第49話 49

49


俺の名前はミヤギ。

都市伝説ハンターミヤギと言うチャンネルで動画配信で生計を立て、いずれ日本、いや世界最高の動画配信者になる者だ。


マインに古い俺の動画を、日本語から英語への翻訳とアナウンスを依頼して仮完成し、ネットへと動画をアップしたのだが海外からの反応はイマイチだ。

何が不足しているのかは現状分かってはいない。

ただ、今回上げた動画は日本でも6千回程度しか閲覧されていない動画だ。

これは俺がまだ都市伝説ハンターとして活躍する前の動画で、とりあえず何でもいいから有名どころを撮影してあげようと言うコンセプトで作った映像だ。

それにしても150回止まりは悪すぎると思い、俺は翻訳を担当したマインに聞いて見る事にした。


「マイン、ちょっといいか?」


「なぁ~にぃ~♡」


マインがネコの様にじゃれついてくるが振りほどく。


「今回マインに英語版にしてもらった動画が思った程伸びていないから、一度俺が日本語で読むからマインは英語を日本語にして喋ってくれないか?」


「いいけど、驚きの表現は英語のままでいい?」


「ああ、何でもいいそれじゃあ映像の言葉検証を始めるぞ」


-


ミヤギ「ここの山の上は戦国時代の時に合戦があり、負けた侍が斬首刑にされた場所とされている所だ」


マイン「昔戦いがあり、首ちょんぱした場所だ」


ミヤギ「その後、山の下にトンネルが作られ亡霊が出るようになったと言われている場所で今から潜入してみる」


マイン「トンネルにゴーストが出るので、ハンティングしに行く」


ミヤギ「トンネルの中は電灯が一つもない暗闇が広がっている」


マイン「トンネルの中はライトが無く真っ暗だ」


ミヤギ「俺は一歩一歩慎重に歩みを進める」


マイン「私はゆっくりと歩く」


トンネルの天井から水滴が落ちて来て顔に当たる


ミヤギ「ひえっ!」


マイン「Oh my goshうわっ!」


ミヤギ「ビックリした~!」


マイン「Oh my goshうわっ!」


ミヤギ「幽霊かと思った」


マイン「ゴースト?」


ミヤギ「再び歩みを進める」


マイン「歩く」


ミヤギ「何か居そう!」


マイン「ありえないよ」


トンネルの壁の模様が人に見える。


ミヤギ「ビビるわぁ~」


マイン「Oh my goshまあ!」


俺は一旦映像を止める。


「おいマイン、同じ表現が多いし日本語から英語への翻訳がおかしくないか?」


「私は一生懸命やったよ!」


「一生懸命やったのは分かるけど、これじゃあ駄目だ。もう一回やりなおそう」


マインはうつむき、目に涙を溜めて言葉を発する。


「ミヤギは私の事が嫌いなのね!」


なっ何言ってんの?こいつ?


「きっ嫌いになんてなる訳ないだろ」


「ほんと?」


「ああ、本当だよ」


「じゃあ、私の言う事聞いてくれる?」


「聞ける事ならな」


その瞬間、マインがやりました!と言う顔になり口を開く。


「私が英語で解説しながら新しく動画を撮れば翻訳いらないでしょ」


「はっ!?マインお前何言ってるんだ?今ある動画を英語に翻訳しないと意味ないだろ?」


「違うよ。私が言いたいのは、ミヤギの映像を見ながら私が出演して英語で説明するの」


俺はしばし考え、それもあり・・だなと思った。

それにこれ以上マインとやり取りするのも面倒だしな。


「マインの顔は隠して…テレビの時のように仮面を付けての出演なら試してもいいぞ」


そして新たなる都市伝説ハンターミヤギの解説動画を英語にて作成した。

マインは、顔はテレビと同様に蝶をモチーフとした仮面を付けて、上着はアメリカの国旗の模様のタンクトップのヘソだしルックにて出演し、ミヤギの動画を画面に映して説明すると言うものだ。


「ハ~イ、マインです。今日は都市伝説ハンターミヤギの動画を解説して行こうと思います。よろしくね~」


そんな軽い乗りでマインの解説動画は始まった。

そして、ミヤギとマインは作成した動画を試しにネット上に上げて見た。

すると再生数は段々と伸びて行って、日本のミヤギの再生回数をあっと言う間に抜いて行ったのだ。


しかし、再生数は伸びてもミヤギの顔に笑顔はなかった。

その理由は動画のコメント欄にあったからだ。


『マインちゃんは何歳なのかな?』

『マインちゃんは何処に住んでいるのかな?』等々。


コメントの99%がマインに対する質問等で、動画の内容に関するコメントは一件のみだった。


『この動画必要ある?』


そしてトドメの一言コメントがこれだった。


『都市伝説ハンターマインで良くない?』


動画を見たミヤギとマインの間からは言葉が消え沈黙が支配した。

そしてミヤギが叫ぶ。


「俺は英語に強くなるなる為にイギリスに渡米して、マイン!お前を超える動画を必ず撮って来てやるからな!俺が帰るまで残りの動画作ってネットに上げとけよ!」


ミヤギは涙ながらにマインに指を指しながら叫び、撮影機材の荷物を纏め家を飛び出したのだった。

マインはミヤギの行動を見て一言呟く。


アンビリーヴァブルシンジラレナイ程、アホね」


でも、言われた事はちゃんとやらなくちゃ駄目だよね。

それからマインはミヤギに言われた通りに、今までのミヤギの動画の解説動画を作成してはネットに上げて行った。

結果、ミヤギの動画登録者数はさらに倍増し再生数も伸びに伸びたのだった。


ミヤギの苦悩は続く。

ちなみに家出したミヤギは当然の如くパスポートなどは持っておらず、歩きスマホで動画の再生数を見て『俺いらなくない?』と思うのであったが、それより何処の女の家に転がり込むかを真剣に悩むミヤギだった。


*


ある場所で変な噂が上がっていた。

それは健一が借りた店舗付近の噂だ。

なんでも夜になると、白い薄着の人が徘徊しているとの噂だ。


ほとんど店舗に顔を出さない健一や安藤の耳には届かない。

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