塵箱

われもこう

指先



 指先から冷えていくのをどうしたらいいか分からない

 炎に掌を翳しても

 両手を擦り合わせても一向に温まらなくて

 ただ自分の体が冷たさに侵食されてゆくのを見つめている


 大学の頃に一度参加した飲み会

 チャラいと評判の先輩の指先が墨で染まっていた

 夜遅くまで部活の書道を頑張っていたから

 どれだけおふざけに興じても

 隠し通せない真面目な性根が表れていた

 あの指先を思い出す



 絵の具を使うと指が染まる

 あまり綺麗ではない色に染まる

 石鹸で洗っても取れない

 しかしそれもまた心地よい


 だがこれは この現象はなんだろう

 指先から冷たく染まってゆく

 どう工夫しても温まらない

 心が静かに凍えてゆく

 いったいどうしたことだろう

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