ソウルメイト

波平

第1話 怪しい占い師

「え?ソウルメイト?

 そんなのあるの?オレ達の事かい?」


「うん、私と、としさんは魂の伴侶なんだって?

 でね、前世から私たちは一緒だったの。

 だから今居るんだって、すごいの、その話」


急な電話だったから何事か?と心配したが

占いの結果を伝えるためなのか?


ひろちゃんは先日行ってきたという

占い師の事を興奮気味に話しだした。



とある占い館が並んでいる施設。

彼女はオレとの恋愛運を見てもらおうかと

悩んでいた。


「ねえ?お姉さん?」


小さな占いブースの前に

小柄な女の子が立っている。

男物のワイシャツ、白いパンツ。

長い黒髪、吸い込まれそうな瞳。

年のころは20代前半。

かわいいが、ものすごく冷たい印象。



「私ですか?」


「うん、あなたは私の所に来るよ。

 守護霊様が先に呼びに来たもん」


「何の事ですか?」


「いやだからさ~恋愛の悩みでしょ?  

 彼氏さんとの話聞いとかなきゃ」


「…」


「何この子?って感じだよね。

 無理もないけど、私の場合は占いというより

 霊との交信なの。メッセージを伝えるの。

 だから当たるとかではなくて

 あなたの守護霊様が伝えてくれっていうから

 だから呼び止めたのよ」


彼女は占いは好きだけどオカルトや霊は

ダメだった。怖いのだ。

無視してやりすごそうとした。


「なんで彼と出会ったの?って

 悩んでるまま付き合わないほうがいいよ」


「え?」


一歩踏み出そうとした足が止まる。


「聞いたら納得するよ、彼との事」


その一言を聞いた彼女は吸い込まれるように

赤いビロードのカーテンの中に入る。

ワイシャツの女の子はその傍らに「鑑定中」の札を立てた。


「さ、どうぞ、イスに。

 鑑定料は30分5000円だけど

 私気分でおまけしちゃうかも?いいですか?」


小さなテーブルとイス。

その上にはカードも水晶玉もない。


どうやって占うんだろう?

半信半疑でお金を払う。


「さ、お姉さん、生年月日聞かせて、彼氏さんのもね。

 あなたの旦那さんは要らないわ。関係ないから」


びっくりした。怖い。

指輪で結婚は分かるだろうけど

不倫をしているって顔に書いてあるのかしら?


「大丈夫よ、守護霊様からのメッセージを伝えるだけ。

 だから、怖くないよ、安心して」


この子?ズバズバ言いすぎる。怖いがお金も払った。

逃げられない。覚悟を決めて話を聞く。


「手つないでいいよね?女同士だし」


女の子は急に手を取った。

かわいい手だ、でも恐ろしく冷たい。

怖い、何を話されるんだろう?


女の子は目を閉じて時々頷く。

誰かの話に相槌を打っているようだった。


沈黙が怖い。それに長い、長すぎる。

女の子の手に自分の温もりが伝わるころ

静かに手を離した。途端、ぼろぼろと泣き出した。


え?なに?なにか?よくない事かしら?


「ヤバい、ごめんなさい。マジ泣くわ」


「え… なんなんですか?」


「あ~ごめんごめん、悪い話じゃなくってさ

 あまりの感動で、変な話じゃないの」


「あなたの守護霊様から聞いたんだけど

 2人は前世で一緒になれなかったの。

 で、前世からの宿命で巡り会ったんだって」


そうなんだ… 

私ととしさん…


「でね、前世の2人の物語なんだけど

 ちょっと長くなるけど聞いてね」


女の子は小さめのフェイスタオルで

涙を拭きながら話をし始めた。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る