※2 あふるる

 言いたいことをすべてを言い終えたとき、彼の心の底に溜まった水は一滴残らず消え去っていた。しかしすぐにどこからか、怒涛の勢いで新たな水が注ぎこまれ、あっという間にあふれて濡れた。言葉にしても足りなかった。すべては決定的で、引き返すことのできない地点に立っていた。振り向いて霞んだ目をじっと凝らしてみても、なにひとつ見当たらなかった。そのうえ並んで共に分かちあえる者は、ただの一人も思い浮かばなかった。蝋人形に話しかけるようなものだった。どんな言葉も無力だった

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