせいなのは分かってるんですけど!


「耳くすぐったり身体くすぐったりツンツンしたりペレットの入れ物を遠ざけたりひっくり返して抱っこしたりしっぽちょいちょい引っ張ったり耳で目隠ししたりネコの目の前で抱っこしたりネコに身体ちょいちょいさせたり仲の悪いほかのウサちゃんの前で抱っこしたりエトセトラエトセトラもうしないから機嫌直して? ね、サツキ?」


 もしゃもしゃもしゃもしゃ·········

 

 無視ですか! でも可愛いごちそうさまです!!


 無我夢中可愛がっていると、すでに朝7時。もう家をでなければいけない時間になっていた。

 最後にペレットだけあげてから、会社の準備をする。


「じゃ会社行ってくるからね、サツキ。良い子にしててね」


 まあケージに入ってるから良い子にしてるもなにもないんだけど。



◇◇◇◇◇◇


「はぁ、いつ見ても可愛いなぁサツキは」


「なーに見てるの!」


「うわぁ!? 久美ちゃん!?」


 会社の終礼後、サツキの写真を愛でていると急に耳元で聞こえた声に振り返ると、同期で親友の久美ちゃんが私のスマホを覗いていた。


「何を見てるって、我が愛しのサツキの写真に決まっておろう!」


「ぷっ、あはは! カッコつけて言うこと? でもふふっ、良かった。今日の理奈、なんか落ち込んでるように見えたからさ」


 ふざけていたところに久美ちゃんの予想外の一言。


「・・・・・やっぱり親友の目はごまかせないね。朝さ、実を言うとね・・・サツキにまたしても触らせてもらえなかったんだよぉ・・・・・」


「・・・・・・そんなこと?」


久美ちゃんよ、そんなことだと!? 私にとっては一大事なのに!


「そんなこと言うな。私にとっては死刑宣告と同じくらいの絶望ものなのに・・・・・」


「ふ、ふふっ、ご、ごめんね理奈。ほんと、いつも通りの理奈で安心したよ。でも、そろそろ帰ろう。他の子たちもほとんど帰っちゃったしさ。今日は夕飯食べて帰る? 落ち込んでる理奈に大サービスしちゃうよ!」


「なに? 奢ってくれるの? よし行こう!」


「・・・・・・こういう時って普通遠慮しない?」


 ジトっとした目をこちらに向ける久美ちゃん。


「そう言われても、貰えるものは貰う、これが私の掲げる信条!

久美ちゃんも知ってるでしょ?」


「ふふっ、そうだね。そういう自分に正直な理奈だから私も好きになったわけだし」


「久美ちゃん! 私の心の友よぉ!」


「わぁ!? も、もう!」


 ふふっと笑う久美ちゃんがあまりにも天使過ぎて思わず抱きついちゃった。

 頬を薄ら赤らめて怒った顔をする久美ちゃんも可愛い!


 あ、だが急な尿意が!


「ごめん久美ちゃん! ちょっとトイレ行きたくなってきちゃった。すぐ戻ってくるから待ってて!」


「あ、うん! 待ってるね」


ごねんよ、久美ちゃん。すぐ戻ってくるからね!



・・・・・なんて思って久美ちゃんと一旦離れたのが、まさか一生の別れになるとは、この時の私は知らなかった。

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