はじまりの記憶

森エルダット

第1話

 目を開けると、ばあちゃんがいた。ばあちゃんと私は居間のテレビ台の横にいて、そこに低く積み上げられていた雑誌や箱を倒してしまって、多分そのままにしていたから、私は怒られていた。そこから記憶がはじまっているから、私が何をしたのか覚えていないし、それで怒られるのは理不尽だなと思いながら、ただただほつれた畳を見ていた。お説教が終わると、家の構造を知りたくて、奥の方に入ると台所があって、母親が何かを作っていた。記憶がないはずなのに母親だとわかるのが、というか母親って概念を知っている自分が不思議だった。ぼくの名前なに、って聞いた。私の名前が返されて、ぼくは〇〇〇、〇〇○って、心の中で自分の名前を反芻した。台所の奥に入ると洗面台を見つけて、自分の顔を見た。これが自分の顔かあ、悪くはない、いや悪いけど、まあそこまで悲しまなくてもいいかって思った。

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はじまりの記憶 森エルダット @short_tongue

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