オチ
オチ
「あらためて……地区予選を無事に突破することが出来しました。これもひとえに皆さんそれぞれの弛まぬ努力があってこそだと思います。自分としても作家として色々と勉強させていただくことが多く……」
「司くん、司くん……」
「はい? なんですか、笑美さん?」
「長い。っていうか、単純にオモロない」
「ええっ⁉」
「ちゃっちゃとやろうや」
「え、えっと……地区予選突破です! かんぱーい!」
「かんぱーい!」
地区予選決勝から数日後、部室にセトワラのメンバーが勢ぞろいして、ささやかながらも祝勝会を行うこととなった。
「いやあ、医学部志望がインフルエンザにかかるとはまったく情けない限りだ」
「まあしゃあないでしょ、そういうもんは……」
「自分もお役に立てなくて情けないっす!」
「野球部のメンバーにはうつらなかったから良かったやないですか」
うなだれる屋代と江田を笑美がフォローする。
「全国大会ではこれぞ医学部志望!というところを見せたい」
「自分では打撃面でアピールしたいっす!」
「全国の皆さんに一体何を見せようとしてるんですか……」
「笑美ちゃん、ホントごめんね~」
「肝心なところで役に立たなくて~」
礼明と礼光が手を合わせて笑美に謝ってくる。
「いやいや、気にせんでええよ」
「体をしっかりと鍛え直すから! まずは滝行よ!」
「そう! その次は火渡り!」
「いや、妙な時期に悟りを開かれても困るから……」
「あらためて申し訳なかったでござる……」
「マジでごめん!」
因島と倉橋が揃って頭を下げてくる。笑美が手を振る。
「まあまあそういうこともあるって……」
「お詫びと言ってはなんでござるが、これはコミケのカタログでござる」
「いや、もらっても扱いに困るな……」
「これ、東京で人気あるカフェのクーポン券!」
「いやいや、東京への交通費がかかるがな」
「この度はご迷惑をおかけしましたわ……」
「誠に申し訳ございません」
優美と小豆が笑美に謝罪してくる。
「あまり気にせんといてええから」
「お詫びに全国大会には我がグループ所有のクルーズ船で優雅に参りましょう」
「いや、そこは普通に行こうや」
「見事優勝した暁には、盛大に船上パーティーです。ねえ、小豆?」
「はい。僭越ながら料理に腕を振るわせていただきます」
「そ、それはちょっと気が早いかな……」
「ソーリーでした!」
「スマナイ……」
「ごめんネ~」
オースティンとエタンとマリサが笑美に謝ってくる。
「いやいや、ドントマインドやで。ドンマイ、ドンマイ」
「全国大会ではUSAの威信をかけマース!」
「フランスの誇りを見せル……」
「スペインのコラソンを見せるネ~!」
「気負い過ぎっていうか、背負い過ぎやから……!」
笑美は苦笑する。その後、笑美はベランダに出る。しばらくして司が声をかける。
「笑美さん、こっちにいたんですか。黙って帰ってしまったのかと」
「なんでやねん、感じ悪いやろ」
「あの……」
「ん?」
「ありがとうございました! 笑美さんのお陰でこういう結果を出せました!」
司が頭を深々と下げる。笑美がふっと微笑む。
「お礼を言うのはこっちの方やで、ありがとうな」
「え? そ、そんな……」
顔を上げた司が戸惑う。笑美が微笑みながら呟く。
「セトワラで活動して数ヶ月……またお笑いのことを好きになれたわ」
「そ、そうですか……」
「だから『お笑い甲子園』でも頑張ろうや! じゃんじゃん良いネタ書いてや!」
「任せて下さい。『怪人ボケ百面相』というネタを考えています!」
「なんやそれ。ツッコミ甲斐のありそうなネタやな……」
「演者だけではなく、会場のお客さんもみんなボケるネタです」
「百面相ってそういう意味⁉ そ、それはツッコまざるを得んなあ……!」
~第一笑 完~
※(23年7月31日現在)
これで第一笑が終了になります。第二笑以降の構想もあるので、再開の際はまたよろしくお願いします。
【第一章完】凸込笑美はツッコまざるを得ない……! 阿弥陀乃トンマージ @amidanotonmaji
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