第7話 7


動画配信者のミヤギさんは俺と握手をするとコーヒーも最後までのまずに、撮影の用意があるので失礼するといい、自分の伝票を持って席を後にした。

俺は残りのサンドイッチを食べながらミヤギさんの事を考えていたが、いろいろ考えてもしょうがない、なるようになれとコーヒーを飲み干し少し早いが店へと向かった。


店に行くとミヤギさんが三脚にカメラをセットして2方向からのセッティングを行っていた。

俺はその光景を見ながらこれが動画の撮影なんだと少し感心していた。


セッティングが終わり俺に気づいたのかミヤギさんが俺に話しかけて来た。


「シグナルスキャンさん、撮影の手順を説明してよろしいですか?」


「ええ、準備は出来ているので構いませんよ」


俺は答え軽い撮影の流れを説明してもらった。

簡単に言えば俺はただいつも通りに椅子に座って受け答えをするだけでいいらしい。

質問もあらかじめ教えてもらったので、どう答えるか考えていてほしいとの事だ。

そして1時になったので予定通りに撮影が始まった。


ミヤギさんが自撮り用のカメラを持って撮影が始まった。


「はぁ~い、皆さんこんにちは!都市伝説ハンターのミヤギです。今日はネットで噂になっている占い師を突撃したいと思います。占いと聞いてどうせ、やらせ?とか、仕込みあり?とか思ってませんか?それは僕の動画都市伝説ハンターミヤギにはありえない事です。今回の占う物は体!そう病気を占うと言うとても変わった占いです。占いは運勢の手相やタロットが一般ですが、病気となると検証が出来ますよね!そう今回僕は事前に病院へ行って健康診断をしてきました。これが医療機関から貰った結果です。当然未開封です。これで今回の占いがどの程度的中しているか検証していきたいと思います。場所は○○県○○市の駅の近くにあるショッピングモール〇〇。いざ、突撃!」


ミヤギさんが自撮りカメラからこちらを見てゆっくりと歩いて来て、椅子の前に立ちカメラを向けてきた。


「こちらが今回占ってもらうシグナルスキャンさんです。皆さんシグナルスキャンさんの顔を見てビックリされた方も多いんじゃないですか?僕も最初驚きましたが見ていては分からないので早速さっそく話をしてみましょう」


「こんにちは」


俺も同様に挨拶する。


「今回は病気を占ってもらうのですがどうして占いで病気を占おうと思ったのですか?」


「今までの占いの中で誰もやっていない占いをしようと思いやり始めました」


これは嘘だがこう答えるしかないのでこの返事にした。


「そうなんですか。それでその仮面といい服はどのような意味があるのですか?」


「仮面については身バレ防止と後はあがり症なのでその為ですね。服装は病気と言う事で白衣をイメージしました」


この質問には事実を語った。


「ちょっと突っ込んだ質問なんですが、身バレと言うと顔を出す事になにかマズイ事があるのですか?」


ちっ!こんな質問は聞く予定がないのに…俺はここは正直に答えようと思った。


「そうですね。実は俺はまだ学生をしていまして友達にバレたくないと言うのが本音ですね」


俺は少しだけ口元を笑顔にして答える。


「と、言う事は大学生なんですか?」


「はい、そうです」


「なる程、それじゃあ質問はこの辺りにして早速占いを始めてもらいましょう」


ミヤギさんが俺の作成したポスターをカメラに向けさらに喋り出す。


「これが今回占ってもらう場所です、頭、両腕、両足、体、そうミヤギの全身です。シグナルスキャンさんお願いします」


俺はミヤギさんの合図を受けいつも通りに右手前に出し、手の平をミヤギさんに向け能力の力強い言葉を発する。


「シグナルスキャン!」


俺は頭の上からいつもより少しゆっくりと慎重に見て行く、そして1か所黄色と赤色のグラデーションが掛かる場所を見つけ、占い結果用紙に記入し黄色と赤色のペンで線を引く。


「占いは終わりました」


俺は言葉を告げる。


「おっ!あっという間に占いは終わってしまいました。さあ、それでは早速占い結果を見てみましょう」


ミヤギさんは椅子に座り机の上に伏せて置いてある占い結果を表に向ける。


「えっ」


ミヤギさんからチョット予想外の声が漏れる。


占い結果『体、痔ろう、黄色と赤色のアンダーライン』


ミヤギさんは結果を見てほんの少しだがフリーズしていたが、持ち直したのかシナリオに戻る。


「正直とても意外な占い結果が出ましたが、シグナルスキャンさんに聞いてみたいと思います」


「シグナルスキャンさん、この黄色と赤色のアンダーラインと言うのはどう言う意味ですか?」


「はい、通常黄色は病気注意、そして赤色は病気の可能性大なのですが、今回の結果は両方と言う事で病気一歩手前と言う占い結果がでました」


「そうなんですね。これはこれでとても分かりやすいのですが、果たして今回の健康診断の結果どうなっているか早速開封したいと思います」


ミヤギさんは健康診断の結果の封筒を開封して、占い結果の紙の横に並べる。


「健康診断の結果は…とくに異常なしと出ていますね。う~んこれは更なる検証が必要となりますね。都市伝説ハンターミヤギは肛門科へ行きこの占いが当たっているか検証しに行きたいと思います。今回は病気占いのシグナルスキャンさんでした!さらなる都市伝説を求めてミヤギは都市を駆け巡ります。視聴者の情報は動画概要欄からお願いします。それでは又のご視聴お願いします。ミヤギでした!」


ミヤギさんはそういうとカメラに向けて決めポーズを決め撮影は終了した。


「シグナルスキャンさんどうもありがとうございました」


ミヤギさんは笑顔で俺に挨拶をしてきたので、俺も笑顔で挨拶を返す。


「それでこちらが謝礼です」


ミヤギさんは封筒を渡してきた。

俺は封筒を受け取ると口元をチラリと明け1万札が二枚入っている事を確認する。


「確かに受け取りました」


「それでは片づけをして撤収しますね」


ミヤギさんはカメラ等の片づけを始めるとファンらしき女性がミヤギさんに話しかけ、スマホで一緒に写真を撮っていた。

俺はその光景を見て結構人気あるんだなと思いながらミヤギさんがいなくなるのを眺めていた。


*


その後都市伝説ハンターミヤギは肛門科へ行きその診察風景もモザイク入りで撮影し、健一の占い診断と一致した事により、動画は過去最高の視聴回数を叩き出すのだった。

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