第23話 23
23
「シングルじゃなくてツインの部屋(1部屋にベッドが2つある部屋)しか空いてなかったんだ」
俺の言葉に安藤さんの目は大きく見開かれていたが、少し経つと落ち着き口を開いた。
「その…
安藤さんはあきらかに
「もっもちろんだよ!他に探したんだけどどうしても
ヤバイ、余計に怪しい受け答えになってしまった。
女性に慣れていないのがバレバレの健一だったのが、逆に安藤さんの目にはとても安心して
「わかったわ。鈴木君を信用してあげる。さあ行きましょ」
安藤さんの理解を得た俺達はネズミの国の近くのホテルに移動した。
食事はホテル近くのファミリーレストランで軽く済ませた。
ホテルの部屋はとても清潔でネズミの国が近いのか、部屋にはパンフレット等が置いてあった。
俺は部屋に入るとすぐに安藤さんに声を掛ける。
「綺麗な部屋だね。8階だから窓からの眺めもいいんじゃないかな」
安藤さんが俺の提案に反応してくれたので俺達は窓際に行った。
俺と安藤さんが窓から外を見ると正面にネズミの国があり、光で照らされたネズミの国はまるで異世界のような感じがした。
「明日はあの場所に行くんだから今日は早く寝よう」
俺は夜景の感想などは語らずに体調を優先させた。
まあ、本来彼氏彼女の関係ならこの夜景を見ながらいい雰囲気になるのだが、俺達はそう言う関係ではない。あまり、余計な事を言わない方がいいような感じがした。
「そうね。私お風呂にお湯溜めて来るね」
安藤さんはそう言うと窓から離れて行ってしまった。
それからどちらが先にお風呂に入るかと話になったが、安藤さんが先に入る事になった。
俺のレディーファーストの言葉を聞いてそうなっただけで、安藤さんが入った湯に入れる事を望んでそうした訳ではない。
もう一度言う、それが望みだった訳ではないぞ。
それから俺達は風呂から出た後、他愛ない話をしてベッドに入った。
当初緊張して寝れないと思ったが、東京占い営業で疲れていたせいかスッと眠りに落ちたのだった。
翌朝携帯のアラームで目が覚めた時には安藤さんは既に着替えを済ませていて、ネズミの国への意気込みを感じた。
俺達は軽く食事を済ませた後、ネズミの国へ出発した。
俺は中学の時に実は修学旅行で来た事があり、今回で2回目だけど門をくぐった時のドキドキは健在だった。
安藤さんは目に星が輝いてるんじゃないかと思う程キラキラした瞳で景色を見て、そして早く行きたいのか俺の手を強引に引っ張って園内を駆けずり回ったのだった。
結局、新幹線を2本程遅らせて乗る事になる程、安藤さんはネズミの国を満喫していた。
俺は安藤さんが頭にネズミのカチューシャをまだ付けていたが、特に気にする事なく名古屋駅へと到着した。
安藤さんは名古屋についてもまだ頭にネズミのカチューシャを付けていたので、一応言っておくことにした。
「安藤さん頭にネズミのカチューシャ付けてるけど、流石に名古屋だから取った方がいいじゃない?」
その瞬間、安藤さんの顔が赤くなりネズミのカチューシャをもぎ取るが
俺はえっ!?と思ったが安藤さんの行動は早かった。
サッとおれの至近距離に近づき低い声で言い放つ。
「なんで東京で教えてくれなかったの!」
その後、独り言のようにプンプン怒る安藤さんをなだめながら自宅へと帰るのだった。
*
俺の名前は
現在、名古屋のテレビ局に勤めている男だ。
今、受け持っているのは平日の10時から11時までの情報番組『昼前ブラリンコ』のディレクターを担当している。
ホットなニュースや情報をスタジオにいるあまり売れていない女優や俳優を使いトークする番組だ。
その中で特に視聴率が高いのが3分程で紹介する『街角ハンティング・流行りはココカラ』と言うコーナーだ。
このコーナーは
そう、3分の紹介だが、実際の使用時間は10分の時間を
この番組はこのコーナーでもっていると言っても過言ではない程の視聴率だが、最近の視聴率が低下している。
視聴者からはマンネリとか面白くないとかの情報が寄せられ、一度それならと東京の事を流した所、苦情の嵐だった事は苦い経験だ。
だから俺はこのコーナーのネタを探して、視聴者からの投降やネットなどを常にチェックしている。
そんなある日、『Worhtless door』(価値のないドア)と言う5流のサイトに面白い記事を見つけた。
なんでも芸人が病気占いをしてもらった所見事に的中と言う記事だ。
正直俺はこのサイトの信用度は10パーセントもないが、もし、もしもそれが本当の事ならコーナーで取り上げてもいいと思い、俺は芸人のSNSに飛びそれからネットで検索して占い師のホームページを探し当てた。
正直かなり苦労した。リンクも無ければ何処のどいつかもわからないからだ。
そしてホームページの営業先を見て見るとほとんどが名古屋で営業している事が分かった。
そして俺はホームページをスクロールして行くと下の方に仕事依頼のメールアドレスが記載されていた。
俺はAD(アシスタントディレクター)に話をしメールを送らせる前に、お客様の声の掲示板があったので一応目を通す事にした。
正直俺は驚いた。
皆が皆、占いが当たり喜ぶ記述があるのだ。中にはこのまま行けば命を落とすはずだったが、危機を救われたなんて記述もあったのだ。
俺は驚愕と共に笑いが込み上げて来た。
これは『当たり』を引いたかもしれないとADに連絡するのだった。
*
僕の名前は
『ブラッキー慎吾』と言う芸名で芸人をやっている。
僕はもう一度輝きたいと占い師のやり取りを
サイトのニュースに対する声は、心配する声や売れない芸人のネタなんてひどい言葉もあったが、
僕は入院生活をしていると信じられない事が起こった。
日曜日の10時台と言うゴールデン番組のリポーターが僕を取材に来たのだ。
当然カメラマン等のスタッフも連れて。
僕は緊張しつつなるべく自分の事を面白く語った。
取材時間は10分程度と短かったが、僕は全力を出せたと思う。
これで終わりなのかそれとも先があるかはわからないが、取りあえず体を治してから営業を行う事を誓った。
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