天然、津成さんは今日も呟く
あすペン
第1話カン違いとヒトリゴト
うちの学校は、全生徒部活入部だ。
なので、それなりに部活は多い。
が、俺は運動は苦手だ。
すると入れる部活は文化系しかないわけで。
と、言っても。別段入りたい部活もなくて、困っていた。
訳では無い。
正直このまま入部せず逃げ切れるのでは、と、どこに入部せずに勧誘期間を乗り切ろうとした最終日を直前に担任に捕まった。
「おいおい。お前ら逃げれると思うなよ」
俺ともう一人。
同じクラスの何ならの隣の席の
津成奈津。
いつも気怠げな雰囲気を纏っている。
が、意外と顔は整って、黒髪ボブヘヤーはよく似合ってる。
「津成、黒瀬。お前れだけだぞ」
俺たちは職員室に呼ばれていた。
担任の佐藤先生がイライラしたようにペンで机で叩く。
佐藤先生は美人先生で有名だが今はその面影はどこになく、般若になっていた。
「先生、私帰らないと」
津成さんが、そんなのお構えなしに挙手してそんなこと言った。
「おいおい、津成いい度胸してるな」
笑ってるはずの先生の顔は全然笑ってない。
「初めて言われました」
津成さんは少し恥ずかしそうに言う。
「こ、こいつ」
ぷるぷると震え始める。
「はぁぁ。お前はもういい」
「じゃあ、帰っていいですか?」
すかさず先生は、津成さんの頭に制裁を与えた。
「いったーー」
津成さんはうずくまり、頭を抑える。
「黒瀬お前は何だ。なんで一言喋らんのだ」
「いやいや。隙ありました?」
二人で盛り上がっていて俺の入り込む隙なんてなかったのは先生も分かってるはずなのに。
「お前は積極性にかけるな」
理不尽。
何だこの教師は。
「まあ、いい。お前はなんで部活にはいらないんだ」
「何でと言われとも」
特に理由なんてなかった。
ただ、めんどくさいから。では、許してくれないはの火を見るよりも明らかである。
「弟の面倒を見ないといけないんで。だから遅くなりやすい部活にはちょっと」
「はいれない。と?」
「そうなりますね」
「そうか」
先生はニヤリと笑うと、何枚かの募集用紙を取り出し俺と津成さんに渡した。
「こ、これは?」
嫌な予感がした。
「それは、比較的練習時間が短い部活だ」
先生は自信満々にいった。
「うちは部活が多いことが有名でな、そこから選べ」
「え?」
「来週までに決めろ。決まらなかったら私が一枚引いてやる」
なんて投げやりな。
要するに、ランダムになるわけだ。
「それでいいんですか?」
「いい。お前が部活にはいらないほうが面倒だからな」
にっと笑って。
「明々後日まで体験入部してる、部活ばかりだ。見学してから決めてくれ」
俺達は先生から紙を受け取った。
「よし、今日は早く帰ってすぐ決めろ。じゃあ、解散」
そう言われ、俺たちは職員室を追い出された。
俺たちは静かな廊下を、黙って歩く。
外からは、運動部の掛け声や、どこから聞こえてくる楽器の音だけが静寂な廊下を彩る。
正直、部活に関してはどこでも良かった。
先生が決めてくれてとも全然いい。
が、津成さんは一生懸命勧誘用紙を見ていた。
多分、今前から走ってくる生徒がいたらラブコメ展開になるだろう。
すると。
「写真部、ちょっと面白そう。あ、料理部美味しご飯が食べれるんだ」
と、ブツブツと独り言を呟いていた。
俺はそれを黙って、聞き流す。
周りの雑音と同じように。
すると、津成さんの口から聞き流せない言葉が聞こえた。
「黒瀬君は、どこにしたんだろう?」
俺は、津成さんの方を見た。
「同じとこがいいな」
津成さんは、こちらを見もせずにずっと勧誘用紙を眺めていた。
え?なんで俺のこと気にするの。
頭にいろんな妄想が巡った。
もしかして、俺のこと・・・・・。
なんて、中学生みたいな思考のなるがすぐに我に返った。
それでも、気になってしまう。
「あ、津成さん?」
我ながらキモい、声が出た。
「ん、なに?黒瀬君?」
津成さんの大きな瞳がこちらを捉えた。
一度、意識してしまった以上どうしても顔をうまくいることができない。
「さっき・・・・・」
津成さんは、?マーク浮かべるとすぐに何かを思いついたように、「あ!」という。
「頭なら、もう痛くないよ」
身長は俺方が高くて。頭のてっぺんまで見えるのに、津成さんはこちらに頭を突き出し、叩かれた場所を見せてくれた。
「ん?」
思ってたのと違い、俺は変な声を出す。
「え?」
お互い頭に?マークを浮かべる。
あれ?これ、勘違い?
津成さん、何も言ってない?
なんて思うが、そんなことない。
確かに、聞こえた。
「あ、違くて。さっき、言ってたことだけどさ」
「さっき?」
次は、顎に手を当て考えているモーションをする。
「さっき?私なんか言ったけ?」
「え?」
「私何も言ってないよ」
あ。
また俺はカン違いをしてしまった。
おまけ
教頭「叩いちゃダメだよ」
佐藤先生「あ!(見られてた。マズイ)」
教頭「保護者に何も言われなきゃいいけど」
佐藤先生「すいません。すいません。すいません~ん」
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