雨に打たれる少女
白井
時は戻る
降り止まぬ雨をどうにか止めようとしているかのように、両手を天に突き上げ、雨にうたれている少女がいた。
僕はそれを窓から時々覗きながらも、鉛筆を削ることに集中力を傾けていた。
僕がすべての鉛筆を削り終わっても、その少女はピクリとも動かなかった。
一瞬、目の前が真っ暗になる。停電だろうか。と思った瞬間にはもう目の前は明るくなっていた。
彼女をまた見る。
もしかして、死んでいるのでは? と思うほど彼女は先ほどからほとんど何も変わっていない。一つだけ変わっているのは彼女が着ている服だ。着ているのは僕が通っている中学校のジャージと同じジャージだから、もしかしたら知り合いかもしれないと先ほどから思っていた。しかし、驚くべきところはそこではない。そのジャージが先ほど見たときよりも乾いているのだ。雨は依然降り続けているというのに。
全ての時間が逆行しているわけでもなさそうだ。雨粒は確かに天から地へと向かって落ちていっている。ならば、彼女だけが。彼女の周りだけ時間が逆行しているのかもしれない。
僕はまた鉛筆に視線を落とした。すべての鉛筆が買ったばかりのように元に戻っている。削ったはずなのに。
そうか、僕がタイムスリップしたのだ。
そう気付くのに、僕は少しの時間を要した。
雨に打たれる少女 白井 @takuworld10
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