謎の生物R.B.ブッコローに関する調査報告書
Blue Jacket
第1の文書
私のジャーナリスト人生すべてを捧げて真実を解き明かすため、この文書を記す。
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まずはこの文書を作成するに至った経緯から説明したい。
有隣堂しか知らない世界というYouTubeチャンネルをご存じだろうか。
私は1年ほど前にこのチャンネルを知った。
そのことについて調べることになったきっかけは息子との他愛もない会話に過ぎなかった。
私の息子、健太郎が当チャンネルの動画を見ていた時だ。
彼は私にこう尋ねてきた。
「ブッコローってなんでブッコローていう名前なの?」
注:ブッコローとは当チャンネルの動画に登場する謎の生物である。その生物は動画内にて自らを”R.B.ブッコロー”と名乗っている。
そう。彼が興味を持った事柄はその生物の名前である。
人間の興味というのはそう簡単に収まるものではない。特に彼は私の子だ。ジャーナリストの精神が既に芽生えているのだろう。
私は愛する息子のため、この名前の由来をインターネットで検索した。
すると、驚くことに一件もヒットしなかったのだ。
そして、のちにこの行為が禁断であるということを知った。
有隣堂動画制作チーム(以下便宜上組織と表記する)の検閲に抵触しないようR.B.ブッコローを名乗る謎の生物を梟と呼称した。(以下同様に梟と表記する)
当チャンネルの名前は”有隣堂しか知らない世界”となっている。
―有隣堂しか知らない世界―
言い換えれば株式会社有隣堂が独占的に知りうる情報があるということ。
ある起業家の言葉を借りるなら、現代はインターネットによって情報がフラット化した社会だそうだ。スマホさえあれば、どこでも、どんな時でもどんな情報でも手に入るということ。
つまり、今時価値のある情報など滅多にない。
昔の職人たちはギルドによって門外不出の価値ある情報を守っていた。
だから、どの業界も弟子入りが当たり前。長い下積みを乗り越え少しずつ技術を盗み、やっとの思いで独立する。その中で、不向きな者や秩序を乱す者、いつか師匠が教えてくれるなどといった愚鈍考えの者は排除されていく。
しかし、確かに今でも、有隣堂、中でも組織の人間しか知りえない情報があるようだ。
だとしたらそれは間違いなく梟の名前の由来であろう。
だが私は踏み入れてしまったのかもしれない。有隣堂しか知らない世界。いや、知ってはいけない世界に。
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