17話

「正直言ってこういう事件は俺の管轄外なんだ。俺だって警察を呼ばれると困る。お祓い屋なんて詐欺まがいの商売、叩けば埃しか出ないからね。だから満緒さんの依頼終了を待って俺は関りをなくしたいと思ったんだ。でも、好奇心の方が勝ってね」


 満緒は無言で俺に鋭い視線を向けている。


「満緒さんは無意識なんだろうけど、いろいろ気にかかることを言ったんだよ。覚えてないかな、最初に話したときに『担任の女に手を出したり、ちょっとした言い合いで頭に血がのぼって傷害致死で逮捕されたり』って」


 これには満緒をはじめ、住職と京香もピクリと反応した。


「その時は何も思わなかったんだけど、翌日に高校時代の君のクラス担任が京香さんと付き合ってたって教えてくれたよね? これで2つの話が繋がったんだ。君が前日に話をしてくれた<手を出した担任の女>っていうのが京香さんのことだってね」

「…………」

「君は京香さんに興味がないって言っておきながら、実はこっそり手を出してたんじゃないか」

「…………」


 満緒が何も言わないので、俺はそのまま話を進めていくことにした。


「そうなってくるとすごく複雑だ。自分の元カノが、自分の父親と結婚して義母になる。正直言ってあり得ない展開だ。君はよくこの状況を受け入れたね」

「私は満緒さんの女ではありません」


 京香がぴしゃしりと言い放つ。その瞳には憎しみの炎が灯っていた。

 俺は分かっている、というように軽く頷いて満緒を見る。


「ついでに言うと、父親に何かしようとしてるのは京香さんではなく、満緒さんの方じゃないかって思い始めたのは、君が見せてくれた伝票のせいだよ」

「は?」 


 俺は2日目に満緒が見せてきたコピー用紙を思い出す。


「京香さんが海外から怪しいサプリを取り寄せている、その証拠固めにあんな伝票のコピーを見せてきたけど、あれってあり得ないよね」

「何言ってんだ、お前が言ったんだろ危ない薬だって」

「そうだよ、違法な薬だ。販売元はアメリカの有名企業だ。ここが薬関係のものを製造・販売してシェアを獲得している会社だってことは向こうの人ならみんな知ってるよ。アメリカでは合法の州もあるけど、日本じゃアウトだ」

「だったら、そんな危険なものを輸入しているこの女が怪しいのは事実だろ」


 満緒は京香を指さす。

 指さされた京香は不安げな表情で俺を見る。


「何のことを言っているのか分かりません、私は普通の健康サプリを購入しているんです。椿さん、伝票ってなんのことですか?」

「満緒さんがあなたに罪を着せるために偽装した偽の送付票ですよ」

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