第178話 アリンコ
「ぎゃー!」
ママのさけびごえがきこえた。
あたしは、こえがしたほうへ、いそいだ。
「どした! ママ!」
「あ、アリンコ!」
アリンコ?
どこどこ?
あたしはじーっと、ママがゆびさすほうをみた。
だけど、アリンコなんていない。
「ママ、いない」
「さ、さっきまでいたんだって!」
「ママ、アリンコ、こわいの?」
「え、リン、アリンコ、こわくないの?」
……うーん。
べつに、こわくはないかな?
おうちのなかにいたら、ちょっといやなきもちにはなるけど。
「アリンコってさ、ちょっとおしたくらいじゃ、たおせないじゃない?」
「ん?」
「アリンコってさ、にんげんよりも、つよいよ、ぜったい!」
ママが、たぶんむしをたおすためにつかうやつをもって、ぷるぷるふるえた。
「ママ、アリンコたおすの?」
「そりゃあ、いえのそとではごじゆうに、ってかんじだけど、いえのなかじゃ、ようしゃしないわよ」
「ふーん。ようちえんのせんせい、むし、たおしたりしない」
「へ?」
「にがしてあげる」
「はぁ」
「ママ、いじわる」
ママが、なんだかこまったようなかおをした。
そのときだ!
ゆかのうえを、ちいちゃいてんが、ちょろちょろちょろ……!
「いた! アリンコ!」
「ていやー!」
ママがどーん、ってたたいたけど、アリンコはちょろちょろにげていく。
つ、つよい!
それに、なんだかちょっと……もぐらたたきみたいで、おもしろそう!
「いた! アリンコ!」
「ていやー!」
「いた!」
「とう!」
ママは、へたくそ。
みていられないから、あたしがおててでドーンってした。
「ママ、たおした!」
あたしは、つぶれたアリンコがついたてを、ママにみせた。
「ひぃ!」
ぷう!
あたしのてを、こわいものみたいにみないでよね! ママ!
「っていうか、リン、いじわる!」
「な!」
「リンだって、アリンコたおした!」
……あ。
ごめんよ、アリンコ。
しょぼーん、ってしてたら、ママがあたしのことをよしよししてくれた。
「ねぇ、リン。これから、アリンコがおうちにまよいこまないように、いいにおいがするおいしいものがおちてないか、おうちのなかをおそうじしてまわらない?」
「え?」
「リンがたべたおかしのかけら、きっとねらわれてるとおもうんだ」
「うん」
……ん?
ぷう!
おとしたの、あたしだけじゃ、ないもんね!
でも、アリンコのためだ。しょうがない。
あたしはぷうぷうしながら、ママといっしょに、おそうじをはじめた。
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