第2話

 客が途切れたので、俺はキッチンカーの窓枠から顔を出すとレベッカを呼び、此方に来るように促していた。


 そろそろ商品の販売を終了するから、もしも新たに列に並ぶ人が居たら断ってくれないか。


「わかりました。わくらんまるさん」


 レベッカ、俺の事は和久か藍丸で呼んで欲しいのだが駄目か?


「えっ、わくらんまるさんって苗字があるのですか?もしかして貴族様ですか?」


 いや違うが……


「だって……こんな魔道具を持っているし、服装も高価そうだし、私はてっきり貴族様だとばかり思っておりました」


 あっ、これはあれか……ラノベなどでお馴染みの苗字=貴族のパターンなんだろうな、それならお馴染みのパターンで返すのが良いのだろう。


 いや、レベッカ俺の住んでいた国では、平民でも苗字を持つことを許されているんだ。だから俺は貴族ではなく平民だぞ。


「そうなのですか?平民で苗字があるとなると、豪商の出身ですか?」


 いや、商家でも無いが……そうだな簡単に説明するとだな……。


 あっ、こんな時の説明ってどうするんだったかな?


 俺は成人する前からサラリーマンをしていてだな……サラリーマンって言うのはだな……企業って言っても解らないだろうから、商家の奉公人をしていたんだよ。そこを独立して自分で商売をはじめたのが、最近の事なのだが……俺の説明で解るか?


「商家から独立したのですか?すごいです」


 レベッカは目をキラキラさせて俺を見詰めだしていたが、お客さんの来店で俺は接客に戻ってしまったが、レベッカが俺を見詰める目は肉食系女子のそれに近いものを感じていた。





*

 よし、今日はこれで店じまいだぞ。お疲れ様レベッカ。


「はい、らんまるさん」


 俺は店で使うテーブルの椅子に腰かけると、レベッカに店で出していた商品を手渡した。爆弾おにぎりの具材はツナマヨだ。そして、キッチンカーのコンロを使い冷蔵庫から卵とウインナーを取り出して、フライパンで調理した物を皿に移して夕飯としてレベッカに食べさせてやった。因みに俺は梅おにぎりと鮭の二つを食べた。それと余ったから揚げを数個一緒に食して夕飯を食べ終えた。


「こんなに美味しい食べ物を食べたのは初めてです。また食べれますかね」


 その言葉を俺は笑いながら聞いていたが、俺は何時までもレベッカの面倒は見れないのは分かりきっていた。だから、これからレベッカの生活基盤の構築をどうしたものかと頭を悩ませていた。そんな折に俺に声を掛けてきた者達がいた。


「よう、美味しそうな匂いがすると思って来てみたが、既に店じまいしてしまったのかな。もしもまだ何か食べる物が残っているなら分けてくれないかな。お代はきちんと支払うからダメかな」


 俺に声を掛けてきたのは三人の女性だった。腰には長剣を吊り下げており、見た目は女戦士と風体だった。残りの二人は魔法使いと斥候という風体だった。この三人のリーダーは女戦士なのだろう、俺より身長が高くて筋肉質で二の腕や腹筋がすごい事になっている。因みに女戦士の鎧はビキニアーマーだから腹筋とかも分かっただけである。胸もゴージャスでGカッピュかな?もうバインバインである。


 俺が女戦士の胸と話を始めようかすると、レベッカが不満そうに話しかけてきた。


「らんまるさん、何処を見てらっしゃるのですか、戦士の方に失礼だと思います」


「あはははは、もう慣れてるから気にしてないよ」


 そう言うと女戦士は豪快に笑いだすと、俺の顔の前にご自慢の胸を近づけて来ていた。くっ……これは俺にガン見して欲しいと言う意思表示なのか……俺は首を左右に振って女戦士の誘惑を振り切ろうとしたが、誘惑に男が抗うことなの所詮は無駄な抵抗と呼ぶしかなかったのだよ。男とは悲しい生き物である。


「自己紹介がまだだったね。私は第4級冒険者で金級をしているアネットってもんだ。よろしくなお兄さん」


 あぁ、宜しくお嬢さん。


「お嬢さんって、よしとくれ、柄にもない事言われると背筋がゾワゾワしちまうよ」


「アネットがお譲さんなら、私はお姫様がお似合いよね」


「ボクは王子様かな?」


 魔法使いのお姫様と斥候の王子様に出会えた事を光栄に思います。


「「「あははははは」」」


 三人は爆笑しながら俺の肩を凄い勢いで叩きまくってくるから痛い。


「なぁーお兄さん、何か美味しい物を食べさせておくれよ。お代ははずむから心配しないでいいよ。今日の稼ぎは何時もの倍はあるんだ」


 分かった、分かったから叩かないで、痛いから、凄く痛いからね!


「わるい、わるい、あははははは」


 俺はキッチンカーの荷台に戻ると、冷凍庫に冷凍していたお米を取り出してレンジでチ解凍を始め、その間にウインナーを細切れに切って置き、揚げ物を揚げる大型のフライパンから油を油入れに戻してから、フライパンをコンロで熱しておいた。そして冷凍ゴハンが解凍寸前でフライパンに卵を投入して炒めて行く、火が通ったら次はウインナーの投入である。そして最後にゴハンを投入して良く炒めてから完成だ。


 男飯の男手抜き焼き飯の完成である。


 焼き飯の上には目玉焼きとウインナーも付けてだしてやった。


 三人は余程お腹が空いていたのだろうか、テーブルに出された焼き飯をガツガツと食べ始めると無言で食べ続けている。俺は冷たいお茶を冷蔵庫から取り出すと三人に渡して三人の食べぷりを微笑ましく眺めている。


「ふぅー、もう入らない、でもお酒が呑みたくなるね。こんなに美味い飯なのに酒がないのは勿体ないよな」


 残りの二人はウンウンとアネットの言葉に強く同調していたが、悲しいかな俺の店には酒は置いていないのだよ。残念。


 なぁーアネットさん。あんた達って冒険者って言ってたけど、具体的に冒険者ってのは何して稼ぐ商売なんだい?


「おや、お兄さんはそんな事もしらないのかい。何処の箱入りの御曹司なんだい」


 すまん。


 俺は返す言葉もないので謝って情報を聞き出す事にした。


「冒険者ってのはね、魔物の討伐や商隊の護衛なんかをするのが商売なんだよ。ダンジョンに入るには第3級の銀級から入れる様になるんだが、私達にはだま先の話なんだよね。だから、薬草の採取や鉱物の採取なんかが第4級の主な仕事内容なんだが、私達は第4級の金級だから低級の魔物なら狩っても良いんだよ」


 その冒険者の階級ってのは如何なっているんだい?


「あっ、一般人には難しいかったかね。つまりはねーーー」


 アネットが説明してくれた冒険者の階級は以下の様になる。


 第1級冒険者 (金・銀・銅)

 第2級冒険者 (金・銀・銅)

 第3級冒険者 (金・銀・銅)

 第4級冒険者 (金・銀・銅)


 第1級冒険者は国の管理下に置かれるので、実質一般人で最高峰とされる階級は第2級冒険者の金級までだそうだ。それ以上になると国から騎士団や宮廷魔法士として士官の道が開かれるので、第1級冒険者は冒険者ギルドの所属から国の所属に変更するのが一般的だそうだ。そして、認識票の裏には4ー金と言うプレートが埋め込まれており直ぐに階級が分かるようになっているとかアネットが言っていた。


 それならアネットさんは主に魔物の討伐をしているのかい。


「そうだね。商隊の護衛も第3級の銀級からだからね。ダンジョンも護衛も第3級の銀級なんだよね。それまでは街道の見回りをして、出会った魔物を討伐して稼ぐしかないんだよね。中々に厳しいよ」


 アネットさんに頼みがあるんだが良いかい。


「おっ、何だいいきなり、私と一晩同衾するって言うなら高いよ」


 えっ、やらせてくれるんですか?

   



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