第22話 22

22


僕の名前は後藤慎吾ごとうしんご

18歳の時から芸人として活躍かつやく、いや活動している。

25歳の時に運よくテレビに出た際にプロデューサーの目に止まり、その人の紹介でドラマのスーパーチョイ役に出させてもらったのが芸人の頂点で、その後は下ると言うより落ちるかの如く仕事がなくなった。

ドラマでミスをした訳ではないが、僕は見た目は一般人と変わらず顔も頭もよくないのに加え、芸人なのに喋りが下手なので当然と言えば当然の結果だ。

現在29歳、出来ればもう一度輝きたいと思うが世間はそう甘くない。

努力でなんとか出来るなら皆しているし、どちらかと言うとも大事な世界だ。


努力と言う訳ではないが僕は体が資本として生きて来たので、朝のランニングに筋力トレーニングと、健康には人一倍気を付けている。

そんな僕がなんとなくネットを徘徊していると面白い掲示板を見つけた。

なんでも白い仮面を付けて病気を占う変な奴がいるらしい。

世の中変な奴はたくさんいるが、その占いの的中率は98パーセントと驚愕の数値だ。

俺はこの占い師は使えるのではと考えた。

そして占いのホームページを見ると、偶然にも週末東京に来るらしい。

僕は気合を入れて占い師に突撃した。

僕は占って貰って写真を撮りSNSに上げる事を了承してもらった。

それで占いの結果だが『体、虫垂炎、レベル4、黄色→赤』だった。

僕はこの占いを見た瞬間に、このチャンスをつかめばもう一度輝けるのではと思い、僕は高校の友人であり現在『Worhtless door』(価値のないドア)と言う、ネットニュースサイトを運営している友達に連絡を取り会う事にした。


-


「よう、久しぶり後藤ごとうじゃなくてブランキーだったか?」


友人の榊原さかきばらは口髭を揺らせ笑いながら話してきた。


「プライベートだから後藤ごとうでいいよ」


「ほいよ。で、今日はどうした?」


僕は榊原さかきばらに病気占い師と占い結果を語った。

榊原さかきばらはしばし黙って考えていて、真剣な目で語って来た。


「それで後藤ごとうはどうしたいんだ?」


「ぼっ僕はもう一度注目され、出来れば輝きたい!」


僕は力強く榊原さかきばらに語った。


「わかった。輝けるかは分からないが少しは注目が行くようにしてやる。まず最初に明日朝一に病院へ行って虫垂炎?だったか?その検査をしろ。もしそれが当たりなら恐らく手術になるだろう。そして手術が終わり次第、占い師と撮った写真と手術後の姿を撮りSNSに上げろ。俺はそのSNSにひもづけして記事を『Worhtless door』(価値のないドア)のサイトに上げる」


「わかったけど、また相手の承諾なしで記事を上げるの?」


「当たり前だろ!取材をすれば取材費用が掛かるんだよ。だからお前のSNSにリンクを貼って記事を上げるんだよ。そうすればお前の事務所だけに金を払えば済むからな。おっと忘れていたがお前事務所に電話しとけよ、3千円で取材を受けたってな」


僕は榊原さかきばらの言葉を受けてやはりこうなったかと思ったが、これでの光が当たれば満足だと思った。

ちなみに3千円は榊原さかきばらから受け取り、僕が事務所に渡さなくてはならない。

恐らくだが僕の受け取る金額は多くて600円位だろう。

虫垂炎で手術で入院すればアルバイトも休み、メインの営業も休みになる。

生活が破綻はたんする足音が聞こえて来るが、僕は榊原さかきばらの言う通りに次の朝病院へと向かうのだった。


-


占い師の病気占いは見事に的中し僕は直ぐに手術そして入院となった。

それからすぐに『ブラッキー慎吾』はSNSに占いと手術の報告を上げると、数時間後に『Worhtless door』(価値のないドア)に怪しい占い師と芸人と言う記事が上がった。


だがこの閲覧数が少ないニュースサイトはマニアックな人達が好んで見るサイトで、一般の人はほとんど見ないサイトだ。

しかし、そんな変なニュースサイトでもネタ・・を探す人間にとっては、とても価値のある・・・・ドアなのだ。


そんなサイトを一人の男が目をくぎ付けにして見ていた。

その男は何かを見つけたように目を輝かせ思ったのだ。

これはいいネタになるのではと。


*


東京のショッピングモールの営業は家族連れや芸能人とかいろんな人が訪れ、予定していた16時が来たので片づけを行っていると一人の若い女性が話しかけて来た。


「もう終わりですか?」


「はい、16時までとなりますので、すみませんが終了になります」


「なんとか見てもらう訳にはいきませんか?」


俺は正直どうしようか迷った。ネズミの国の近くのホテルに移動しなくてはらないし、安藤さんの片づけはほぼ終了していて、俺の方も大方片付いていたからだ。

さらに俺は安藤さんに重大な事を告げなけれなばならない時間も必要だからだ。

しかし、俺は普通断る所を俺は了承する、俺は根が優しいしお金も…お金が大事だから答えた。


「いいですよ。このまま立ったままでいいですか?」


「はい。すみません。体をお願いします」


俺は直ぐに能力で女性の体を見たが、特に異常はなかった。


「問題ありませんでしたよ」


「ありがとうございます」


女性は礼を言い俺に3千円を手渡すと足早に後にしたのだった。

安藤さんからは『お人よしね』と言われたが、俺はこれでいんだと思った。

その後、健一の知らない所でこの女性は今回の占いの状況をSNSに上げていて、健一の占い師の好感度が少し上がっていたのだった。


-


俺はネズミの国の近くのホテルに移動する時に重大な事を安藤さんに告げる。


「安藤さん、ごめんなさい。ネズミの国を甘く見ていて、今日泊まるホテルなんだけど、その…シングルじゃなくてツインの部屋(1部屋にベッドが2つある部屋)しか空いてなかったんだ。本当はもっと早くに安藤さんに伝えなくてはいかなかったけど、早く言えばこの事で安藤さんのテンションが下がる気がして言えなかったんだ」


俺の話を聞いた安藤さんは目を大きく見開き驚いていたのだった。

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