異世界に召喚されたら主人に絶対服従の悪魔でした✩

宮塚恵一

Season 1

第1話 ここは異世界!?

1.悪魔召喚の儀。

 目が覚めると、眩しい光が僕の目に飛び込んだ。


 思わず、うッとうめき声をあげる。

 眩しさに顔をしかめ、手で目を覆った。


「成功したか、さすがおれ」


 誰かの声が聞こえる。

 僕は仰向けになっていた上半身を起こして、あたりを見渡す。


 そこには見たこともないような機械がたくさん並んでいる。部屋には本棚のようなものが沢山ならんでいるが、その直方体の物質はいたるところが不規則に点滅していて、大型コンピュータのサーバーにも見える。


 ──どこかの研究室か?


 ぼんやりとした視界の焦点が次第にあってくる。

 それでようやく僕をじっと見つめて立っている人物が目の前にいるのに気づいた。


「まずは名を名乗らねばか。おれの名前はスフィリーク・キュビュイズ。長いのでスフィと呼んでくれると助かる。お前の名前は? 異界の悪魔よ」


 ──異界の悪魔?

 何のことだ。僕は名乗りをあげた目の前の人物を改めて見た。


「うわあ」


 思わず感嘆の声をあげてしまった。

 僕の前に立っていた人物、白衣を着ていかにも研究者然としている女性。

 スフィリークとか名乗っていたその人は、僕の目から見て、とても美人だった。

 しかし、すごい名前だ。どこの国の人だろう。


 すらりと長く伸びた脚に。きりりとした目で僕を見つめる凛々しい顔。肩からもすらりと繊細で細い腕が伸びていて、白い肌がまぶしい。

 その手で、何か板状のものを持っている。タブレット端末のようにも見えるけれど、僕からではよく見えない。


「どうした? おれの顔に何かついているか?」

「いや、綺麗な人だなと……」


 思わず口にしてしまった言葉に、僕は顔が赤くなるのを感じた。


 何を口走っているんだ。寝起きで頭がどうかしちゃっているようだ。


「ほう、誘惑の言葉を投げかけるか。さすがだな。だが、おれにその手は通じんぞ、悪魔よ」


 ──だから悪魔ってなんだよ。


「僕の名前は、柿崎かきざき結兎ゆいと


 事態が全く飲み込めないが、僕も名乗らないと失礼だと思い、自分の名を言う。


「カキザッキュート? 聞いたことのない響きだ」


 何か違う形で伝わってしまっていた。

 それを言うなら、あなたのスフィなんとかって名前も、僕にとっては聞いたことがない響きなんだけど。


「まあ、悪魔の名なんて大体そんなもんだったか」

「あの、ちょっと待って」


 さっきから人のことを悪魔だのなんだの、一体――。

 僕はよいしょ、と手を床について立ち上がる。


 ──ん? おお?


 僕が立ち上がると、ぐんぐんと目線が高くなる

 スフィさんとか言う人のプロポーションを見るに、彼女の身長はかなり高いと思っていたのに、そんな彼女の頭を僕はまるで5歳の子供を相手にするみたいに見下ろしていた。


 ──え、ちょっと。


 僕は混乱し、改めてあたりをきょろきょろと見渡した。

 僕の真横に、ガラス張りの窓があった。


 ──そこにいる自分の姿に思わずおびえた。


 ガラスに映るのは、普段朝起きて洗面台の鏡で見るような姿ではない。


 ──ヤギのような顔に、こめかみのあたりから曲がりくねって伸びる二本の角。

 ──服を着ていないその身体は、黒い毛むくじゃら。

 

 僕は震える手を顔の近くまで掲げた。

 5本指ではあるが、その腕もガラス窓に映った身体と同じく、まるでゴリラみたいな体だ。


「なんだよ、これええええ!!??」


 確かにこの姿は。

 ──悪魔と呼ばれて差し支えない。

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