第195話 そう言う事になりまして……
「やっほーっ! 『第一分署』少年課課長をしております、
「「「「……」」」」
浅黒い肌に彫りの深い目鼻。笑うと漫画のキャラクターのように大きく開く口。パッチリとした目は力強く、日本人というよりかは外国人に近い顔の造形をしている。何よりも目立つのは、天然パーマが入った、ブワリと盛りに盛った髪型だろうか。
実に元ネタに忠実なキャラクタークリエイト。そしてそのハイテンションな感じのしゃべり口調も、実に元ネタに寄せている。
八十年代のウーマンスーツをバッチリ着こなし、そのメリハリボディは実に色気に満ちているのだが、ヒマワリのようなカラリとした感じがエロスよりも肝っ玉母さん味を感じさせるので、どこか下町のおっかさんのように見える。
「あー、同じく少年課のカニ
「「「「……」」」」
そんな肝っ玉母さんにガッチリ肩を抱かれている、どこか覇気の欠けた、だけど妙に親しみやすい青年がペコリと頭を下げる。
やる気の無さというか、妙に疲れた感じを漂わせているが、それ以外は実に元ネタに忠実なキャラクタークリエイトをしていた。
健康的に日に焼けた肌に、古き良き醤油顔。がっちりしたガタイの黒髪真ん中分け。こちらは元ネタとはちょっと解離している感じで、全くロールプレイはしていないがそれでも実に良く似ている。
そんな二人に向けられている視線は、『第一分署』側はマジでやりやがったよこいつら、という空気感を醸し出している。しかし他方、今回コラボをする相手のウケは物凄く良かった。
「社長とゲームが出来るなんて」
「しかも、噂の社長ダンナーまで巻き込むとか」
「「「「やっぱ『第一分署』ぱないわぁ……」」」」
ずらりと見た事のあるアバターが並び、実にキラキラした感じのアイドルオーラを輝かせている女性達。いわずもがなの株式会社サラス・パテ所属のタレントさん達である。
本当は十数人いる所属タレント全員とコラボを! みたいな話だったのだが、さすがにそれはキツい、となり絞りに絞って五人が参加する形となった。
コラボの目的である、SNSからの攻撃からの防衛作用を期待する為、選ばれたのは特に攻撃が激しかった五人だ。
やっぱり華樹 らいちもその中に含まれている。
その対策こそが目の前の二人である。タレント達が言っていたように、社長パルティと社長のダンナーこと
そもそもの発端は、パルティを含めた相談事をしていた時に遡る――
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「人数を絞っても、こっちの手が足りねぇぞ?」
「そうよね。タレントさんによっては男性はちょっと苦手、ってイメージの人もいるわけだし、女性の手が必要よね」
「絞って五人かなぁ……んでスリーマンセルか、場合によってはタレントさん二人にこちらが三人とか? あー、うちの鑑識、山さんはあてにしないでね?」
所属タレント全員とコラボを! 等と言う無茶を言い出したパルティに突っ込みを入れ、何とか人数を絞らせたのだが……それとは別の問題が浮上していた。
少数精鋭を狙っていた訳じゃないが、『第一分署』の構成メンバーの数が少ない。なので圧倒的にマンパワーが不足している。その部分をどうするか、論点はそこに移っていた。
『困ったわねぇ……確かにらいちは少し、脇が甘い所があるから』
「「アレを少しとは呼ばない」」
一、観客として見た場合のVラブ華樹 らいちは優れたエンターティナーだ。本当に神様に愛されたように撮れ高が多く、ユーヘイやノンさんとて彼女のそのポンコツっぷりは好ましく思っている。
だが、直接こっちが関わって一緒に遊ぼうとなった場合、それだとちょっと事情が変わる。特に素でアツミの正体をポロリしそうな所が実にマズい。
「ああ、そうだ。お前がプレイヤーになれば良いじゃん」
『え?』
「あー、そうか。だってアンタ、ブラッド・ブラッディ・クイーンじゃない。ちょっとくらいのブランクじゃ腕は錆び付いてないでしょ?」
『ちょ、ちょっと待ってくれるかしら。こう見えても私は忙しいのよ?』
「あーそう言えば奥さん? 確かヤベェDEKAでも不定期に出演する女優さんがいたとか言ってなかったっけ?」
「「ああ! それだ!」」
『ちょほーい! 私の話を聞きなさいよ! 何を勝手に話を進めてるのかしら?!』
「少年課の村松課長か」
「ありじゃない?」
「ついでだからデストロイも巻き込むか? 確か少年課にもう一人、男性DEKAがいたよね?」
「「おおっ! ダディ(旦那様)冴えてるぅ!」」
『聞けって言ってるでしょうがっ!?』
「良いじゃん良いじゃん、パルティのちょっと良いとこ見てみたい♪」
「作っちゃえ♪ 作っちゃえ♪ 作っちゃえ♪」
「はいそれそれそれそれそれそれぇ!」
『やらないからねっ! ちょっと聞きなさいアンタらっ!』
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と言う流れがあり、強引に提案を押し付けたのだが……まさか本当にやるとは思っていなかったユーヘイ達であった。
ユーヘイ達のプランとしては、ユーヘイとヒロシのペアに、ゲーマーとしてなかなかの腕前を持つユウナ・リモーナとスノウ・ブランシェルを受け持ち、ダディとアツミで
ちなみにユウナ・リモーナとスノウ・ブランシェルはゲーム世界の獣人という設定の猫耳少女と犬耳少女。御日 サマーは太陽のように元気な僕っ子少女、という設定。華樹 らいちは電脳世界の巫女姫、志尊 ジュラは電脳世界の歌姫という感じである。
「それで大田君。どんな感じに振り分けるのかしら?」
すっかり村松課長になりきって、あれ程嫌がっていたのに、ノリノリなパルティにジト目を向けながら、ユーヘイはがっちり肩を抱かれているカニ谷に視線を向ける。
「あー、村松課長とカニ谷と華樹 らいちさんで動いてもらおうかなぁって思ってますが」
妙に死んだ目を向けてくるカニ谷を気にしつつ、ユーヘイが提案をすると、呼ばれたらいちがピョンピョンと跳び跳ねながら喜ぶ。
「やった! やった! 社長とゲーム!」
「こらこら新米DEKAらいちちゃん。ちゃんと村松課長と呼びなさい」
「はぁーい! 村松かちょー!」
しゅたり、と崩れた敬礼をしながらだらしなく笑うらいちに視線を送りながら、ユーヘイは安堵の溜め息をこっそり吐き出す。
「ええっと、それじゃ私達は?」
らいちの事を良いなぁと見ていた志尊 ジュラが、おずおずと手を挙げて聞いてくる。
「ええっとね、ユーヘイとヒロシペア、トージとだん、こほん、ダディペア、アタシとあっちゃんペアの三つのグループに別れるから、二人組と一人と一人って形になってもらっていいかしら? 二人組になってくれた人達が好きなペアを決めて良いわよ」
もしかしたらパルティ達が動いてくれるかもしれない、というパターンで決めていたグループをノンさんが告げると、残された四人が相談を始める。
しばらく四人で相談を続けて、結局決まらなかったらしく、じゃんけんで決着をつけた。
「それじゃユーヘイとヒロシペアにサマーちゃん。トージとダディペアにユウナちゃん。アタシとあっちゃんのトコにジュラちゃんとスノウちゃんと言う組分けね。それでいいかしら?」
「「「「はい!」」」」
こうして決まった組分けで、それぞれのタレントさんに好きなクエストを受けてもらい、コラボが始まったのだった。
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