周恩来と、孫文の話の巻(二話)

孫文、近代中国の国父ここにあり。    

この中国革命の先覚者がいなければ、毛沢東は在野のまま教師で終わったかもである。

毛沢東18才の時、辛亥革命勃発、彼は居てもたっても居られなくなった。

疾風怒濤の大地が揺れるなか、地元、湖南の革命志願軍に入隊した。

清王朝300年、連なること専制政治2000年、それを終わらせようと。

彼の心中や、幾ばくのものか……



毛沢東「周恩来よ、真面目な話をするぞ」     

   「わしの原点は、辛亥革命よ。地元、湖南の革命軍は入ってからだ」 

   「それからと言うもの、渦巻く大河の流れに乗って来た」

   「孫文こそが、中華5000年の偉人じゃ」

   「辛亥革命で清王朝を倒し、眠れる獅子を本当に起こしてくれたわい」

   「そうでなかったら、共産党、国民党、そんなん何もない」

   「欧米列強、日本なんかにまで侵食され、ばらばらよのう」

   「孫文がいて本当に良かった、彼こそが光だ」

周恩来「相当な思い入れが、おありですな。中国は眠り過ぎたんでしょう」

   「文明におごり、大陸の覇者を気取り、外国に食われててもですな」

毛沢東「この孫文がいなかったら、今のわしはいなかった」

   「もしかしたら、蒋介石もいないのではないかと思うでよ」

   「まったく違った世を、迎えていたんではとな」

周恩来「それだったら、私もどっかで、何してたんかい」

   「国土はますます食われっぱなし、小日本の侵食が止まりませんな」

毛沢東「清朝を滅ぼして本当に良かった、孫文様様じゃないかい」

   「ただ、良くも悪くも政治家のきらいがあったのう」

   「仕方なかったとはいえ、袁世凱に譲ったのはまずかった」

   「清王朝の残滓なんかに目をくれずに、自身が主席を続けば良かったのにのう」

周恩来「まだまだ、時ここに至らずですわ。この国は革命を何回も繰り返さんことには」

   「悠久の歴史に広大な国土、数億の民、それも小作や貧民の群れ」

   「毛大兄は、みんなそれらをまとめたではないですか」

   「新しい国を作ったんですぞ。孫文を越えてますぞ」

毛沢東「いやいや、彼の前ではただの教師じゃよ。孫文あっての、このわしじゃて」

   「あの方は、享年58やったなあ、早すぎるわいな、惜しいことよのう」

   「後、もう20年も生きておれば、どうであったかと、思うよ」

周恩来「毛大兄、それはそうでも、今の方が……」

毛沢東「ああ、そう思いたい、そう思おう……」



歴史は、摩訶不思議なもの。

ほんのちょっとの事で、歯車が変わり、また歯車そのものに食われたりもする。

昔々に誰かがいたから自分がいて、そうでなかったら、いない。

人の生は紙一重なり。

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