時間をトリップするには、どうすればいいと思う?

 じゃあ、行ってみるかい。

 あててみな、時間をトリップするにはどうすればいいと思う?


―――――絨毯に乗る?タイムマシン?

 それとも、何か呪文を唱えるとか?


 上の三つを考えたならすでにお前は脱落だ。

 そうじゃないなら、君の正解をちょっと期待してもいいだろう。


 正解はな、目を、閉じればいいんだよ。

 あっ、てめえ笑ったな。鼻で。

 まあ聞きなって。


 仕事の終わらない夜、ちょっとだけひと眠りしようと目を閉じたら、もう朝日が昇っていた……なんてことはないかい。

 あのとき君の意識がいる場所は、今からおれたちがいくところに限りなく近い。

 ほぼ一緒といっても過言ではないだろう。

 唯一問題となるのは、君の頭がはっきりしているかどうかだ。


――――――もう少し詳しく説明しよう。


 普段、眠っているときの君の意識はもうろうとしているだろう。全くないときもある。

 その君の意識は、時間の「川」の流れにいるんだよ。

 「川」はいつでも未来へと流れている。まあ当たり前だよな。

 いつ目を開いたって、時間は未来へ進んでいるのだから。

 でもちゃんと意識を保てば、過去にだって逆流できるんだ。

 

 分かったかい。

 これが、寝たら時間を行き来できるロジックだ。

 

――――――じゃあ、どうやって意識を保つのかって?

 それはな、薬剤の力に頼るんだよ。

 薬のレシピは簡単、カフェインに経口麻酔を少々。悪くないだろ?

 最近は調合済みのものが薬局で売ってるぜ。


 そんなもの飲みたくないって?

 今更言われてもなあ。

 ほら、君の手元のコップを見てごらん。

 だんだん、眠くなってくるだろう――――――

 ま、本当は、カフェインに麻酔なんて単純なレシピじゃないんだけどな。

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トリッパー時間旅行記 むきむきあかちゃん @mukimukiakachan

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