八膳目:九月某日(土)お皿を埋める我が家のスタメン
黒い真四角の器に、緑と赤、黄色いコントラストを今日も映えさせる。
配置は概ね決まっていて、器から向かって左下には緑のみずみずしい野菜類、その右隣りに艷やかな赤色のトマト、左上にはソーセージやハム、魚など朝の主菜を置くことになっている。
そして、右上を埋める我が家の『アレコレ』。
あともう一品という、大事なポジション。
ここでいかにお腹を満たし、満足度を上げるかという重要な節約レシピ、かさ増しメニューが入る場所なのだ。
ここ近年の値上げラッシュ、特に食費の高騰は我が家の家計を圧迫し、財布は悲鳴を上げている。
そのため、朝の一品と言えどもその余波は大きく影響していた。
卵料理はもちろんのこと、魚の種類も鮭やホッケ、鯖を出す回数は激減し、ししゃもの登板回数がうなぎ登りだ。
我が家の寝ぼすけ坊主が大好きなソーセージもその余波を受け、ジュワッとした肉汁をためて焼いて出すよりも、細かく小口切りにしてかさ増し用の野菜と炒める方が多くなっている。
なので、我が家の朝食用ワンプレート、真四角黒皿に多く陣取っているのは、主菜よりも副菜、節約レシピやかさ増しメニューになっているのだった。
スターティングメンバーは、もやしの卵とじに人参しりしり、ごぼうの金平やちくわとピーマンの甘辛炒め物、玉ねぎと厚揚げ豆腐のめんつゆ炒めやマカロニとツナのサラダなどなど。
どれもサッと作れて、お財布にも優しい我が家のスタメンになっている。
そこへ来て、この夏終わりから初秋にかけ、初のスタメン入りしそうな新人がやってきた。
緑色の、ごつごつした手触りの『アレ』。
そう。ゴーヤである。
我が家ではゴーヤは不人気の野菜のため、まずスーパーで買ってくることはない。
なので普段の食卓には全くと言っていいほど上がらないのだが、今年は職場で家庭菜園をしている上司から何回も頂くことになり、自然と自宅でゴーヤを出す回数が増加した。
で、このゴーヤ。
今年は何と家族に大好評で、あっという間に消費してしまったのだ。
ゴーヤが入ったメニューは遠ざけようとしていたあの寝ぼすけ坊主すらも、まったく残さず食べてくれる。
以前は、ゴーヤチャンプルにしたり、カレーに入れたりとしていたが、今回はたまたま見つけたレシピを参考に、ゴマ油とポン酢、ツナにかつお節をたっぷり振りかけたシンプルなものを出してみた。
すると、これが思いの外大ヒット。ホームラン級の人気ぶりになったのだ。
あれだけ嫌がられていたゴーヤが、消える、消える。
特に連れ合いはこのメニューをいたく気に入ったようで、作るたびにたくさん平らげてくれていた。
よし。これなら、我が家の朝のワンプレートにスタメン入りしても問題なさそう。
まあ、夏限定にはなってしまうけど、それでもいつものメニューの種類が増えることに越したことはない。
…………と、思っていたのだけれど。
残念ながら、ゴーヤ選手。スタメン入りを果たすことなく今シーズンが終了してしまった。
何故か。
それは、『作った瞬間に消えていってしまい、朝まで残らない』からだ。
職場の上司から頂いたゴーヤは、次の日の朝に出せるように帰宅後すぐにキッチンへ直行し、苦味を取った後、必要な調味料や具材とともにタッパーへ保管していた。
朝の食べ頃には、しっとりと味が馴染むように。
しかし、朝冷蔵庫を除くと、昨日仕込んだゴーヤが消えているのだ。しかも、タッパーごと。
犯人は、連れ合い。
今年、あまりの猛暑に汗だくに帰ってくる連れ合いの体に、今回のゴーヤレシピは完全にマッチングしたようで。
あっという間に。
ぺろりと。
朝を待つまでもなく、すべてを平らげてしまったようだ。
あまりの気持ちの良い食べぶりにこちらとしては何も言えず、結果、ゴーヤは朝のワンプレートに一度も出てくることはなかった。
まあ、仕方ない。
来年は、スタメン入りできるよう、大量にゴーヤを仕入れておこう。
秋の涼しさまで、あともう少し。
「おはよう。ご飯ですよ」
明日も元気に、いってらっしゃい。
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