第6話「危ない!」
翌日。
授業を終えて部室にて。
「そういえば三年生の人いないけど、元から?」
美瑠がふと尋ねる。
「ううん、一人いたわ……けどね」
千恵は暗い顔になって項垂れた。
「あ、聞いちゃ駄目だったんだ。ごめんなさい」
「いいわよ。そのうちどっかで耳に入るだろうから今言っとくわ」
そう言って千恵は話し出した。
その三年生ってね、あたしの一つ上の幼馴染。
名前は
家が近くてよく遊んでもらって、きょうだい居ないあたしにとっては本当のお姉ちゃんと同じだった。
文芸部も先輩達が引退した後、お姉ちゃんとあたしだけになったの。
このままじゃ来年には廃部になるとなった時に優希と大輔が、哲也も掛け持ちで入ってくれたんでなんとかできた。
さあこれから改めてって時に……。
「『彼氏ができたから辞めるわ~』って何よおおおおお!」
「へ?」
千恵の絶叫を聞いた美瑠は首を傾げた。
「千恵ちゃん、その雰囲気じゃまどかお姉ちゃんが亡くなったかと思っちゃうよ」
優希がツッコみ、
「うん、あたしそう思った」
美瑠は優希の方を向いて頷いた。
「いいや、あの真面目で優しかったお姉ちゃんは死んだのよ!」
千恵は涙目になっていた。
「……すっごく大好きだったから、裏切られたって思っちゃったんだね」
美瑠が言うと、
「うん、百歩譲って相手も同じような人なら諦められるけど、なんであんな不良をなのよーーー!」
また声を上げる千恵だった。
「僕も腹が立つよ。お姉ちゃんは僕と哲也君も昔から知ってるけど……今じゃ彼氏さんに合わせてるのか、すっごい格好してるし」
優希も顔をしかめて言う。
「ねえ、その彼氏に何か弱み握られてってのは?」
美瑠が尋ねるが、
「話してみたけど、そうじゃなさげだったわ……」
「まるで人が変わったかのようだよね」
二人は頭を振った。
「それ変わったんじゃなくて、何かに取り憑かれてるのかもしれないよ」
美瑠がそう言うと、
「それも無いよ。だって見えなかったし」
優希がまた頭を振って言った。
「え? 優希君はそういうの見えるの?」
美瑠が目を丸くして聞くと、
「見えるというか感じられる、かな?」
「そうよ、こいつって霊感あるもん」
千恵が優希を指して言った。
「あたしもあるよ。うちって代々霊感強い人多いの」
「それ、あんま言わない方がいいわよ。気味悪がられるから」
「分かってるよ。それで優希君、本当に何も感じなかったの?」
美瑠が尋ねると、
「ん~、なんだろ? 霊的とは違うから、お姉ちゃんが変わって嫌な気持ちになったと思ったんだ」
優希は首を傾げて言った。
「そうなんだ。ねえ、あたしもまどか先輩に会っていい?」
美瑠がそんなことを言った。
「いいけど、どうする気?」
「とりあえず見てから考えるよ」
皆は早速とばかりに部活を切り上げて探しに出た。
今までのパターンからして校舎裏にいるのではと千恵が言うので、そこへ向かうと……。
「あ、いた」
優希が小声で言い、
「うわあ、なんか昔の映画に出てくるヤンキーとスケバンみたい」
美瑠の言う通り、まどかは長いスカートのセーラー服で金髪にしていて、彼氏の方は昔の学ランでリーゼントとまさに昔の、だった。
そして二人でヤンキー座りしていた。
「そうなのよ……一億歩譲って今風ならまだしも、なんであれなのだわ」
千恵がウンザリしながら言う。
「タバコとか吸ってないだけマシだよ」
優希も言うと、
「ん? 千恵に優希じゃない」
まどかが千恵たちに気付いて言う。
「あ、お姉ちゃん。あのね」
「別れろって言うならお断りよ」
まどかが千恵を睨むと、
「今はそれ置いといて、お姉ちゃんに会いたいって子がいるから連れてきたのよ」
千恵がそう言って美瑠を指した。
「うお、色々でかいわね。てかこの子、目が蒼いけどカラコンでも入れてるの?」
まどかが目を丸くして言った。
「は? お姉ちゃん、目も悪くなったの? 普通に黒いじゃん」
「どっちも1.0あるわよ!」
「俺も蒼く見えっけど、おめえが目悪いんじゃねえか?」
彼氏も美瑠を見ながら言う。
「うっさい話しかけんな!」
「おお怖」
千恵が怒鳴ったが彼氏はニヤニヤしているだけだった。
「……間違いないよ。この人達取り憑かれてる」
美瑠が表情を曇らせた。
「え、ほんとにそうなの?」
千恵が美瑠の方を向いた。
「うん。あたしの目がそう見えるのは、何かに取り憑かれてる人だけだもん」
「何言ってんのあんた? ここおかしいんじゃないの?」
まどかが頭の辺りで指をクルクル回したが、
「二人共じっとしてて、追っ払ってあげるから」
美瑠は意に介さず二人に近寄った。
「ちょ、
まどかが彼氏、徹に言う。
「ああ。おい、痛い目に逢いたくなかったら」
ドゴオッ!
美瑠がいきなり回し蹴りを放って徹をぶっ飛ばし、
「徹ー!?」
まどかが血相変えて徹に駆け寄っていった。
「えーと美瑠さんや、殺しちゃいねえよね?」
千恵がおそるおそる尋ねる。
「手加減したから大丈夫だよ~。さ、じっとしててね」
美瑠がまた二人に近づこうとすると、
「て、てめえええ!」
徹が起き上がり、ポケットからナイフを取り出して美瑠に向かって行こうとした。
だが、
「危ない!」
「えっ!?」
優希が駆け寄って美瑠の前に立った。
「関係あるか、うりゃあ!」
徹がナイフを突き立て……。
「っ!」
優希は目を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます