四膳目:五月某日(金)桜のように、あっという間に過ぎ去る四月

 今年の桜は早かった。ゆっくり花弁を眺める時間を取る暇もなく、あっという間に散っていってしまった。そして、気づいたらもう五月。GWすら、もうすでに終わりが目の前だ。


 そんなあっという間に過ぎ去ってしまった四月だったが、毎年この時期に楽しみにしているのは『たけのこ』だ。

 しかし、今年は不作期。毎年、豊作と不作を繰り返すので、今年は採れたてたけのこにありつけるのは少ないだろうと予想はしていたが、何と、食卓に上がったのは僅か一回だけ。

 去年はほぼ毎週のように知り合いから貰えていたのだが、今年は小ぶりのたけのこが一本だけだった。悲しい。


 そんな貴重なたけのこは、夜の時間に白米とともに炊飯器の中へセットする。シンプルに、具材はたけのこだけ。後は、だしと塩、酒と醤油のみで味付けしたら完了だ。

 毎年、この時期だけ楽しめる春の香り。朝起きると同時に家中にふわふわと広がるあの香りは、ワクワクした気持ちを引き立ててくれる。炊き込みご飯ならではの特権だ。


 明日も、そのふわりとした軽やかな香りで目を覚ますことだろう。GWはゆっくり寝ていたいところだが、あのこんがりとしたおこげの香りに鼻をくすぐられると、きっといつもの時間に起きてしまう。


 さて、明日のおかずは何にしようか。主役のたけのこご飯を引き立てるのは、和食のメニューが最適解か。塩さばを焼いて香ばしいパリバリの皮を楽しみながら、菜の花のお浸しを添え、赤いプチトマトで色合いを。後は、だし巻き卵も作ろう。優しいだしの味が染み渡った卵の感触とたけのこご飯の組み合わせは、絶品だ。



「――、おはよう。ご飯ですよ」



 明日も元気に、いってらっしゃい。

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