世界を刻む時計塔
冲田
世界を刻む時計塔
世界はいつだってかみ合わない。だから長い間、かみ合っていないことにすら気付いていませんでした。
目の前にある歯車が、いつでも正確に寸分
街のどこからでも見える、その古く高い
世界の刻を創る神聖な地としてだんだんと人が集まり、栄え、今ではなかなかの都会になっています。
足早に歩く街の人々がふと顔をあげれば、いつでも正確に時を刻む文字
これは精霊の魔法によるものと考えられていました。
部屋の中の掃除が終わると、少年は文字盤の窓からひょいと外に出ました。文字のちょっとした出っ張りを足がかりに、
外の掃除も終わって、よし、と少年が部屋の中に
落ちればひとたまりもない高い高い塔です。背筋にぞわりと冷たいものが走り、なにかにすがろうと手を
しかし、不思議なことにそれ以上落ちることはありませんでした。そして、自分の体もまるで動かせないのです。
窓からひょこっと
にっこりと
「あの、ありがとう……。君は?」
「私は、歯車を動かす刻の精霊です」
「いつもここにいたの?」
「ええ」
「ぼくは毎日のようにここに来ていたけど……いつもどこにいたの?」
「あなたがたの刻の流れの中に、私はいないんです。今はあなたを助けるためにちょっとだけ刻を止めているから。でも、もう
「また、会える?」
「本当は、時間を止めるのは、いけないことなの。だから、もう永遠にお別れ」
がちん、と音が鳴り、少女の姿は見えなくなりました。
この夢だったかのような出来事に、少年はとらわれました。
少年はいつもの
まずは、
それならば、と、少年は文字盤の窓を開けました。強い風が吹き付けましたが、それにまけじと
地面を背に、窓枠から手を、文字の出っ張りから足を
おしまい
世界を刻む時計塔 冲田 @okida
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます