交差する琴線と花舞う少女達

るなち

サクラサク

プロローグ

交差する世界

 桜の咲く時期、憂節うきふしみくりと三月みつきひなの二人は近所の公園へ花見へと来ていた。桜の花は満開で、時折強い風が吹くと花弁かべんが舞い二人を包み込んだ。まるで春という季節に祝福されているかのように。

 白いシャツにスカイブルーのロングスカートを身に着け長い黒髪を春風に任せたなびかせる少女、みくりははぐれないようにひなの手を握る。ひなはみくりとは対照的で黒いパーカーにジーンズを、そして桃色のボブヘアーには控えめな桜のピン留めをしている。

 色々な屋台を巡っていると同級生と思しき人間を見かける。みくりの記憶違いでなければ双子の姉妹なはずだ。二人のことに先に気づいたのは藤色の髪をしたラフなパーカーとジーンズの少女であった。「憂節さんと三月さんじゃん。二人も来てたんだね」そう言いながら手を振りながら歩いてくる少女の名前は桔梗ききょうナズナだったと記憶している。その横で桜色のセミロングヘアに白いシャツの上からオーバーオールを身に着けた妹は桔梗モモだ。

「暇だったから」とみくりはしどろもどろに答える。彼女は未だにひな以外の人間に(克服しようとする気はあるのだが)苦手意識を持っており、このような答えしかできず結局今回もひなが「ナズナちゃん、モモちゃんも来てたんだね!」と明るく答える事に身を委ねるしかないのだ。

 ナズナは「今日は兄が仕事で来れなくなっちゃったから二人で来たんだけど」とぶっきらぼうに髪くるくると人差し指で遊びながら言うとモモは「そうそう、寂しがってたんだよねお姉ちゃん」と笑いながらナズナを突く。なんだか私達を俯瞰ふかんして見るとこんな形なのだろうかとみくりは思った。


 モモは「どうせなら一緒に回らない?」とみくりとひなに提案をする。それはモモ自身の直感から来る提案であった。みくりとひなは顔を見合わせるも、ここで拒否する明確な理由もなければ特段この姉妹と仲が悪いと言う事もなかったので二人で頷くのを見ると「それじゃ、よろしく」とナズナはくるっと半分まわり進行方向を向いた。

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