第167話 シンデレラボーイ VS あらくれDEKA
ノンさんが見事過ぎる手腕でウィズを撃退し、クエストインフォメーションでもそれが大々的に全プレイヤーへ周知された。その間近でクローと『ワイルドワイルドウェスト』団長達の戦いが佳境を迎えようとしていた。
「ちっ、口先だけ立派なハンターだこと」
団長達の猛攻を辛うじて防いでいたクローは、ノンさんの一撃を受けて倒れたウィズを一瞥しながら吐き捨てる。
「余所見とか余裕じゃねっ」
「ぐっ!?」
ウィズの方に意識が向いた隙を狙い、団長の蹴りが飛ぶ。その一撃をギリギリ受け止めて、クローが体勢を崩す。
「そらよっと!」
「っ!?」
団長の後ろから飛び出した
完全に意識の外側からの一撃を受け、クローはステンと転がる。
「食らっとけっ!」
「がぁっ?!」
その瞬間を待っていたように、
「がっ?! かはぁっ?! げぼっ?!」
クローは悶絶しながら、なんとかその場から転がって逃げ、安全な場所で上半身を引き起こす。
「突っ掛かって、げほっ?! 無様を晒してた、けほけほっ?! 雑魚がっ! ごほっ!?」
クローにとって団長達は格下の雑魚というイメージしかない。何せ、何度も何度も一方的に病院送り(敵キャラクター視点だとそう言う風に見える)にしてきた相手だ、最初から侮るのも当然だろう。
しかしそれは、この世界がリアル、現実だったら通用する傲慢である。
ここはゲームの世界。そしてプレイヤーはどこぞの野菜星人のように、瀕死から復活すればするほど学習していくし、スキルという神の力すら加勢するのだ。
そんな思考を敵NPCに求めるのは酷だろうが……
全くの余談ではあるが、色々な伝説を持つゲームSIOでは、NPC全てが学習し強くなっていくシステムが積まれており、スラム街の貧相な子供に罠にはめられてボコられる、みたいな事案がちょいちょい発生したりする。かなりの変態的システムが組まれていたらしく、その後あまりに技術面でハードルが高過ぎて、その後のVRゲームでは簡素化されたと言う歴史があったりします。
閑話休題。
クローの言い分を聞いた団長達は、『はんっ』と鼻で笑う。
「バーカ、対策するに決まってんだろ」
「負ける前提で戦う訳ねーだろ」
「あんまり、俺らDEKAを舐めんじゃねぇよ。外国のマフィア程度に負けっぱなしで終わるかってぇの」
砂利と埃まみれのクローを見下し、わりと自分達も消耗してボロボロな『ワイルドワイルドワイルド』の幹部達が、男臭い笑顔を浮かべて気炎を吐き出す。
四天王に無策で突っ込み、その結果、手も足も出ずにボコボコにされる。そんな無様な負け戦を配信し続けた事を、彼らが良しと思っていた訳も無く、虎視眈々と逆襲する瞬間を待っていた。
有難い事に、大田ユーヘイ発案の全DEKAプレイヤーユニオン計画が行われ、体術面での練習が思う存分に出来る環境が作られた。しかも教官役まで、もれなくついてくるという充実っぷりである。これを利用しない手は無い。
団長ら『ワイルドワイルドウェスト』幹部達がこれに飛び付き、ひたすらそれにのめり込んだのも当たり前の帰結と言えよう。
負けっぱなしは格好悪い、負けず嫌いな男の子達の意地とも言えるが。
「付け焼き刃でも、やれるもんだろ?」
団長がレンズの割れたサングラスを投げ捨て、切れた唇の端をペロリと舐め、血が混じった唾を吐き捨てながら、リキヤとタツキの肩を叩きつつ挑発的な笑みを浮かべる。
「ぺっ! 雑魚が生意気なっ!」
蹴られ腹を押さえながら苦悶の表情を浮かべ、小刻みに震える膝を気にしながら立ち上がるクロー。
「体の方は正直みたいだけどな」
血走った、睨みだけで人を殺せそうな目を向けられながら、幹部達はニヤニヤと小馬鹿にする笑みを浮かべる。
一人相手に大勢でボコっている事はとりあえず置いておいて、というか絶対レイド戦的要素を含むボス相手にして、一人で圧倒して見せたノンさんが異常なのだが、徹底的にクローの理性、平常心を削る事に心血を注いでいる幹部達。何しろ平常心を取り戻して冷静に各個撃破される、なんて事になれば汚名返上など夢のまた夢だ。
あくまでも、『ワイルドワイルドウェスト』が四天王を倒す、その一点にこそ意味があるのだから。
「島国のちっぽけなポリスになど、この私が負けるものかよっ!」
完全に理性を失ったクローが、近くに構えていた
「ポリスなんて洒落た呼ばれ方はくすぐったい。やっぱりあたしゃ泥臭くて、どこか男心をくすぐる『DEKA』と呼ばれる方が性に合ってます、ねっ!」
「っ!?」
殴ってきた腕を取り、そのままの勢いを利用してシゲルは一本背負いを決めた。運動神経がそれ程良い方では無いが、ならばと一つの技だけに集中して鍛えたのが上手くハマる。
「かはぁっ?!」
無理矢理、強制的に肺の空気を絞り出され、クローが慌てて空気を吸い込む。だが、折角吸い込んだ息も、それを許さんと落とされた、シゲルの追撃、肘落としで再び強制的に吐き出される。
「ぶげぇっ!? かはっ?! げぼっ?!」
腹を抱えるようにして悶えるクローを、待機していた幹部達が一斉に取り押さえた。
「団長!」
男臭く笑う仲間達に呼ばれ、団長は素早く手錠を取り出し、取り押さえられているクローの腕にガッチリと手錠をつけた。
「フィクサーのクロー、確保だ!」
暴れていたクローは、手錠をはめられて大人しくなる。そして頭の中にクエストインフォメーションが鳴り響いた。
『エイトヒルズエリアボスであるクローが確保されました。クローの戦線離脱とエイトヒルズエリア完全制圧が確認されたため、他二エリアにデバフが発生します。他エリアボスの状態に追加で「恐慌」がつきます。イベントの特殊条件が達成されました。新しく追加の特別報酬が発生します』
団長達が雄叫びをあげ、拠点制圧を行っていた新人DEKAプレイヤーとイリーガル探偵達も大声で叫んだ。
こうして二つの区画のフィクサーは一掃されたのだった。
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ゲーム内掲示板スレッド
【もっと】イベントを語るスレ(総合)【熱くなれYO】
・運営
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・ホット一般人
いやぁ、黄物がここまで盛り上がるコンテンツになるとか、サービス開始してからやってるけど……ついに来たって気分になるよなぁ
・ホットYAKUZA
ポテンシャルはあったんだけどな、いかんせんDEKAが……
・ホット一般人
チュートリアルは強敵でしたね
・ホット一般人
クエストも忘れてはいけない
・ホット一般人
おいおい、システム回りのアレコレも忘れないでくれよ
・ホットDEKA
去れ! マジで去れ!
・ホットYAKUZA
この要素ってだけじゃ無いけど、ほぼほぼ別の職業にコンバートしちまったしな……ネキとダディさんとか、マジで良くぞ耐えてくれたと思うよ
・ホット一般人
やっぱユーヘイニキの登場ってデカいよな
・ホットYAKUZA
『第一分署』の功績がデカいわな。彼らが居たからDEKAのイメージがぶち上がった
・ホット一般人
で、今回のこれじゃん? やっぱすげぇよな
・ホットYAKUZA
全てのプレイヤーを巻き込んだからな。ある意味、今回イベントのMVP
・ホット一般人
イベントにほぼプレイヤー全員参加って、理想的な状態よな
・ホットYAKUZA
今回、ユーヘイニキ達だけじゃなく、他のギルドも大活躍っていうのも燃える
・ホット一般人
なー。ノービスとしては探偵が活躍しているのが善き
・ホットYAKUZA
なんだかんだ、俺らYAKUZAも協力してるしな
・ホット一般人
イベントたのすぃー!
・ホットYAKUZA
お?
・ホット一般人
おお!
・ホット一般人
きちゃあぁっ!
・ホットYAKUZA
ネキか?
・ホット一般人
ネキっすわ。つーか、ユーヘイニキの印象が強いけど、ネキも人外よな
・ホットYAKUZA
警棒を使いだして、ますますって感じだけどな。どっかで剣士でも嗜んでたんだろうな
・ホット一般人
別VRゲームで修行(プレイ)=嗜み
・ホットYAKUZA
それでも強すぎるけどな
・ホット一般人
第一分署には化け物しかいねぇ! ←真理
・ホットYAKUZA
否定出来ないのが何とも……
・ホット一般人
これで後三つの区画だけか
・ホットYAKUZA
いや、『ワイルドワイルドウェスト』がチェックメイトくさい
・ホット一般人
ホンマや!
・ホットYAKUZA
お?
・ホット一般人
おおおお!
・ホットYAKUZA
うんうん、彼らも色々あったし、そりゃそんだけ喜ぶわな
・ホット一般人
おめでとぉー!
・ホット一般人
これで残り二つ!
・ホットYAKUZA
「ふっ、勝ったな」
・ホット一般人
「ああ」
・ホット一般人
妙なフラグを立てないでもろて
・ホットYAKUZA
ゆうてニキやヒロシニキにトージきゅんまでおるんやで?
・ホット一般人
まあまあ、ゆっくり観戦しましょ?
・ホット一般人
それもそうやね
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