第2話 『豪傑の汐』VS『狂爛の優華』
「おい。これはお前の仕業だろ?優華」
それは、何もない放課後の、とある空き教室での出来事。
そう言って突然入ってきた男は、教卓の前に立って、色々と黒板に書き込んでいた女子を問い詰める。
「突然、何?汐君?」
そう言ってあっけらかんと答えるのは、空き教室でとある講座の教鞭を取っていた女子。
「うちの学校の生徒が、ストーカー被害に遭ってるんだ」
「なんだ、それなら、いつもの事じゃない」
「その手口が、暴力に訴えかけるものだったとしたら?」
「だから、犯人は私?……だから何?」
少女は、きょとんとした表情をしていたが、話を最後まで聞き終わると、その口角をゆっくりと上げ、妖絶な笑みを浮かべる。
「別にいいじゃない。それだけ愛が深いんだから!」
「こちらとしては、一年生に手を出してもらっては困る、と言いたいのだが、まぁ、納得はしないだろうな」
「ええ、勿論。それともあなたが、私の物になってくれるっていうの?」
「あぁ。それはごめんだな」
そこまで男性が言うと、少女は無音で男性に近づき、男性の腕に包丁をつきたてる。
「ふんっ!」
しかし、男性の筋肉には、包丁で傷をつける事すらかなわない。
「まぁ、相変わらずすごい筋肉。これじゃあ、腕を切り落とせないじゃない」
「そういう訳にはいかんよ。これからも頼りにさせてもらう腕だ」
男性が腕にぐっと力を入れる。
「まぁ、そんな腕だから、抱きしめられた時の感覚はきっとたまらないわ」
「残念ながら、それはかなわないな」
「そうね、今のままじゃ無理だわ」
お互いに、「フフッ」「ハハハ」と笑いを崩さない。
空き教室にいた、少女たちは、その二人の笑みにゾッとした。
「まぁ、忠告はしたからな」
「えぇ。今度はバレないように教育するわ」
「……」
汐は無言で優華を睨み付ける。
「絶対にうちの後輩には手を出させん」
そう言って、汐は教室から去っていく。
「ねぇ、あれ、できる?」
優華は汐が去っていった教室で独り言のようにつぶやく。
——そう、戦いはもう始まっていたのだ。
翌日、汐が行方不明になった。
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