第29話

久しぶりに学校についた。はー、遠いな。私の様子を、遠く離れたところから伊織くんが見ているはず。


「カエ〜!大丈夫?」


「りこ、久しぶり。いろいろありがとう」


「もー心配したよぉ」


「カエさん、無理はしないほうがいいよ」

「顔色まだ悪そう」


クラスメイトに囲まれてしまった。面倒なことは嫌だな。


「逢坂さん」


急にみんな私から目を逸らす。なぜかというと…登校してきた逢坂さんを、伊織くんがいきなり呼び止めたから。


え、ちょっと今誘ったらダメだよ!


「な、なに?」


逢坂さんはびっくりしてる。


「カエさんが来てる」


「あら、カエさん!もう元気なの?」


「あ…」


まずい。会話してしまって…


「ところで逢坂さん、宿題見せてもらえる?」


なぜか、積極的に伊織くんは逢坂さんに話しかけ始めた。何を考えてるのやら。


「え?私が?まだ終わってないよ?誰かやってるー?」


「ピーチちゃん俺のを!」

「私のがあるよ」


なにやら騒がしくなってきた。


「じゃありこ、席に戻るね」


「うん」


ふぅ、ひやひやさせないでほしい。今は宿題を借りて(逢坂さんのじゃない)を丸写ししてる伊織くん。それにしても未だに席替えしないのはなぜ?


ちらりと伊織くんがこちらを見た。

うん?なんかにやにやした気配を感じた。顔には出ないけど。

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