プーチンの父に、懇願の巻(十六話)
プーチンの父は独ソ戦の時、地元レニングラードの共産党内務人民委員部にいた。
破壊工作部隊に所属し、300日に渡る包囲戦を打ち破るべく勇猛果敢に戦った。
弾の破片を片足に抱えたまま傷痍軍人となり、鉄道技師として働き88才で没。
戦前、17才でマリア・イワ―ノヴナと結婚、プーチンら3人をもうける。
長男は生後直ぐに、次男は包囲戦で2才で病死、そして10年たってプーチンが出生。
頑固で勤勉、筋金入りの共産党員、だが、ドイツ兵個人を憎まなかったとのこと。
これは、母にも言える。
敬虔なロシア正教徒で、とても優しくて、物腰の柔らかい品の良い女性とのこと。
……「こんな兵隊たちに、一体どんな憎しみを抱けと言うんだね?」
……「あの人たちは普通の人間で、同じように戦争で死んでいったんだよ」
……「あの人たちを、どうしようと言うんだい?
……「あの人たちだって、私たちと同じように働いたんだよ」
……「ただ、戦線に追い立てられただけさ」
プーチンは、その言葉を今でも理解出来ないと語っている。
私は何故このような両親から、あのプーチンが生まれたのか、わからない。
こんな事があった。後年、グルジアの高齢女性が本当の親として取り上げられた。
経緯を書いた本は出版直後に発禁処分を受け、当局が大半を破棄、写真をすべて没収と。
おどろおどろなので、後は、物語で……
毛沢東 「初めまして、中国の毛沢東と言います」
「この前は、プーチンさんのお母様にお出まし頂いて、哀願した次第です」
「前置き抜きです、あなたの息子は、とんでもない事をやらかしましたぞ」
「男同士、率直にいきましょう、私は両方を救いたいのです」
「下界の兄弟同士の戦争、いかに思いまするか?」
プーチンパパ「はい、それはもう、私もマーシャも困惑仕切って、息子は何でまた、と」
「あの子を、こんな人間に育てた思いは、断固ありませんぞ」
「何がこうも狂わせたのか、いくら親でもわかりませんです」
「私の父も共産党員で、革命後のソ連に希望を持っていました」
「政府高官の料理人で、レーニンやスターリンの別荘で働いてました」
「それが縁で、私もスターリンの別荘に入ったこともあります」
「我が子含めて、3代の党員です。党に忠誠を誓って生きて来ました」
「あの息子は10代の時からKGBに憧れていました、国を守ろうと」
「今の戦も、その一心で、ただやみくもに、突き進んでいるのかも」
「だが、いまや正直にわかりません。ウクライナはスラブの母なのに……」
毛沢東 「これも率直に尋ねます。あのプーチンは本当にあなた方の子ですか?」
プーチンパパ「毛沢東さん、まず先にレニングラード包囲戦の話をさせてください」
「ドイツ軍は町全部を900日に渡って封鎖し、皆殺しにしようとしたのですぞ」
「これは、まさに兵糧攻め、消耗戦です。食うのがないのです、100万が餓死」
「牛や豚はあっという間に、それで今度は農耕馬が食われました」
「次は犬猫ですわ、人が敵だとわかると狂ったように吠え、鳴きますぞ」
「やがて街中には、動物の鳴き声がしなくなりました」
「それから先はですな、子供達が……ああ、振り返りたくはないですわ」
「人は一線を越えると、狼の目になるのですぞ。まさに、食うか食われるかです」
「私の妻のマーシャは死にかけて、担架で運ばれかけました」
「寸での所で、私が家に帰還が許されて、そこでばったりです」
「松葉杖で向かって行き、運よく救い出しました」
「あと少し遅ければ、火葬場行きでしたわ。あの時は……」
毛沢東 「大変な経緯があるのですな、まったくもって戦争は酷い」
「これは、わかってほしいのですが、あなたに鉾先を向けたくもなるのです」
プーチンパパ「毛沢東さん、戦後はどうなってたと思いますか、そう、孤児の山ですよ」
「親は子を亡くし、子は親を亡くしで、お互いが求めあったのです」
「言わずもがなの事が、ほうぼうで起きました、それが人です」
「私は傷痍軍人、妻は衰弱仕切ってた。子は42年にジフテリアで死にました」
「大祖国戦争勝利から7年後、我々が41の時……」
「妻が12年振りに……。それがプーチン……」
毛沢東 「……産まれたのですね、はい、良くわかりましたです」
「一粒種として育て上げたのですね。途中までは、実に良かった、途中までは」
「あのですな、お願いの儀が、お母様にも頼んだんですが」
「親として、どうか、そう祟ってまでも、ご子息を何とかしてくだされ」
「両国民には、これから先、計り知れない重石が加わりまする」
「どうか兄弟同士、仲良く安寧でいてくだされ。諭してくだされ」
プーチンパパ「私も妻も、ドイツ兵そのものを憎んだ事はない」
「たまたま、同じ時代に、同じ所で、敵として向かい合ったのですな」
「今のロシアとウクライナもそうです、個人を恨んではなりません」
「時の指導者が悪いのですな、それが、よりによって我が息子とは、とほほ……」
「わかりましたです。我が息子に親殺しの夢を毎日見せます」
「スラブ民族にとって、ウクライナ、そうキエフ・ルーシーが母だと」
「お前は母を殺す気かってね、毎夜唸らせてやるわい」
毛沢東 「ご子息が尋常になるまで、よろしくお願い申し上げまする」
「もはや下界の誰もが止められませぬ、ご両親頼みです」
「どうか切に切に、願いまする……」
下界と天界は、夢で繋がってはいないか。
毛沢東は思った。それでも、まだ止められないとすると、今度は誰に頼もうか。
うん、イワン雷帝、ピョートル大帝、エカテリーナ女帝、ひいてはチンギス・ハーンか。
恩返しの、下界への「仲裁」の様な介入は続く……
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