女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉

ナンパから助けてくれた彼①

 己を囲むガタイのいいチャラ男集団。  いつもの僕ならばリンチかカツアゲが目的なのだろうが、今の僕だと事情が異なる。


「君カワイーね」

「オレらとカラオケとか行っちゃわない?」


 そう、ナンパだ。我ながらうまくできた女装はいらんものを引寄せた。


 今まで遭遇したのはごめんなさいと言えば引いてくれる良識的な人だったが、今日のは引いてくれない。


 自分好みのふわふわした女の子らしい女の子を目指したわけだから、女声に聞こえないでもないとはいえ僕の声は合わない。

 この声で認められる女子はボーイッシュ系が限度だ。


 そういうわけで、あまり大きな声を上げて抵抗するという手段を選べなかった。


 小さな声でいやいやしてる女の子なんて逆効果でしかないことくらいわかってる。

 でも無抵抗というのも癪に障るじゃないか。

 こういう奴らは抵抗しなければ同意したと勘違いするバカばっかなのだ。


 こいつらどうしてくれようと思案していた時、背後から不意に腕を引き寄せられた。


 嘘だろう? 誰もいなかったはずなのにいつに間に周りこまれたんだ!?


「俺のツレになんか用?」


 弾かれたように視線を向けると輝かんばかりのイケメン。

 どう転んでもナンパ野郎の仲間にはなりそうもないご尊顔。

 …… 見覚えのあるイケメンだ。


 イケメンはそのまま無言でナンパ集団を見る。無表情で眺める。

 美形の無表情は恐ろしいのだ。


 それにたじろいだチャラ男たちは、捨て台詞を吐きながら去って行った。


 だが僕の災難は去ったわけではない。


「大丈夫だった? それとも、お節介だったかな?」


 目の前で優しげに微笑むこの男はクラスメイト。つまり男の方の僕を見たことがある。


「いえ、そんなことありません。ありがとうございます」


 早くいなくなれーと願いつつ、普段よりも細く高くを意識して声を出す。

 でも僕の願いは全く通じない。


「可愛い子が困ってたんだから当然だよ」


 それどころかナチュラルに口説きやがったではないか。これだからイケメンは!


宮下みやした、恐ろしいやつ……!」

「あれ、名前教えたっけ?」


 反射的に口を押さえるも一度出た言葉は戻らない。


 じっと顔を見つめてくる宮下に居心地が悪くて視線を逸らす。

それでも視線は止まない。


実際にはどのくらいの時間だったかはわからないが、僕には恐ろしく長い時間に思えた。


 たっぷり僕を眺めた後、宮下は得心したように声を上げた。


「もしかして、同じクラスの仁科にしなゆきな--」

「わああああ!!!!」


 滅多に出さないような大声で言葉を遮り、思わず腕を鷲掴み引きずるような形で人の少ないところ目指して連れ出してしまう。


 宮下はというと、学校でも今も大声を出すようなタイプじゃなかった僕の大声に面食らったのかされるがままだった。

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