聖ヤンデレ女学院(今年から共学)VSヤンデレ殺し学園(通称ヤン学)

青猫

第1話 仁義なき戦い

この街には、二つの有名な高校がある。

一つは聖ヤンデレ女学院。代々何故か狂愛を求める女性が集まり、他人を監禁する、他人に執着する、そう言ったことが当たり前に行われてしまう学校である。ちなみに、今年から共学になった。


そしてもう一つはヤンデレ殺し学園。起源はアメリカのとある州に実在したと言われるヤンデレハーレムを作った男性とされており、ここに通う学生は何故か対ヤンデレの素養が高い。聖ヤンデレ女学院の隣に位置している。


この二つの学校は、互いに互いをライバル視しながら、女学院は理想の相手を求めて、学園はそれを回避するために、学生は日々努力を重ねているのだ。


そして、努力を重ね、選ばれたものがなる、四天王と呼ばれる存在。

彼ら彼女らは、各個人が二つ名を持ち、自身の学校の生徒を守るために存在している。

そんな四天王には、上がいるとされているが、それは定かではない。


そして、そんな二つの学校が新年度を迎えて2月が経過した現在。


ヤンデレ殺し学園に通う一年生、双葉竜斗はまさに今現在、ヤンデレ被害に悩まされていた。


「どうしたらいいんだよ……」


この学園に来たからには、彼にもヤンデレ殺しの才能があるということなのだろう。しかし一年生の彼には百戦錬磨とされる上級生のヤンデレたちの牙を避けることは難しかった。

竜斗は、後ろからの気配を感じつつも、どうすることもできず、ただ向こうの興味が去ってくれることを願いながら、足音を早くしながら歩いていく。


(早く学校に逃げ込もう……)


学校には流石に入ってこれないだろう。

そう期待を込めつつ歩く彼ははっと気づく。

いつの間にか気配は消えてしまっていることに。

彼は振り返り、安堵のため息をつく。


(あ、あれ?もしかして興味を失った?よ、よかった……)


そう思って前を向く。

そこには、少女が立っていた。

を着た少女が。

竜斗は一歩引く。


「せ、聖、ヤンデレ女学院……!」

「ねぇ、なんで逃げるの?」

「え……?」

「ねぇ、なんでなんでなんでなんで!!!!」


少女は自身のバッグから包丁を取り出すと、竜斗に向かって襲い掛かる。


(や、やばい!?)


しかし竜斗には咄嗟に動くための経験が足りなかった。

少女から逃げようとして、足がもつれて転んでしまう。


(あ……)


竜斗は自身の悲惨な運命に目を瞑った。



しかし、しばらくするが、痛みを感じることは無い。

恐る恐る目を開ける竜斗。

そこには、包丁を竜斗に突き立てようとする少女の腕をひねり上げる先輩の姿が。


「おいおい、包丁はいけないぞ」

「は、離して!じゃないと殺せない!」

「それは見逃せないなぁ。俺の学校の後輩だぞ?」


そう言って、先輩は少女の手を離すと、竜斗の手を引っ張る。

竜斗が先輩の顔を見ると、先輩はニカッと笑う。


「さ、さっさと逃げようか」



そして少女から逃げて校舎に入ると、先輩は、竜斗の教室の前で「じゃあ、気をつけてな!もしものときは、俺に声を掛けてくれや!」と手を振って去っていく。

竜斗は「ありがとうございます!」と名も知らぬ先輩にお礼を伝えた後に、教室に入ると、皆から囲まれる。


「お、おい!あの人と知り合いなのか?」


突然囲まれた竜斗は驚きながらも「え、いや、助けてもらっただけ」と答える。


「あ、あの人、そんなに有名なの?」


竜斗が不思議そうに聞くと、クラスの友人は驚いた様子で竜斗を見る。


「し、知らないのか!?あの人は、あの四天王、『豪傑の汐』さんだぞ!?」


その肩書を聞いて、ひっくり返るほどに驚く竜斗。


「ええっ~!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る