第37話 遂に解読! 宝の在処!

「その『探偵の千里眼プライベート・アイ』ってので、解読できないのか?」

「この眼はド〇えもんみたいに何でもできるわけじゃない。推理系は純粋に探偵としての力のみで解くしかないの~!」

「そりゃそうか……」


 そんな都合のいい能力だったなら、今までの事件なんて朝飯前で解けていたはずだ。


「ちなみにだけど、俺と同じように黒薔薇と白薔薇は無能力者なのか?」

「「はい」」

「……なるほど」


 身体を鍛えなくては。

 と、紫水は思った。

 

 案の定。

 開拓が進んでいないであろうと目を付けた、上陸側から反対の山にはそれなりにアルファベットカードが落ちていた。

 そして。

 二桁目のアルファベットカードを拾った際、レンはついに答えを出した。


「これまでに拾ったカードはH、F、O、P、U。K、S、N、B……そしてPb。何か法則というか、気づかないか? 紫水」

「9枚目までは全部アルファベット1文字だったのに……今拾ったのはPb。急にアルファベットの大文字と小文字のセットになったな……」


 他の2人にも目をやるが、まだレンの言ってほしい答えは分からずにいた。


「ほら、高校生なんかは授業中に見たりするんじゃない? バラバラだと気づきにくいけどさ、『表』になってることが多いかな」


 ……。


「――――化学の元素……だ!」


 レンは自分の運の悪さを呪った。

 元素記号の中でアルファベット1文字のモノの方が少ないはずなのに、と。

 しかし。

 これでこの島中に散らばっていたカードにかかれた正体は『元素記号』ということがやっと判明したということ。

 一歩お宝に近づいたことがわかる。


「Hは水素、Fはフッ素、Oは酸素、Pはリン、Uはウラン、Kはカリウム、Sは硫黄、Nは窒素、Bはホウ素、Pbは鉛です」


 白薔薇がそれぞれの元素記号(アルファベット)を馴染みのある元素名称に直してくれた。

 レンは再度カードの裏の『※全ての星を集めなくても、お宝の場所は分かります』に視線を向けていた。


「つまり、元素記号を覚えていれば、もうこの島の地図にある星マークには行かなくてもいいってことだね!」

「「流石レン様です」」


 黒薔薇と白薔薇が目を閉じてお辞儀した。


「いや、待て待て! いくらなんでも全部暗記してるやつがこの4人の中にいるのか? 俺は『水平 リーベ ぼくの船……』っていう暗記のやつでギリギリカルシウム(Ca)までが精一杯なんだぞ……?」

「……?」

「「ジー……」」


 紫水は3人の反応を見るや否や「まじかよ……」と軽く絶望した。

 そう。

 3人は当然の如く認定されている範囲での全ての元素を暗記していたのだ。


「ランタノイド系とアクチノイド系もか……?」

「Uはアクチノイド系です。紫水様」

「まあ、流石にそれぞれの沸点とか融点は覚えてないけどね~」

「当然ですね」


 非常にドン引きである。


「……それで、この元素記号が宝の在処とどう関係があるんだ??」

「残りのヒントは『3つの言葉』しかないね」


 紫水は封筒から3つのカードを取り出した。

 先ほどの移動でしわくちゃになってしまったが、インクは滲んだりしていなかったので、なんとか読めることができた。


 ――――『浜イバラ化す』『瀬 鯛 鮭』『ねえ足寄せな』。



「なるほど! ――――解けた」


 レンの言葉に3人は近くに集まり、答えを聞くことにした。


「『周期表』を大前提として考えるんだ。まず、『浜イバラ化す』。これはおそらくそれぞれの元素記号の頭文字を取って組み合わせた言葉になってるんだよ。つまり、『浜イバラ化す』=『ハ マ イ バ ラ カ ス』」


 レンはメモ帳に分かりやすいように周期表を書き、説明を続けた。


・『ハ マ イ バ ラ カ ス』


・ハ=ハフニウム(Hf)のハ

・マ=マグネシウム(Mg)のマ

・イ=イットニウム(Y)のイ

・バ=バリウム(Ba)のバ

・ラ=ラジウム(Ra)のラ

・カ=カルシウム(Ca)のカ

・ス=ストロンチウム(Sr)のス


「同じように残りの2つも変換できるよ」


「いや、それは成り立たないぞ?」


 紫水は疑問に思うことがあった。

 レンの説明には納得できるが、それは他の可能性を消しているようにも感じる。


「どういうこと?」

「例えばだけど、スだが……。ス=ストロンチウムってのはどういうことだ? スなら他にもあるぞ。水素だったり、水銀だったり。要は、頭文字だけじゃ1つの元素に絞り切れないってことだよ」


 レンはニコリと微笑み、ちょうど持っていたHのカードをひっくり返して見せた。


 ――――『※最後にカタカナを探せ』。


「なるほど……最初の砂浜で見たときは何のことか分からなかった」

「そ! つまり、周期表に頭文字に当たる元素記号に印を付けていった時、カタカナにならなければそれは違うってこと」


 先ほどレンがメモに記した『浜イバラ化す』が成る元素記号にバツ印を付けていくと、トというカタカナが浮かび上がってきた。


 紫水はレンたちと協力して、残りの『瀬 鯛 鮭』『ねえ足寄せな』も解読した。

 すると。

 トの他に、カタカナであろうリとイが周期表上に現れた。


「最後に浮かび上がった3文字『ト リ イ』……考えられるのは山頂にある神社……その『』しかない!!」


 

 4人はハイタッチを交わし、早速解読したお宝の在処へと足を進めた。

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